護衛編
今回はデュランの護衛さんとミアの話。
護衛編
俺はデュラン王太子殿下の護衛だ。
名前は色々使い分けしてるから、どれが自分の名前かわからなくなってきた。
ちょっと前まで、厄介事に巻き込まれたペトリオス侯爵令嬢の護衛を殿下から任され、任務に就いていたが、交わす言葉から気持ちの良い令嬢で、つい気が緩む。
令嬢の婚約者になるノーエ辺境伯令息も真っ直ぐな気質の良い青年で、2人が並ぶと優しい空気が辺りを包む。
だからか。
だから、殿下達はこのお2人に人間の醜い部分を見せないよう、俺をつけた事を理解した。
お2人とも愚か者では無い。
いや、令嬢の聡明さや令息の有能さを考えれば、貴族世界の汚さも知っているだろう。
それでもこのお2人には薄汚れた世界を見せたくなかった。
それは主人である、殿下達の思いでもある筈だ。
俺はお2人に危害が加わらないよう、護衛をしたが、危機管理能力が高いお2人は見事なまでに厄介事をすり抜けている。
と言うか、異様に頭の回転が早い女子生徒が、面倒事を潰していくのが少し面白かった。
無事?に厄介事が終わり、主人デュラン殿下が王太子になってホッとしていると今度は俺が厄介事に巻き込まれた。
「師匠、今日こそは武術を教えて下さい」
また、ピンクの髪をした女子生徒が突撃してきた。
「何度言えば理解する。君は頭は良いが運動神経は皆無だ」
「師匠。それではアドリアーナ様をお守り出来ません」
「……君は何を目指している。普通の侍女には戦闘能力は必要ない」
頭が良い筈なのに、何かがズレている。
「私は出来る女になりたいんです」
思考回路がおかしな方向にズレているが、熱意は凄い。
この熱量に圧倒されそうだ。
「俺は、君の師匠でもない」
不本意だが、彼女の前から逃げた。
「師匠〜」
この追っかけっこが数年続く事も、そして俺が彼女を嫁にすることも知らないで、俺は取り敢えず逃げた。
次はパパさん達の話を書きたいけど、パパさん達……。難しいかも。




