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飛びこんだ先の世界(1)

文香「ね、ね!トウ姉!ダイ君ってどれぐらい強いの??」

藤花「普通の一般人と比べたら強いんじゃない?柔道やってたのもあるけど、昔から何て言うか地力、ポテンシャルは高い子だから。」

文香「ふむふむ」

藤花「でも、一般人と比べたら、ぐらいよ。本格的に格闘技とかやってる人とかとは比べられないと思う。」

文香「ほうほう。。。じゃ、ヤバイね!」

 目の前で消えた小瓶を見て、大道は久しぶりに胸が高まるのを覚えていた。どこに行ったのか?これは何処に繋がっているのか?


 考えながらも、身体は先に動いてしまっていた。


 立ち上がると同時に、躊躇いなく輪の中心を目指し、足を揃えて飛び込んでいた。


 急に足場が無くなる浮遊感が全身を襲う。全神経が警鐘を鳴らすも、身体はピクリとも動かなかった。


 そして、視界の先の幼馴染の後ろ姿が急にぼやけ、、、



「シャギャワー!」


 大道が気がつくと、緑色した小鬼に馬乗りにされていた。

太い血管が浮かび上がったその太い腕で大道の首を締め上げる。

 喉が潰される音が聞こえそうな程の苦痛に、反射的に全力で身体を捻る。腕が外れた瞬間に大道はそのまま転がって距離を置く。


「ゲホッ!ゲッ、、、声出ねえ。何しやがる。」


 小鬼が激昂しながら再び距離を詰める。半身を起こした大道を再び押し倒そうと伸ばして来た片腕を、大道は両手で握って逆関節方向に捻り倒す。

 思いの外、軽かったその小鬼だが、すぐさま立ち上がると少し距離を置き、こちらを覗きこむ。


「なんだコイツ、、、あれ?これゴブリンか?」


 それはアニメやゲームでよく見た『ゴブリン』だった。背はおよそ130cmほど。

 しかしその背に似合わない丸太の様な腕、ヨダレが垂れ下がる口元から見える尖った牙。何よりその全身が緑色に覆われた皮膚。


 周囲には背の高い木々が生い茂っており、幼馴染を照らしていたはずの夕陽は無く、暗い夜の闇が広がっている。月にしては明るい光のおかげで目の前の怪物がはっきりと視認出来た。



「おいおいおい、、まじかよトウちゃん、、。」



 大道は激しく混乱する中、自身の天才な幼馴染が作った転移装置が違う世界へと、異世界へと繋がっていたのだと理解した。

 

 思わぬ反撃を受けて、距離を取っていたゴブリンだが、再度両腕を広げながら大道に躙り寄る。


 逃げるか、躱すか。大道は判断に迷っていた。

 正確にはいつ逃げるか、そのタイミングを見計らっていた。

 先程掴んだ際に見えたゴブリンの腕、その先に伸びた硬そうな長い爪や口元の牙はどちらも大道に致命傷を与え得る存在感を示していた。

 本来なら直ぐにでも逃げ出したいところでは有るが、簡単に背を向けて逃走しても逃げ切れるかわからない。


 「はぁ、はぁ、はぁ、、、」


 大道は、浅い呼吸を繰り返しながら少しずつ後退し、正面のゴブリンが大きく動くのを待つ。

 次の瞬間、ゴブリンは両腕を叩きつけるように地面にぶつけて、牙を突き出しながら大道に飛び込んできた。

 

「待ってた、ぜっ!」


大道はゴブリンを半身で躱すと同時に、右足を大きく振り上げる。絶妙のタイミングでがら空きとなったゴブリンの腹部を捉えたその一撃により、身体軽いゴブリンが大きく吹き飛ぶ。


 足に残された確かな感触と、仰向けに吹き飛ぶゴブリンを見て、大道は踵を返しその場から離れようと駆け出しー、


 木の影より新たに現れた三体のゴブリンを見て足を止める。


 「待て待て、、って待ってくれないよな!」


 すぐさま、三体の左を駆け抜けようと試みる。が、三体のゴブリンの内、中央にいたゴブリンが飛び出し、手にしていた太い棍棒を振り伸ばす。

 

 「ぐっふぁ!」


 届かないと思われたその一撃は大道の太腿を捉えていた。回転するように倒れ込む。大道は直ぐに立ち上がろとするが、太腿に受けたダメージは深刻で、その大きな身体を支える事が出来ず、地面に座り込む。


 「っ痛ってぇ、、これ折れた、か?」


 上半身を起こし、自身の右足の状態を確認した大道、少し離れていたゴブリン達が争うようにこちらへ接近する。

 

 来るなら来いや、ぶっ殺してやるー


 半ばやけくそな大道だったが、身体を支えている左手に何かが当たる。一瞬、ゴブリンから目を離しソレを確認した大道は反撃への可能性を見出せていた。





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