アーロンは困惑してます。
今回はアーロンのターンです。
父上の宣言でやっとあの熊の様な女が婚約者候補から外れ、ホッとしたのに何故私の婚約者候補全員が白紙になるんだ?
まぁ、どれも大した女は居なかったから構わないが、また探すのが面倒だ。
いや、あの図書館の妖精を探して、すぐに婚約しよう。
王命を出せば、婚約しててもすぐに奪い取れる。
「もう一組婚約が整った若者達がいる」
銀髪の妖精の事を考えていたら、ウィンチェスト公爵の宣言に、面倒だと思いながら目を向けた。
「ノーエ辺境伯令息イクリス。令嬢と共に此方へ」
ノーエ辺境伯令息?
ノーエ辺境伯には息子なんて居なかった筈だが。
父上の言葉に首を捻っていると、黒髪の男が脇に立っている女に頷き、人混みから前に出た。
「えっ?」
ノーエ辺境伯令息がエスコートしているのは……。
銀髪の……。図書館の妖精じゃないか!
薄い紫から黒のグラデーションのドレスを彩る淡いブルーのレースが袖や裾で揺れて……。
隣の男の色を纏って、何故君が……。
「兄上、彼女」
イーサンの声で衝撃から意識が戻った。
辺境伯?たかが田舎の伯爵なら、すぐに奪い取れる。
私は、本気でそう思っていた。
父上が自ら声を掛けている意味さえ理解しないで。
しかし、有力な貴族の動向を把握してないって、ヤバイだろうに。




