異世界へ通じる道(4)
藤花は右手で握っている桃色をした輪を、そっと地面に置いた。
「輪廻転生2号だ。」
「いやフラフープだろ。」
言いながら、大道はその輪に近づき、その輪を拾い上げようと大きな身体から右手を伸ばすと、藤花が素早くその手を叩き、
「こら!安易に触るな!魔空空間に引き摺り込まれる!」
「痛ってーな!そんな危ないのかよ?」
「ああ、、この輪廻転生2号は、別名地軸変換装置と言い、、」
「どこの宇宙刑事だ!って俺らしかわからんネタ挟むな!蒸着するのか!」
「私は赤い方が好きだな、赤射。」
一頻り往年のメタルヒーローの変身ポーズをお互いに交わす。
「難しい仕組みは置いといて、なんかね、コレ、本当に空間に干渉する事が出来るみたいなんだよ。」
「なんだよ、開発者。珍しいくはっきりしないな、出来るみたい。とか。」
藤花の発明品については、実用化こそ問題あるが、その効果については良く知る大道が訝しがる。
「まあね、、この輪を通れるサイズ、生物ならアノ黒い悪魔、無機物なら交通標識までは実験済。綺麗に消えたよ。ただ、消えた後、どのに行ったのか?その検証が出来てないからね。」
「え?本当にこのフラフープにそんな効果がある?って交通標識消したら怒られるぞ!」
「むう、珍しく疑うね。ではでは、、、」
藤花は、近くの棚に有った液体の入った小瓶を摘み上げ、フラフープに近づく。
「いくよ?」
藤花は、その声と同時に小瓶をフラフープの中に放り投げる。小瓶がフラフープの輪の中心に落ちて、割れるー、
「き、消えた!」
小瓶を行方を凝視していた大道が藤花を振り返る。小瓶が床と接触する直前、輪の中に波のような振動が浮かび、小瓶を飲み込んだ。
「ふぅ、、消えて良かったよ。」
藤花が心底ホッとした声を上げる。
「、、、あの小瓶、何が入ってたんだ?」
「スカンク汁濃縮100倍。」
「何投げてんだコラ!失敗してたらこの部屋で悶死にするわ!」
「実験にはリスクがないとね。ま、本当に異世界に繋がってるだったらあちらには迷惑だろうけどね。これで少しは信じてくれたかな?」
「お、おう。何か凄いな!」
自らの発明品について、効果を証明する事が出来た藤花は窓に向かい、空気の入れ替えを図る。
藤花が窓を開けると、藤花の前髪を風がかきあげて、少しひんやりとした空気が部屋に流れ込む。
「褒めてくれるのは君だけだよ?大体どこに繋がってるのか?せめて狙って座標でも指定出来るなら何かの、、」
藤花が振り返ると、床に置かれた輪廻転生2号が薄く光っていた。丸い輪であったはずのその物体は数ヶ所ひび割れており、最早、円の形を保っていなかった。
「えっ、、、、だ、ダイっ!ダイどこ?」
既に先程の光を失った欠片に駆け寄りながら、藤花は声を上げる。
「ダイ!ダイ!、、ダイってば!、、うそ、まさか入っちゃったの、、、」
藤花はその場に両膝をついて座り込む。
「あ、あぁ、、、ちょっ、どうしよう、どうしよう!」
藤花は膝をついたまま、両手で髪を掻きむしりながらも現状を整理していく。
間違いだった。なんで大道にあんな『面白そう』な物を見せてしまったのか。大道の性格を熟知している藤花からすれば、それは痛恨のミス。
打開策を模索しようとするも、悔恨の念が頭を占め、想定される最悪の事態が次々と浮かび上がる。
「トウ姉入るよ〜!ね〜、聞いてよ!ダイ君がさぁ、、」
話しながら扉を開けて栗色の髪の少女が部屋に入る。
「フミ!フミ聞いて!
ヤバイの、大変なの!ダイが、ダイが、、、」
「どこかに転移した!!」
「はい?」
長かった、、、。このまま日常系ラブコメに転移するのでないかと。。。
次回から異世界です。(願望)
残された藤花と文香もこの後、ちょいちょい話に出てきます。大道はいったい何処に飛ばされたのか?お願いだから真っ直ぐ異世界に、、




