番外編 イクリスとアースワン
番外編です。
最初はイクリスとアースワン。
イクリスの黒さとアースワンが本編で書ききれなかったので。
イクリス編
あれは間違いなく、運命的な出会いだと信じている。
アレキサンドラ様がメイドも連れず、1人で士官学校に来て、俺が案内をする事になった。
隣の貴族学園の制服姿も美しく、全神経がアレキサンドラ様に囚われてしまった。
2年と言う時間が長いのか短いのかは分からないが、俺は出来る努力を惜しまず自分を鍛え、アレキサンドラ様の隣に立てるようにした。
お陰で叔父上の養子になり、ノーエ辺境伯の跡継ぎになり、アレキサンドラ様と婚約もできた。
政略結婚の色合いもあったが、アレキサンドラ様は俺との婚約を喜んでくれて、人生が薔薇色に染まった、と思っていたんだが……。
「何処の馬鹿です?そんな妄言吐き散らかしているのは」
アレキサンドラ様の兄上、アースワン様がひょっこりノーエ辺境伯のタウンハウスに現れて、不快な事を教えてくれた。
「兵団の副隊長だ。しかしコイツって」
「義父の親族の1人です」
アースワン様の話によると、この馬鹿者は、俺がノーエ辺境伯の養子になれるなら、血が繋がっている自分が養子になった方が筋が通っている、と言い出したようだ。
俺も血は繋がってんだが、其処は見ないふりなんだろうな。
「ノーエ辺境伯の事、舐めてるとしか思えん」
「義父は合理的に物事を進める。俺が養子に選ばれたのは、ノーエの地を守る気概と努力を認めてくれたからです」
「アレキサンドラの為の努力が功を奏したようだな」
「はい。アレキサンドラ様の隣に立つに相応しい者になりたかったので」
此処はブレない。
俺の努力は全てアレキサンドラ様に繋がっている。
「だから身内に言うなって」
「義兄上、と呼べる日が楽しみです」
馬鹿者の存在は理解した。
どうやって叩き潰そう。
「イクリス、叩き潰す必要は無い」
「何故ですか?」
「俺の所の団員が既にやってる」
アースワン様がニヤッと笑った。
アレキサンドラ様は聡明なのに、何処かほんわかしているが、アースワン様はウィンチェスト公爵令嬢の様な鋭さがある。
流石、第三騎士団団長だ。
でも、なんで、わざわざ騎士団が動くんだ?
「馬鹿者は、ノーエ辺境伯の養子になれば、アレキサンドラも手に入ると思ってるようだ」
アースワン様、今から俺も騎士団と一緒にそいつを叩き潰しに行きます。
「イクリス、そんなに殺気だって行く、とか言うなよ。アレキサンドラが驚く」
「アレキサンドラ様に邪な感情を持った奴を放置など」
「放置する訳ないだろ。ノーエ辺境伯にも許可を取って既に処分している」
なるほど。
アースワン様は、これからは俺がアレキサンドラ様を守れ、と。
勿論です。
ノーエの地は厳しいですし、馬鹿者も居るだろうが、アレキサンドラ様は必ず守ります。
取り敢えず、俺の課題はアースワン様くらい強かになる事だな。
「ご指導、痛み入ります」
「……お前。それ以上黒くなるな」
何故ですか?
次はアドリアーナ様かイズミル様を書きたいな。




