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本日は、2話投稿しています。
今宵は満月。
月の光がマテリアルに当たるまで、もう少し。
「えっと、これかな?よっこいしょ」
元アラサーの口癖とともにアイテムボックスから出したのは、月のマテリアルにピッタリな欠片。
「それは…」
言葉を失うディアーナには申し訳ないけど、神様からの預かりものとはコレの事である。
「弾け飛んだって言ってたけど、神様がちゃんと回収済みだったってことなんだよね」
マテリアルの欠片。
それなりの大きさで私が持ち上げるのは無理そうに見えるんだけど、何故か重力を無視した軽さで片手でもヒョイっと持てるんだな。
最初の掛け声は、私も重さを知らなかったから気合を入れてしまったのよ。恥ずかしいわぁ。
「リン。月の光がマテリアルに当たりだしたぞ」
ディーンの声に月のマテリアルに目を向けると濃紺の球体の中に金の小さな光がキラキラと光りだした。
「うわっ、キレー。って見惚れている場合じゃないね」
気を取り直すと欠片を持ってマテリアルに近づく。
スゥッと体の重力が無くなって軽く足が地面から離れだす。いつもなら、ワタワタと焦るところだが何故かそれが当たり前に思えて冷静な自分にチョット驚き。
そっとマテリアルの欠片を差し出すと欠けた箇所に綺麗にハマっていく。そして、ここからが私のお仕事。
「指先に魔力を集めて〜
マテリアルにホワホワ〜と振り掛けると
アラ不思議。亀裂が治るんですね〜」
うん。フザケているように聞こえるけど、これは神様がマテリアルの修理方法を説明してくれたときのセリフであって。私は、断じてフザケてない!キリッ。
気の抜けるセリフに一瞬皆「ハ?」て顔したけど、目の錯覚じゃなくて綺麗に修復していくマテリアルに視線を戻していた。
「うん。こんなもんかな?」
一旦、地面に着地するとグルリとマテリアルの回りを一周して確認する。
「修復完了〜」
「ありがとう!!」
感極まったディアーナにギュッと抱きしめられて、フワフワを満喫したらもうひと仕事。
「ディアーナ。チョット離れててね」
フゥと一呼吸。
「ナビさんフォローよろしく!」
−月のマテリアル確認
−現在の蓄積魔力37%
−魔力の充填を開始します
マテリアルに手を当てると一気に魔力を流し始める。
マテリアルの表面にデジタル表示で蓄積魔力がパーセンテージで表示され、まぁまぁな勢いで増えていっているなぁ。
−ピコン♪
−魔力の充填
−98%
−99%
−100%
−お疲れ様でした
−魔力の充填が完了しました
−ピコン♪
−続けて結界魔法陣を展開いたします
−離れてください
−サン
−ニイ
−イチ
−結界魔法陣展開
目を開けているのが難しい程、金の煌めきが瞬いた瞬間。
ドッと光の柱が空に向かって立ち上がるとパァーンと全方位に向かって金色の花が開くように魔法陣が展開された。
−結界魔法陣が正常に展開しました
−これより
−制御モードへ移行します
「オォ!綺麗〜」
ディアーナに手を引かれて神殿の外に出ると、魔法陣の展開は未だに続いており少しずつ大きく広がっていた。
「リン!足元を見てください」
ルカの声に足元へ目線を走らせると、ガラスのような花達が一斉に金色に染まりシャラシャラとそよいでいる。
「正に天の川!」
星の川を渡っているような錯覚を楽しんでいると、ピコン♪といつもの電子音が鳴り響いた。
▷早速、1つ目のマテリアル修理完了ご苦労様でした
ご褒美に月の精霊の加護を与えておくね
(強化バージョンで♪)
次は、空の蒼翼を目指してね☆
その前にユックリお休みと観光を楽しんでね〜!
いつもながら、見守っていてくれてる感満載のメールが届くよね。まぁ、結構好きなんだけど。チョット、心臓に悪いわ。
「ねぇ、月の精霊の加護って何?」
「え"?!」
ルカとディーンの顔が引き攣っているのは見間違いじゃないし、ディアーナが大笑いしてるのも。
うん、見間違いじゃない。
「アハハハッ、ハァ〜。久しぶりにこんなに笑ったわ」
美女の笑顔。ご馳走様です。
「月の精霊っていうのは、私。ディアーナのことで」
エェー!ディアーナって精霊だったんだ。って、他に何?て聞かれたら精霊がしっくりくるね。うん、ごめんなさい。顔に全部出てました。
「いいかしら?で、私から与えられる加護は『月の癒し』よ。主に浄化がメインね。例えば、魔獣に汚染された土地の浄化とか。あと、呪いも浄化できるわ」
「浄化って耳馴れないけど、使いこなせるかな?」
うん、元の世界で浄化といえば。悪霊退散とかスピリチュアルな方面しか思い浮かばないんですけど。
「大丈夫よ。必要なときに、必要なだけちゃんと力の使い方を理解するはずよ。貴方と貴方の大切な人達をちゃんと護ってくれるわ」
それを聞いて、とても安心しました。
ルカとディーンも少しホッとしたように見えるしね。