殿下って馬鹿ですか?
美形が馬鹿だと、痛すぎる。
「アレキサンドラ、そろそろあの馬鹿どもが動くけど、何もしなくても大丈夫よ」
アドリアーナ様の言葉にイクリス様も頷いてます。
こっからゲームでの断罪劇が始まるのかぁ。憂鬱です。
ミアさんが親指を立てて此方に笑い掛けてくれるから、つい私も笑ってしまった。
「アレキサンドラ様、その可愛い笑顔は私にだけ向けてくださいね」
嫉妬してしまう、なんて耳元で囁かれたら脳みそが沸騰します。
「アレキサンドラ・ペトリオス、出て来い。貴様の悪虐非道の行為には我慢ができん。よって断罪する」
……アーロン殿下って頭、悪いのか?
ゲームでの台詞の方がもっと賢そうに聞こえましたが。
「出て来れないほど不細工なのは知っているがな」
イーサン殿下も……以下略。
醜悪な顔で笑ってる馬鹿3人組も、注目されて舞い上がっているみたいですね。
こっからベラベラ捏造した事、話すのかなぁ?折角の舞踏会が台無しになる気がします。
「出て来い」
出なきゃ駄目?
「わたくしの友人に冤罪を掛けるとは、良い趣味ですこと」
アドリアーナ様がすっ、と前に出ました。
相変わらず綺麗な立ち姿で、見惚れてしまいます。
「誰だお前は?」
「アドリアーナ・ウィンチェストですわ」
いくら男女で顔を会わせなくても、公爵令嬢の顔も知らないって、王族として不味いですよ。
「ウィンチェスト公爵令嬢様、彼らが公爵令嬢様のお顔を知らないのも当然です。王族としての責務をまるで理解してないのですから」
サッと人混みからミアさんが出て来て、アドリアーナ様にカーテシーをしました。
ミアさん!完璧な淑女です。
「ミアがわたくしの侍女である事も知らない様ですしね。呆れました」
えっ?ミアさん、アドリアーナ様の侍女になったんですか?知りませんでした。
「ミ、ミア?何してんだ。これからお前を虐めていたアレキサンドラを断罪するのに……」
焦ってるナオリスがミアさんの腕を取ろうとしたが、護衛の女子生徒がすかさず邪魔しました。
「ペトリオス侯爵令嬢が虐め?あり得ません。それに、殿下達はペトリオス侯爵令嬢のお顔も存じ上げないでしょ」
おう、ミアさん、言い切ったよ。
「その様だな。断罪する者の顔を知らない、とは」
会場内に響く、威厳ある声。
えっ?ドルエステ国王陛下にファビアナ王妃陛下?
ご臨席されるなんて……。
やっと断罪に入れそう。




