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タカマガハラ

省3型ー10082号船の遭難

作者: 桜桃露雨


 銀河国家連合はコスト削減目的で宇宙運輸省規格の宇宙船の普及に努めている。俺たち宇宙船乗り(ふなのり)にとっても、どこでもいつでも修理ができるメリットがある。

 生き馬の目を抜くと言われる商人なら、商売敵を出し抜く船足が無いというデメリットがあるだろうが宇宙運送業の俺たちにとっては些細なことだ。


 今日は宇宙開発省のチャーターで開拓惑星に機材を届け、今は中継ステーションで待機中だ。

 別に待機する契約はないが、空船で帰ると帰りの燃料代が丸損だからな。うまくタカマガハラ方面に行く荷物を拾いたいものだ。


 省型宇宙船は数字が増えるほど小型になっている。省3型クラスだと宇宙軍の大型巡洋艦クラスの船になる。

 荷物が少ないと採算が取れなくなると思われがちだが、運用コストが安いうえに軍登録をしておくと補助金が出るため、赤字になることはほとんどない。

 最も軍に登録すると、有事に軍用輸送船として徴用され被弾しても保証が出ない。

 だから俺たち宇宙船乗りは常に戦争や紛争に注意している。償却前に徴用されると丸損になるかもしれないからな。

 アルゴ・シップと名付けた俺の船は軍の補助輸送部隊である、輸送予備船団の所属船の払い下げだからとっくに減価償却を終わらせている。

 アルゴ・シップの乗組員たちは、俺が戦艦出羽の副長だった時から一緒に組んでいる部下たちだから気心は知れている。


 あの時、艦長が馬鹿な真似をしていなければ…いや、お偉いさんの息子だからと自己の責任を逃れずきちんとしていれば…俺はまだ軍人だったんだろうな。

 艦長のやらかしの責任を押し付けられ、不名誉除隊だけは免除してやると恩着せがましく追放されていなければ…今頃は主力艦は無理でも重巡航間の艦長ぐらいに成れていたはずだ。


 まぁ…お偉いさんも濡れ衣で追放するってすねの傷があるもんだから、退役までまだ時間のあった10082号船を退役扱いで払い下げてくれたり補助金を余分に出してくれたりしてくれてるがね。


 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 開拓星「アトロポリス」方面で輸送任務に従事セリ予備船団3-10082号船の遭難を公式に記録する。


 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 反乱軍が、こんな星域に居るなんてな…大穴が開いてしまったが幸い船倉部分だから航海に影響はない。

 問題は主機がぐずついているのとギャラクシー(G)ポジショニング(P)システム(S)がぶっ壊れて現在位置が不明なことぐらいかな?

 推測航法に頼るにしても、現在位置を大まかにでも把握していないと計算もできない。

 超空間航法に入るタイミングで被弾しちまったせいで、ジャンプ事故が起きたようだ。


 幸い、船外作業機は軍払い下げの精密作業ができるタイプを積んでいる。通常なら緊急避難艇に作業アームが付いた作業ポッドだが、空間機甲兵団が保有する機甲兵と同じものを払い下げてもらってる。

 軍用としては2世代前の時代遅れだが、軍でもいまだに補修・作業用として基地に配備されているから補修部品にも困らない。


 漂流2週間目

 修理はできる範囲はすべて終わった、観測班によりおおよその位置も把握できた。


 漂流3週間目

 超空間航法に必要なエネルギーチャージがうまくいかない


 漂流4週間目

 やっと、やっとだ!…亜空間通信システムが通話可能になった。通信速度が遅く、通信容量も少ないので現在はほぼ使われていない緊急用通信機の扱いだが、光速に縛られない通信方法を回復できたことは救援が呼べるということだ。


 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


宇宙運輸省・外宇宙方面運航管理本部

 遭難し、消滅したと思われた「3-10082-0505」からの遭難信号が入電。第42管区・航宙保安部の救難船が派遣され遭難船を無事回収セリ。


 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 というわけで命を無事とりとめた俺たちは、「歯ぎしりする軍幹部の恨み節の幻聴」をつまみにタカマガハラで祝杯を挙げた。

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