さて、どうしましょう。
お互い、バレました。
「破れた服を脱がせるので」
アレキサンドラがそう言って男性陣を医務室から出すと、アドリアーナも一緒に出て行った。
「まずは手当をしましょう」
頭の中はしっちゃかめっちゃかだけど、驚かさない様に声を掛けて頬に冷たいタオルを当てて、彼女を見た。
「アレキサンドラ……さんですよね」
名乗っていないのに。
アレキサンドラが困った顔をした。
「縦ロールしてないけど」
アレキサンドラが何気なくゲームキャラの特徴を言えば、彼女も泣きそうな顔で笑う。
「だから、婚約者じゃ無かったんだ」
「名前は、ミアさんで合ってる?」
ミアは首が取れそうなほど縦に振った。
まさか自分以外にも転生した者と会うとは思ってなかった。
でも、前世で読み漁っていた小説にはそんな設定がわんさかあった。
「予め言っておくけど、私じゃ無いよ」
「あいつらです。攻略キャラのデレクにトーマス、それから……」
「ナオリスね。あのもやしっ子め」
つい苛立ち紛れに拳を握ってしまった。
「此処はゲームだから、みんなアタシに優しいと思ってたのに」
ミアがしゃくり上げながら今、自分が体験した現実にショックが隠せない。
「この世界は似てるけど、ゲームじゃない。現実は残酷よ」
アレキサンドラの言葉にミアは頷いた。
貴族など身分で人を差別する。
男爵令嬢が王族と親しくなるなんて、ゲームだからあり得るので、現実は話すことすら出来ない。
まぁ、前世のTLでは頭がお花畑でヒロイン最強を信じているのは、突撃かましていたなぁ。
「でも、強制力も有るみたいだから、気をつけないと」
ミアの言葉に、アレキサンドラが固まった。
「どこらへん?」
ギギギって音がしそうなほど硬い動きでアレキサンドラが、ミアの方に首を向けた。
「うーんと、出会いイベント?アタシが宿題提出の為、廊下を走ってたらデレクにぶつかったし、食堂で席を探してたら……」
ミアさんはうーんうーんと考え込みながら説明する。
「分かった。イベントはヒロイン限定であるのね」
面倒臭い事になりそうね。
自分が絡むイベントはこれからだから忘れてたけど、対策は必要そうだ。
「あのゲーム、ヒロインざまぁエンドが無いから……アタシ、どうしたら良いの?」
ヒロインざまぁエンドが無いことを悔やむヒロインって普通、居ないけど。
「無いなら作る?」
「お願いします」
……此処に1人居た。
騎士団の自衛隊化には頭が回るけど、ざまぁエンドなんて考えたことも無い。
「どうしよう」
「治療は終わった?」
救いの女神降臨ってこういう事ね。
アドリアーナがノックしながら声を掛けてきた。
アドリアーナ様に前世の事やゲームの事を話しても、頭の中大丈夫?と思われるだけだから、どう話せばいいかな?
さて、本当にどうしましょう。