こうして同盟は結ばれました。
アドリアーナとイクリスの同盟が結ばれた。
いつも、訓練をキラキラした目で真剣に見詰め、さり気無く気遣ってくれる彼女を、士官学校の生徒達は女神の様に思っている。
「ロンド子爵令息様」
アレキサンドラが訓練に顔を見せる様になって少し経った日。
イクリスが自主練をしていると、豪奢な美少女と共にアレキサンドラが現れた。
「ペトリオス侯爵令嬢様。ようこそ」
イクリスが蕩けてしまいそうな顔で挨拶をすると、豪奢な美少女の翡翠の瞳がキッと冷たく光った。
「初めまして、わたくし……」
「ご挨拶が遅れました。私はイクリス・ロンドと申します。アドリアーナ・ウィンチェスト公爵令嬢様」
アドリアーナが挨拶をしようとした時、非礼を詫びながら自己紹介をイクリスからした。
「わたくしの名前を……」
「ペトリオス侯爵令嬢様の無二の親友であると、お聞きしておりますので」
貴族的な挨拶は少々不躾な所もあるが、騎士の礼を取る黒髪の美丈夫に、アドリアーナはふぅ、と息を吐いた。
「アレキサンドラを誑かしていると思ってたのに」
「た、た、誑かす!誤解です。ペトリオス侯爵令嬢様は騎士を目指すものにとっては、女神の様な尊い方。こうしてお顔を見るのも勿体無いくらいの幸運です」
真っ赤になって慌てるイクリスに、アドリアーナは笑い出した。
「これ程真面目な方なら心配無いわね。少なくとも、イズミル皇太子殿下より好感が持てました」
イクリスが驚いた顔でアレキサンドラに説明を求める様な目を向けると、2人の美少女がコロコロ笑った。
「ロンド子爵令息なら心配無いわね。アレキサンドラ、良い方と友人になれたみたいね」
アドリアーナが頷きながら、何かを納得している。
アレキサンドラが、お腹の中で同じ歳なのにオカンが居る、と思いながら微笑めば、冷たかった翡翠の瞳が少し優しくなり、イクリスを見た。
「ウィンチェスト公爵家は受けた恩は末代まで忘れません。アレキサンドラは我が家の恩人に等しい存在です。けして蔑ろにしない様に」
そうアドリアーナが宣言すると
「ペトリオス侯爵令嬢様は騎士と騎士を目指すものに取っても尊きお方。無礼などさせません」
と、返してきた。
今一つ2人の会話の意味が分からないアレキサンドラがキョトン、としていたが、イクリスとアドリアーナは何故か同盟関係を結んだものの様に頷き合っていた。
知力と武力の同盟。結構怖い。