宰相の憂鬱Ⅲ
本日は、2話投稿しています。
自分の執務室にて仕事をしていた私の目の端に黄金の光が瞬いた。
「何事だ!」
すぐにバルコニーへ出ると、多くの人達が黄金の光に釘付けになっていた。
「これは、まさか!」
急ぎ魔術師団へ急ぐと皆微動だにせず、黄金の光。
いや、黄金の魔法陣へ釘付けとなっていた。
「師団長は居るか!」
声を張り上げると、魔道士団長が人を掻き分けて此方に向かってきた。
「宰相殿。これは、間違いなくマテリアルの覚醒にございます」
マテリアルの覚醒だと?修復なら分かるが…。
「覚醒とは、一体」
尋ねる私に、深く一度頷くと魔導師団長はこう言った。
「マテリアルの完全修復の後に、最大限まで魔力を流し込むことによって境界へと魔法陣が展開されるのです。境界への結界魔法陣です」
「なんだそれは、聞いたことないぞ」
私の動揺を他所に魔導師団長は、説明を続ける。
「この世界の創世時にあったとされる結界魔法陣です。約200年から300年程前までは全世界をこの結界魔法陣が覆っていたと書物に残っております。何らかの理由によりマテリアルが破壊されたことによって魔法陣も消え失せたと記されておりましたが、結界魔法陣の復活を目にするこが出来るとは!」
興奮している師団長は、目をランランと輝かせ結界魔法陣に目を向けている。
「して、コレは隣国の魔法陣であろう?」
「隣国のマテリアルは、月の精霊が護る丘に鎮座していると聞きますが何処に在るかまでは謎とされておりましたが…魔法陣の中心から見るに太古の杜と呼ばれる樹海の中心あたりで御座いましょう。辿り着くのは至難の業かと」
あそこは、魔物の巣窟と言われている。辿り着く事は難しいか…否、我が国の現状から見るにそんな甘いことも言っては居られぬ。少しでも情報が必要だ。
「魔導師団長。此れより緊急会議を開く。騎士団長にも通達を頼む。私は、陛下と殿下方にお声がけしてくる」
師団長にそう声をかけると黄金の光から逃れるようにその場を後にした。