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「まずは、リンちゃん腹ごしらえからね」
と、パオロさんに連れられて来たのはヴァレーゼ商会が経営する食堂だった。
「ここの売りは、新鮮な魚介料理だよ」
確かに、昨日見た魚屋さんでは鮮魚は少なかった。乾物や干物が多かったな。
そこへドンッと運ばれてきたのは、貝とお野菜のトマトスープと魚のフライ、魚介のサラダとテーブル一杯に料理が並べられた。
「美味しそう。いただきます」
ルカとディーンがササッと取り分けてくれたお皿から、まずは揚げたての魚のフライ。ソースをかけてパクリとかぶり付けば、外の衣はカリカリ、中は白身がふんわりと最高の揚げ具合。噛めばジュワッと魚の旨みが溢れてくる。
「サクサク、ジューシーで美味しい」
貝とお野菜のトマトスープは、ニンニクタップリで少しピリリと唐辛子が効いている。貝の身を外してスープと絡めて食べれば、プリプリの食感と鼻に抜ける磯の香りがとてもいい。スープにパンを浸して食べるのも美味しい。
「やっぱり鮮度が良いからなの?どれを食べても美味しい」
魚介のサラダをパクつきながらパオロさんに聞けば、契約しているアイテムボックス持ちのポーターの中に鮮度を保存出来る人達が居るそうだ。
「アイテムボックスの中の時間が止まっているんですよ。さっき買ったパンを出してみて下さい」
ルカに言われて、お昼前に買ったパンを出してみる。
「あっ、温かい!」
「やっぱりリンも鮮度を保存出来るタイプでしたね」
と、言う事は?昨日買ったお肉達はアイテムボックスに入れておけば何時でも新鮮な状態で食べれるのか。
「でもなぁ。そうすると、ルカとディーンが使えないでしょう?」
独り言をブツブツ言ってたら、ルカに笑われた。
「リン。奴隷契約している者とは、一部アイテムボックスの共有が可能ですよ」
なんだって!一気に問題解決じゃないか!
「今度からは、食品の管理はルカに任せるからヨロシク」
よし、丸投げしとけばルカも遠慮なく食材を使ってくれるだろう。
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「さて、お腹も膨れたところで契約と行こう」
パオロさんとの契約とヴァレーゼ商会の次期商会長さんとの契約。それから、倉庫の中身の届け先の確認等を済ませる。
「買い忘れとか無いか?倉庫を預かったら最短で国境を超えるぞ」
倉庫が忽然と消えたらそれなりの騒ぎになる。ポーターの私がヴァレーゼ商会の関係者と気づかれないようにサッと国境まで行って今日の内に国境を超えると言う予定らしい。
「リンは、フードを被って街を出るまではディーンに抱っこしてもらっていて下さいね」
えっ、それは恥ずかしいから…あっ、拒否権は無いんですね。
「じゃあ、リンちゃん無事を祈っているよ。何か情報が入ったらメッセージを送るからヨロシクね」
パオロさんとお別れをして一気に倉庫を収納した。
「じゃあ、世話になったな。リン、行くぞ」
バイバイと手を振る私にフードを被せるとディーンに抱き上げられて街の門に向かった。
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無事に砦の街を抜けるとバビューンと国境まで行って特に引き留められる事も無く出国する事ができた。
「まだ、日が高い内に先に進みたいと思うんだが」
「そうですね。少しでも国境から離れて置きたいですね」
と言う事で、1つ目の目的地『月の丘』を目指す事にした。ナビゲーションの言うことにはバビューンと3日程かかるらしい。
疲れるから、5日くらいかけて行ってもいいかな。