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ピコン♪
−減速します
−前方、約300m先にガッロネーロを確認
−大きく迂回しますか?
突然の電子音と共に女性の声で案内がされると、移動中のスピードが遅くなった。
「ガッロネーロって何?」
まず、気になったのはソコ。ガッロネーロ?聞き間違い?
「ガッロネーロはアレだろ。黒い雄鶏の魔獣」
Q,ガッロネーロとは?
A,黒い雄のニワトリ
「リン。銃の練習をしましょうか」
銃の練習。必要ですかね?
「もう少し進んだら、ライフルの方を用意してくださいね」
有無を言わせないルカの指示でニワトリが見える位置まで移動した。
初めて見るガッロネーロは、私の想像を遥かに超えた大きさで体は禍々しい紫色をしていて目はルビーのように赤い。普通のニワトリの10倍くらい有るんですけど!
ライフルをアイテムボックスから取り出すとガッロネーロに向けて構える。実は、構え方だけは教えてもらって練習したんだよね。
少し猫背の体制でライフルのストック(お尻の部分)を肩の付け根と頬にくっつける。脇を締めて、少し腰を下ろして踏ん張る。
教えられた通りに構えると耳元で突然、音声案内が始まった。
−ターゲットを確認
−ロックしました
−魔力充填
−出力の調整を完了しました
−風速1.4m弾道を調整しています
−全ての調整が完了しました
「え?」
驚いてストックから頬を離してしまった。
「リン、どうした?」
すぐ後ろで一緒に照準を見てくれたディーンが小声で聞いてくる。
「音声案内があって、ターゲットをロックしましたとか言ってるんだけど」
「え?」
ええ、そうなりますよね。
少し考える素振りをしたディーンは、私のライフルの照準を少し右上にズラすと。
「トリガーを引け」と、指示を出した。
『パシュン』
トリガーを引いたライフルから青紫色の閃光が曲線を描いて飛び出して行った。弾丸じゃ無かったな、もっと大きい音がするかと思っていたけど。魔導式って言ってたから魔力とか?
ズン……。
視線の先ではガッロネーロが地面に横たわっていた。照準ズラしたけど、ターゲットをロックしたら関係無いとか?
「ハァーーー。自動照準、追尾付の上に一撃必殺とかなんちゅう武器を持たされてんだよ!」
ディーンが深きため息の後に文句を言ってきた。理不尽だ!
「神様の過保護感が半端ないことは、大変良く理解しましたから。リンの初獲物を見に行くとしましょう」
ルカの笑顔が心做しか引き攣って見えますが気の所為でしょう。
ルカに手を引かれてガッロネーロを仕留めた辺りに向かって歩いているけど、あの巨体が無くなっていた。
「え?ニワトリ何処行った?」
キョロキョロと焦る私を他所に、ルカはユックリと歩いて行く。
「魔獣を倒したのは初めてでしたね。魔獣は、倒すと煙の様に立ち消えてしまうのです。後には、このようにドロップ品と呼ばれる部位や肉が落とされるんですよ」
まんまゲームの世界じゃないか!でも、解体とかしなくて良いし血がビシャーとかなっていないから私的には大変ありがたい。
「これがガッロネーロから取れた魔石です。後は、爪と尾羽根と肉ですね」
ガッロネーロが倒れた辺りには、赤紫色の禍々しい魔石と立派な爪と尾羽根。それから木の皮のような物に包まれたお肉がドーンと置かれていた。
[ガッロネーロの肉−魔獣]
雄鶏に良く似た魔獣
臭みは無い
部位により脂の乗りが違う
鶏肉と言ったら焼き鳥かな?唐揚げかな?
「なるほど、部位によって調理方法を変えた方が良さそうだね」
取り敢えず、ドロップ品をアイテムボックスに仕舞って旅程に戻る。ディーンは、まだブツブツ言ってるけど放って置こう。
バビューンと移動していると、又もやピコンと電子音が響いた。今度は、メッセージが届いたらしい。
▷初討伐おめでとう!
お祝いにお酒を送っておくね♪
神様、暇なのかな?お酒は、有り難く頂きます。
お酒のツマミならやっぱり、簡単に出来る唐揚げかな。焼き鳥も良いけどネギがないからなぁ。でも、焼鳥のタレはあるな。
明日の夕方には余裕で『月の丘』に到着出来そうだから。今日は、早目に夕飯作りに取り掛かるとしましょうかね。