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アンドロイド、尻を撫でられる

 ピピルピはハニーとチカイの間に入り込み、二人のお尻を優しく撫で始めた。

アンドロイド達は困惑している。


「初対面なのに恋人にされたよー。お尻触んないでよー」

「不愉快だわ」


ピーリカはピピルピを突き飛ばし、両手を広げてハニーとチカイを守るように立った。


「こら痴女、ハニーとチカイに手ぇ出すなですよ!」

「分かったわ。じゃあマー君に手ぇ出すわね」

「だ、ダメです。師匠に手を出したら、えーと、きっとなんか不幸になるから止めておいた方が良いですよ」

「そう。マー君に手を出されたくないのね」

「出されたくない訳ではありません。わたしは師匠が誰とどうなろうと知ったこっちゃないですからね。でもわたしは優しいので、貴様に助言してやってるです。感謝しやがれです」

「分かったわ。つまりピーちゃんに手を出せって事ね。もう、回りくどいんだから」

「うわーっ、スリスリするなですよーっ!」


その場にしゃがみこんだピピルピに、頬ずりされるピーリカ。柔らかな頬と同じくらい、むにゅりとしたピピルピの胸が当たっている事が腹立たしくて仕方がなかった。

ハニーはピピルピを指さしてマージジルマに問う。


「師匠さん、あのお姉さんは一体」

「全人類の恋人を名乗る変態だ。と言っても人型であれば人じゃなくても良いらしいから、お前らも気をつけろよ」

「分かったけど分からないよ。もう少し説明頂戴」

「カタブラ国の平和を守る七人の魔法使い内一人、桃の民族代表ピピルピ・ルピル。アイツ含めて桃の民族ってのは老若男女問わず手を出す変態。とはいえバルス公国の奴らと比べたら相手の意思を尊重するかもな」


嫌がるピーリカの頬にチュッチュとキスをしていくピピルピを見て、アンドロイド達はマージジルマの言葉を疑っている。

疑われていると気づいているマージジルマは、ピピルピに警告を入れる。


「おいピピルピ、そろそろピーリカ離せ。あとお前バルス公国の奴らと同じレベルの酷い奴だと思われてるぞ」

「あら失礼しちゃう。誰でも構わず手を出してる訳じゃないのよ。私は愛してる人にしかそういう事しないもの。ただ愛してる人が複数人いるってだけ。愛撫もじっくりするし最終的には合意とるわ」

「触る前に合意を得ろよ」

「好きな人相手には、止まれない時もあるのよ。マー君だって好きな人……私と良い感じになったら、きっと狼になってしまうのよ」

「お前と良い感じになる事なんて一生ないから安心しろ。それよりピーリカ窒息しそうだから。離せ」


ピピルピの胸に顔面を押し付けられているピーリカの耳に、師匠達の会話は届いていない。


「マー君ったら、さては羨ましいのね。言われなくても後でマー君にもギューってしてあげるわ」

「するな。羨ましくもねぇっての。俺巨乳は好きだが誰のでも良い訳じゃねぇんだよ」

「んもぅ、素直じゃないんだから」


ピピルピはそう言いながらピーリカを離す。ピーリカは大きく深呼吸をして、怒りをぶちまけた。


「この変態め、わたしが潰れたらどうするですか!」

「ピーちゃんは潰れても可愛いから大丈夫よ」

「わたしがかわいくない時なんてないです!」

「そうね、可愛いわ」


ピピルピはピーリカの右手を握り、そのままパクリと口に入れた。


「きゃあーっ! 師匠っ、この変態、わたしのかわいいおててを!」

「舐められてるのは右手だけだろうが。左手で殴れ」


師匠の教え通り、ピピルピの顔面を叩く弟子。

だが効果はあまりないようだ。むしろプレイの一環だと思われている。ピーリカから口を離したピピルピは、照れた表情を見せる。


「ピーちゃんったら、照れなくていいのよ。そうだわ、舐められるのが嫌だったのなら舐めれば良いのよ」

「何を言ってやがるですか。貴様を舐めたっておいしくないに決まってるでしょう」

「あら、ピーちゃん知らないの? 桃の民族って舐めると甘いのよ」

「わたしは天才ですよ。知らない事なんてあるはずないでしょう」


知らないと言いたくなかったピーリカは見栄を張った。

ピピルピは人差し指をピーリカの口元に近づけた。


「甘くておいしいから、一度味わったら病みつきになっちゃう程よ。試しにペロペロしてみたら?」

「嫌です、貴様のでなくともおててを舐めるなんてばっちいに決まってます!」


プイと顔を背けたピーリカを見て、ピピルピは残念そうに呟いた。


「そう、残念だわ。でも……出来ないなら仕方ないわね」

「はーー!? 出来ないとは言ってないじゃないですか!」


ピーリカ・リララ。ひねくれものなので出来ないのかと問われれば出来なくても出来ると言ってしまう少女。


「そうよね。ピーちゃん良い子だものね。じゃあ試してごらんなさいな」

「いいでしょう。わたしが確かめてやるです」


口をあーっと開いたピーリカは、ピピルピの指を舐めようとする。その光景に、ピピルピはゾクゾクと背徳感を得ていた。

マージジルマは片腕を伸ばし、手のひらを広げ黒の呪文を唱える。


「ラリルレリーラ・ラ・ロリーラ」

「やんっ」


彼女の足元に光輝く魔法陣が現れた。その中から飛び出した縄がピピルピの体をグルグル巻きにする。


「マー君ったら、縛り上げてまで私を独り占めしたかったのね。だからって乱暴するなんてひどいわ。そんなにムラムラしないで、お願いだから優しくして」

「騒ぐな。何もしない」

「放置プレイは良くないわ。せめてジッと見つめて頂戴」

「絶対に何もしない。ピーリカ、お前も何でも口に入れようとするな」


ピピルピから離れたピーリカは、不服そうな顔で首を横に振った。


「何でもじゃねーですよ。おいしいものしか口にしません」

「ピピルピの手ぇ食ってもうまくねーぞ」

「痴女め、また騙したですね!」


騙される方も悪い、とは思ったものの。騙した方が一番の悪の根源だと判断したマージジルマは、ピーリカを叱る事なくピピルピに顔を向けた。


「それでピピルピ、シャバがどこ行ったか見当くらいつかないのか?」

「さっぱりだけど、急ぎの用なら召喚すれば良いんじゃないかしら」

「それもそうか。ラリルレリーラ・ラ・ロリーラ」


その場にいた全員が天井で光った魔法陣を見上げていた。そして。


「うわっ!」


魔法陣の中から落ちて床に尻もちをついた人物を、全員で見下ろす。

白色のパーカーにジーンズと大分ラフな格好で、口元を黒い布で塞いでいる赤髪の男。

魔法陣がスッと消えたと同時に、マージジルマはその場にしゃがみ込み。彼に目線を合わせた。


「よぉ親友、ちょっと話がある」

「……よぉ親友、とりあえず許さない」

「許さなくて良いから言う事聞けよ」

「唐突に脅迫しないで。どうすんだよ、買い物途中で金払ってないのに持ってきちゃったじゃん」

「後から払えば大丈夫だっての」

「お前は魔法の都合上、そういうの慣れてるだろうけど。オレは常識人だから嫌なの」


彼は手に持っていた黄色いリボンの束を見つめながらうなだれた。マージジルマはリボンの先端を親指と人差し指でつまむ。


「こんなリボン何に使うんだよ」

「今度の収穫祭の手伝いを頼まれたんだよ。お菓子ラッピングする用のリボンカットをな。本当は昨日買っといたんだけど、ちょっと目を離した隙にピピルピが体に巻いてたから」

「余計な出費を増やしたって事だな、極悪人じゃねぇか」


ケチなマージジルマにとって無駄遣いをする事は、この世で一番の重罪。

ピピルピは拗ねた顔で反論した。


「勝手に使ったのは申し訳ないとは思ってるけど、リボンが置いてあったら裸になって体に巻くのが常識じゃない? それにシーちゃんだってリボン解いて、ぐっちょぐちょにさせたもの。同罪よぉ」


裸にリボンを巻くのが常識かどうかはさておき。親友が本当に彼女の体に巻かれたリボンを解いてぐっちょぐちょにしたのか否か。

マージジルマは黙ったまま、冷めた目線を送り確認をとる。

目線の意図を汲み取った男、シャバは目元を笑わせて。


「まぁ、お仕置きはしたよね」


しれっと答えた。

ハニーは少し怒った様子でマージジルマに問う。


「あたしらよりあの人達の方がピーリカに悪影響じゃない?」

「アイツらはあれでもぼかしてるから……いや、大して変わんねぇな。すまん」


頭を抱えながら謝ったマージジルマ。

当のピーリカは「痴女を懲らしめたとは黒マスクもやるじゃないですか」と感心している。懲らしめた方法については深く考えていない。

未だ縄で縛られているピピルピは、上目遣いでシャバを見つめた。


「おかえりシーちゃん、私で良い?」

「ただいま。ピピルピがいい。でも後でね。っていうか何で縛られてんの?」


ピピルピを縛る縄を解こうと、シャバは腕を伸ばす。だがマージジルマがそれを止めた。


「やめろシャバ。それを解くと被害が拡大する」

「だからといってこのままうちに放置されるのも困るんだけど。それに誰よ、そこのセニョリータ達は」

「おぉ。そのまえに、ほらよ」


マージジルマはピーリカの胸倉を掴んだ。ピーリカは「ぐぇ」と苦しみの声をあげたが、マージジルマはお構いなしだ。

シャバがピーリカの脇の下に手を入れ持ち上げたと同時に、マージジルマはピーリカから手を離した。

シャバは状況を理解出来ないままピーリカを地面へと降ろす。


「なになに、どしたの。可哀そうに」

「コイツ、バルス公国に不法入国してアンドロイド二体無断で連れて来たから。お前外交担当だろ。その辺うまく手続きしといてくれ」

「嘘でしょ、すごい面倒なやつ。なら可哀そうなのオレじゃん」

「罰として雑用押し付けていいぞ。コイツは牢屋に入れても反省しないだろうからな、面倒な事させた方がいい。何ならほら、収穫祭とやらの手伝いとか。好きに使えよ」


ピーリカは師匠が胸倉を掴む相手は自分だったと気づく。呼吸を整え、怒りの声を荒げた。


「師匠、何しやがるですか! かわいい弟子を売る気ですか!?」

「売らねぇよ。罰を与えているだけだ。反省しろ」


シャバは持っていたリボンをピーリカに手渡す。


「じゃあピーリカにはリボンを切ってもらおう」

「そんな雑用みたいな事をかわいいわたしにさせるですか!?」

「うん。雑用だよ。罰だからね。それが嫌なら、牢屋に入ってもらうしかないね。ピーリカが牢屋に入れられたって知ったら、ピーリカのパパもママも悲しんじゃうだろうね。マージジルマに至っては指をさして笑うだろうね」

「そ、そんな屈辱的な事許されないですよ!」

「じゃあリボン切って。反省もちゃんとして」


ピーリカは考えた。パパはどうでもいいとして、ママが悲しむような事はしたくない。師匠に関しては指をさして笑われるのも嫌だが、それ以上に牢屋に入れられるような悪い子は嫌われてしまうかもしれない、と。

リボンを切るなんて地味でものすごく面倒だけれど、ここは大人しく言う事を聞いておこう。ピーリカはリボンをギュッと握りしめた。

シャバはその場から立ち上がり、ハニーとチカイに目を向ける。


「で、そちらのセニョリータ達にはどうしろって?」

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