異世界に通じる道(1)
旧校舎の2階、夕陽が差し込み踏み締めた足から舞い上がる埃がキラキラと舞う。その男の大きな身体からすれば小さい、少し錆が浮かぶ銀色のドアの取手に指を差し込み、勢いよく引き開ける。
「うーい、藤花。今日も元気に怪しげな実験やってんのかー?」
黒いカーテンが引かれ、外の光を遮断した部屋には、机に置かれたスタンドの後ろに少女が一人。この部室の主、水無瀬藤花だ。
その藤花の前には、化学の実験に使うビーカー。中に入った液体はおよそ自然界には存在しないであろう毒々しい色をし、刺激臭が部屋に入って直ぐに鼻につく。
「くっさ。。。慣れないなこの臭いは。藤花、制服に臭い染み付かないかコレ?」
「煩いな、君は。ちゃんとこの臭いを消す消臭剤は既に作成済だよ。この部屋から出る時には私は無臭。」
ここで藤花が初めて、ビーカーから顔を上げ気怠そうにこちらを見る。薄暗い照明に浮かぶその顔は少し隈が浮かぶ目元を含めて評価しても、まあ美人なのだろう。
2年にして、化学部(自称特殊化学部)部長。
水無瀬藤花。
乱雑に後ろに纏めた長い髪や、皺の目立つ濃紺の制服。何より他者を受け付けない、どこか、いや、四方八方に建てられた様な壁を感じるオーラが無ければ間違い学校のアイドル的存在になれる、不気味?不思議?な少女だ。
「で、君がこの部室に来るなんて珍しいじゃないか?私が君に求めていたのは部存続の為に幽霊部員になって貰う事だったのだが。最近、暖かくなってきたから土の中から蘇生したのかい?童貞院早見大道居士君。」
「勝手に戒名までつけてんじゃないぞ、この罰当たりが。なに?消臭剤あんの?ちょ、俺にもちょっと使わせてくれよ、これ直ぐ臭いつくからな。」
「すまない、屍臭への効果迄は検証出来ていないのだがね。はい、どうぞ。これ振りかけて早く成仏してこの部屋から昇天して下さいな。」
吹き付けが取り付けられた小瓶を藤花から受け取り、首元から順に吹き付けていく。
「ほい、さんきゅ。ってこれ無臭?なんか甘い香りがするけど、、、。もしかして惚れ薬とかフェロモン系の薬とかじゃ、「ほう、ゾンビでも流石は我が特殊化学部員だね。当たりだよ!」
その大きな目を見開いて彼女は感嘆の表情を浮かべる。
「え?まじで!なんだよ男女の事なんて興味無い拗らせコミュ障だと思ってたのに、やっぱ年頃なんだねー、トウちゃんも〜」
藤花は椅子を回転させ、大道に背を向け、
「ま、まあね、それなりに興味はあるさ。おい!それよりそのトウちゃん呼びは止めろ!もう子供じゃないぞ。
まあ、そのなんだ、その薬は人間以外の動物限定効果だけどね。」
「んげっ、それお前帰り道で野良犬、野良猫、野良彼女がわんさか集まるんじゃ、、、。」
藤花の薬の効果については、過去の実験台としての経験からも充分に体感している大道は青褪め、顔がひきつる。
「野良彼女は永遠に寄ってこないだろうが、他の効果は約束するよ?先頭で歌でも歌えば立派な音楽隊になると思うよ。で、本当に今日はどうしたんだい?何かあった?」
「それだよ、トウちゃん!今日文香見かけたか?」
「フミ?いや見てないね。休みなんじゃない?風邪でも引いたんじゃないの?それかサボリか?」
「文香がサボる訳ないだろう?それに昨日からDINEでメッセージ送っても既読つかないし、電話も繋がらない。おかしいと思わないか?」
捲し立てる大道を見つめ、藤花は少し声のトーンを落とし、少し苛立ち気に答える。
「あのね。フミと君と、それに私も。いつまでも昔からの幼馴染のままじゃないんだよ?それにリア充グループのフミと私じゃ普段から接点なんて無いでしょ!私に意見求めても、異世界にでも拐われたかな〜ぐらいのトンデモ回答しか出してあげれない、、「それだ!!」
「え、どれ??」
こんにちは!伊賀侍と申しますー。
ほぼ読み専でしたが、一念発起し書き始めました!
えー、、、
完結までエタらないように、、
ストック貯めてから投稿始めましたので、しばらくは毎日更新でいきます!
少しでも気に入って頂けましたら幸いです!
あ、評価、感想頂けたらもっと幸いです!
では、いざ異世界に!、、、あれ?




