05
今にもギルドへ走り出しそうなお兄さん。
「お兄さん、ちょっと待ってて。おじさん、ビックリしないで教えてほしいんだけど」
少しビビリながらおじさんに声をかけると、おじさんも身構える。ええ、前科が有りますからね。
「ウシュタの内蔵ってありますか?」
「・・・・・」
おじさんが目をこれでもかと見開いて思考停止している。
「あっ、見てみないと食用に出来るか分からないんですけど」
と付け足すと、おじさんが漸く再起動してくれた。
「チョ、チョット待っててくれ」
と言うと、ヨロヨロしながらお店の裏に入って行った。
「ご、ご主人、まさかウシュタの内臓も食べようとしてるのかっ!」
お兄さんに両肩に手を置かれて、これは宥められているのかしら。
「私の国では、内臓をホルモンと呼んでいてね。ホルモン焼きって言うのがあったんだよ。因みに、私の好物の1つなんだな」
言い終わるやいなやお兄さんがガクッと崩れ落ちた。何故でしょう…。
「あっ、ゲテモノ食いに認定された?」
と首を傾げた所におじさんがバケツのような物を2つ持って帰ってきた。
「これなんだが。嬢ちゃん、本当に食べれるのか?」
まぁ、お兄さんの反応の後におじさんを見ればそうなりますよね。と苦笑いしながらバケツを覗き込むといくつか矢印がピコンと出た。
[ウシュタのホルモン−魔獣]
食用−可(美味)
洗浄魔法を掛けて貰ってね!
味噌ダレ美味しいよね♪
なるほど、洗浄魔法とな!
矢印の先には、ミノ、センマイ、ハチノスと次々と名前が出てくる。指差しおじさんに名前を教えながら探していると、有りました!私の大好きな。
「あった!マルチョウ!」
マルチョウは、私も味噌派です。
おじさんに借りたトングでマルチョウを持ち上げて、ある程度の長さで切ってもらう。
「エルフさん、これの中と外の全体に洗浄魔法掛けてください」
若干、顔を引きつらせながら『洗浄魔法』とエルフさんが魔法を掛けてくれた。続く作業はおじさんがしてくれるそうなので指差し指示を出します。
「えっと、まずは開いて…そしたらこれ位の適当な長さに切って下さい…タレはあったかな?」
あぁ、これぞマルチョウです!私は俵型より開いてある方が焼きやすいのでこの形にしてもらいましたが、俵型を焼くのも美味しいですよね。コロコロしながら焼き目を付けるのも楽しいし。アイテムボックスからお気に入りの焼肉のタレ、味噌味を探し出しマルチョウに掛けて良く馴染ませて。
「おじさん、焼き方にコツがあるからよく見ててね。まずは、この皮目から置いて」
皮の方から網の上に乗せるとジュワッと味噌ダレの匂いが立ち上がる。少し炙ればポタリと脂が落ちてボワッと炎が上がるがここは落ち着いてユックリと。皮目に焦げ目が付いたのを確認してひっくり返す!返すのは一度でお願いします!
辺りに美味しい匂いが充満して若干、注目を浴びていますが。今は、マルチョウに集中です。
返した面にも少し焦げ目が付き始めたら食べ頃です。
「この焼き具合!これ以上焼くと硬くなっちゃうから、今食べて!」
おじさんと両隣の二人に声を掛けて、私もアツアツのマルチョウを1つ取り試食です。
「熱っ…旨っ!」
ウシュタのマルチョウを口に放り込むとハフハフしながら噛みしめる。すぐに旨みたっぷりの脂がジュワーと滲み出て口の中に染み渡る。ブリンブリンの食感を更に噛みしめると味噌ダレと混ざり…あぁ、白米欲しい。と思いながらゴクリと飲み込めば上質な脂が口に余韻を残しながら喉の奥に流れ込んでいった。
フゥ、とため息を吐きながら目を開ければ3人の目がキラキラと輝いていた。
「美味しかったですか?」
って、聞くまでもないかな。おじさんが食い気味に話してきた。
「ああっ!今まで捨てていたのが馬鹿みたいだ。このレシピも売ってくれ!」
あっ…レシピね、忘れてました。と、お兄さんを見るとニコリと笑って頷いてくれたので先程の焼き方に加えて味噌ダレの簡単な作り方を教え、必ず洗浄魔法を使うことを注意事項に記入するように伝えた。
お兄さんは「任せてくれ」と良い笑顔でギルドの方へ走って行きました。お願いします。