06
おじさんにお肉とタンとホルモン各種を頂いて、隣の魚屋さんでのお買い物が済んだ頃。お兄さんがギルドから戻って来て、肉屋のおじさんに報告してくれました。
「お兄さん、ありがとう。暗くなる前に行こうか」
と言うと、何処へ?と二人が目で聞いてくる。
まぁ、収納可能なマイハウスを見たらビックリするだろうなぁ…と。チョット遠い目をしていると心配された。
「取り敢えず、この街の外へ行って森の中で…ええと、過ごせる空間を作ります」
うん、語彙力。
コレばかりは見てもらわないと分からないよね。森の中で、って嫌かな?と二人を見るとテキパキと街を出る準備をしていた。
「あっ、荷物下さい。アイテムボックスに仕舞うので」
最後に買ったお魚達をアイテムボックスに仕舞って、さぁ行こうかと思ったらお兄さんに抱き上げられた。
「もう直ぐ日が暮れる。少し急ごう」
ビックリした。私は何歳に見られているんだ?
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街を出てすぐに森に入り、少し行った所で日が暮れた。
丁度良く、開けた場所を見つけてお兄さんに降ろしてもらう。
「せーの。ヨイショ!」
うん、持ち運び可のマイホームの外観は大きな卵に猫脚パーツが3本付いた謎物体に玄関ドアと階段が付いている。
更に、卵の周りに認識阻害、不可視、防御の魔法陣が付与されていて私が許可した人以外には見つけられないようになっている、らしい。
クルリと後ろを向くとエルフさんとお兄さんが口をあんぐり開けて固まっていた。今日は、ビックリする事ばかりでごめんなさい。と心の中で謝りながら、多分中はもっとビックリするよ。と苦笑いしながら二人の手を引いて卵ハウスの中に入った。
案の定、固まってしまった2人をリビングのソファに座わらせ再起動するまでの間に私は夕飯の準備をチャチャッとしたのだった。
今夜は、二人の歓迎会も含めての夕食にしたいなと思っていたから。ウォークスルーで広めに作られたバルコニーで焼肉です。謎卵の何処に、このバルコニーが付いているのかは不明だけど避暑地のロッジからの眺めの様に森の中の景色は抜群です。
焼肉にはやはりビールでしょう!と、冷蔵庫から取り出しバルコニーに置かれたガーデンテーブルセットに用意をして二人を呼んだ。
「まずは、私達の出会いに乾杯!」
プハァ、キンキンに冷えたビールが空きっ腹に染み渡る。
「久しぶりにお酒を飲みましたが、こちらのお酒は大変美味しいですね」
「ああ、こんなに冷えたエールは初めて飲んだ」
なるほど、この世界ではエールが主流なのですか。二人がビール談義をしている間にお肉と野菜をBBQのコンロに並べていく。こちら、ガスのBBQコンロなので準備も片付けも簡単そうだったので新たに買い足して置いた物の1つです。異世界と言えば肉を焼く事も多いのではないかと言う偏見からですがね、買っておいて正解でした。
トングをカチカチしながらお肉を育てていたらエルフさんがさり気なくトングを取り上げて交代してくれました。ならば、サラダを取り分けてと思ったらお兄さんが既に簡単に作っておいたおつまみと共にお皿にサーブしてくれていました。しかも私が取り分けるよりキレイに!
「ご主人は、座って居てくれたらいいんだぞ」
「ええ、ご主人様に夕食の準備をさせてしまい申し訳なく思っておりました」
ウム、そう言うのは求めていない。どちらかと言うと旅のお供が欲しかったんだよね。
「私は、自分のことは自分で出来るし。料理は好きでやっているから気にしないで欲しいんだよね」
とは言ってもね、慣れるまでは難しいよね。案の定、二人共難しい顔をしてるし。まずは、お互いに慣れるところからだよね。
「さて、ここまでエルフさんとお兄さんには敢えて名前を聞かなかったし私の自己紹介もしなかったんだけど」
そう、私は二人の名前を聞かなかったしエルフさんとお兄さんと呼んでいて私の事はご主人と呼ばせていた。勿論、契約の時に書類に書かれているのを見たから知っているけど。そこは、本人から聞きたいじゃない?
「二人の名前を教えてもらえるかな?」
私の問に先に応えてくれたのはお兄さんだった。
「まずは、心優しきご主人に感謝を。あなたに出会えた幸運を心から嬉しく思っている」
突然の御礼の言葉に驚く私に笑いかけながらお兄さんは、自己紹介を始めた。