04
ギルドの外に出ると日が傾き始めていた。
「あっ、急いで食料品を買いに行かなきゃ!」
お米や調味料は有るけど生鮮食品は現地調達なんです。ここにはスーパーとか無いよねぇ、と辺りを見渡す私にお兄さんがサッと手を引いてくれる。
「コッチに食料品を売っている店が集まっている」
おぉ、早速お兄さん情報に助けられていますよ。
マルシェのように並ぶお店を見ながら新鮮なお野菜と少しの果物、卵に牛乳を購入。流石異世界。見たことない野菜とか謎卵とか売っているけど、今回は、使った事のある物だけお買い上げ。お試しは時間がある時にね。
後はお肉だよね!お肉大事!とお店を探しながらアレ?と思い出した。エルフさんてお肉食べられるのかな?とチラッと見ると。
「私は好き嫌いなく何でも食べますよ」
エルフさんて目だけじゃなくて心も見通せるのでは…。
「考えている事は分かりませんが、ご主人様は顔に出やすいので」
顔に書いてありましたか…そうですか。と考え事をしていたら肉屋に辿り着いた。塊肉がドンッドンッと置いてある。
私の好きな牛タン無いかなぁ、とキョロキョロと見回したけど、ありませんでした。グラム売りを少しだけ買って晩酌のお供にするのが私の楽しみだったのですよ。じゃあ、普通に細切れと塊肉が少し欲しいな。その前に、この肉は牛なのか?と凝視していると、目の端でピコンと文字が浮かんだ。
[ウシュタ−魔獣]
牛に良く似た魔獣。
少々、臭みがあるが煮込むと大変美味。
これは、鑑定ってヤツでしょうか。神様の過保護と言う加護の1つでしょうか。と、目をキョロキョロとさせているとお店の奥の方でピコンと矢印が出た。
[ウシュタの舌(冷凍状態)−魔獣]
牛タンの様に美味しいよ♪
おじさんに薄く切ってもらいなさい
ネギタン塩美味しいよね
これは、神様が直に入力してるぅ…と脱力していたらエルフさんに心配された。肉屋のおじさんにウシュタの舌を2ミリ位の厚さに切って欲しいって頼んだら。
「嬢ちゃん、ウシュタの舌食べるのかい?物好きだねぇ」
と言われてキョトンとしてしまった。異世界では食されて無いのか?もしかして、ホルモンも?
「おじさん、そこの火をちょっと借りてもいい?」
ここは1つ実演と参りましょう。エルフさんに塩とコショウが高価では無いことを確認してから、おじさんが薄切りにしてくれたタンに塩コショウを振る。
お店の外にある焼き場の網の上にタンを乗せるとジュワァ良い音と共にタンの焼ける匂いが当たりに広がった。
焦げる前に直ぐ裏返して、こちらもサッと焼き目をつける程度でおじさんが用意してくれたお皿に乗せる。先程購入したレモンをギュッと絞るとお先にと、一口で頬張る。
牛タン特有の少しコリコリとした食感のあと程よい塩味と共に肉汁がジュワリと出てくる。コショウがレモンと共に臭み消して食べ終わりもサッパリしており、もう一枚と手を伸ばしてしまうんだよね。
あー、ビールが飲みたい!
そこで、ハッと周りの目を思い出した。肉屋のおじさんとエルフさん、お兄さんが目を見開いてこちらを見ていた。
「アハハ。是非食べてみてください。捨てるには勿体ない美味しさですから」
とお皿を差し出すと、おじさんがガッと牛タンを口に入れて目をギュッと瞑った。そんなに怖がらなくても…と見ていたら。今度は、目をクワッと見開いて「ウメェ!」と叫んで私を見た。
「ビックリしたなぁ。ウシュタの舌なんて気持ち悪いから食べた事なかったが、こんなに旨かったんだな」
と満面の笑みを見せてくれた。
そうでしょう?と、おじさんにニンマリ笑った後に両隣でお皿を凝視しているエルフさんとお兄さんにも牛タンをオススメすする。
二人は躊躇い無くパクリと牛タンを口に入れると口角を上げて咀嚼を繰り返し、パァっと良い笑顔をくれました。
「ご主人、コレは世紀の発見だ!」
と、大袈裟にお兄さんが言うのにエルフさんは大きく頷いていた。
「いやぁ、嬢ちゃんには驚かされたなぁ!物は相談なんだが、今あるウシュタの舌とこの塊肉を待って行っていいから俺にウシュタの舌を売る最初の権利をくれないか?」
え?売る権利?肉屋が肉を売るのになんの権利が要るんだろう。と、首を傾げている私にエルフさんが助け舟を出してくれた。
「ご主人様、新しいレシピを考えたら商業ギルドに登録をするんです。そうすると、登録したレシピが売れたマージンが登録者に還元されるのですよ」
へぇ、特許申請みたいな物かな。いや、ウシュタのタンを焼いただけですが登録必要ですか?
「良ければ俺がご主人の代理で登録する事が可能だが行ってこようか?」
と、お兄さんも乗り気だ。うーん、それならアレも有るか確認したい。