めざせスローライフ
王都レイクキャッスルへ着いた。
そのままの名前でどうかと思うような湖の真ん中に城が建っていて岸まで道が続いている。
その周りにカベが2重になっていて、内壁の中が貴族街らしい。行かないからどうでもいい。
外壁の中が王都で内街と呼ばれている。そして外壁の外には内街に入りきらなかった人達がフツーに暮らしている。王都はさすがに人口が多くて内街だけでは土地が足りないのだ。別段スラムとか貧民街とかそういうのではなく普通の街並みだが、一応内街のほうがちょっと全体的にきれいだったりお高かったりする。
外街は壁がないので大量の魔物とか攻めてきたら防衛もできないが、そんなことは一度もないのでみんな普通に暮らしているようだ。
乗り合い馬車は外街で一度止まり内街へ入っていく。オレ達は外街で降りて適当な宿屋をさがして部屋を取る。節約して1部屋だ。ラッキースケベが待ち遠しいゼ。
さすがにコスパが悪いので部屋か家を借りるんだけど、着いたばかりだしすぐに借りれるか分からないしね。後で不動産屋(みたいな斡旋所)へ行くんだけどとりあえずは先に冒険者ギルドだな。スクール卒業後特に依頼とかもしないで王都へ来たのでそのままFランクで、PT名もやっと決まったので所属登録とPT登録しないとだからね。
王都に冒険者ギルドはなんと5か所もある。内街に1個と外街の東西南北に出張所が1か所づつ。王都の内街を突っ切るだけで4時間くらいかかるみたいだから時間短縮と、実は選別もされている。王都中央のギルドを使用できるのはCランク以上の冒険者のみで依頼もcランク以上はほとんど中央のギルドで受付されている。初心者冒険者は外街でランクを上げて中央ギルドに行くのを目標にがんばるらしい。
オレはそのシステムに目をつけて、ココでスローライフを送る計画を立てたのだ。
今オレ達はFランクの新米冒険者だけど要は依頼を受けなければいいのだ。依頼の達成率や貢献度、Dランクからは昇格試験なんかもあるので依頼を受けず、迷宮のドロップを売ってお金だけ稼ぐ。観光とかでもなければ内街に入らないで外街だけで生きていける。聖女とか勇者とかウロウロしてそうな中央ギルドとか行かないようにしないと。
ソフィアとダークには最初ちょっと渋られたけど、”みんなバカみたいにSランクを目指してるけどFランクなのに実はSランクより強いほうがかっこいいぞ””めんどくさい貴族に目をつけられたり指名依頼とかに縛られなく自由にできるぞ~”と説得したら尊敬の目を向けられた。
依頼なんかなくてもダンジョンのドロップ品はギルドで買い取りしてくれるので買いたい物を揃えてあとはダラダラダンジョンに入ってスローライフを送るのだ。
この世界はダンジョンもちょっと変わっていて要は神様達のマッチポンプだ。図書館で調べた分では神の試練を乗り越えて報酬を手にするという解釈がされているが神と邪神の共同経営の人間強化アトラクションみたいなものだ。ダンジョン内で魔物を倒すと魔石は残らない。敵の死体もちょっとしたらダンジョンに取り込まれる。そして素材などがドロップアイテムとして残るのだ。故郷の街の近くには初心者ダンジョンしかなくて学校の授業で何回か入っている。王都の周りには3つのダンジョンがあってそれぞれ食材、魔物素材、装備などをドロップする。狙ってるのは魔物素材のダンジョン38階層に出てくるミスリルゴーレムを倒すとドロップするミスリル原石だ。もちろんミスリルゴーレムを倒せるPTでないとそもそも無理だけど、たぶんなんとかなるんじゃないかなぁ。
ぼーと将来の予定を考えながら歩いていたら馬車を降りた外街東地区の冒険者ギルドについた。
「リーダーよろしく。」
「任せましたわ。」
「ぐぅ」
PTリーダーは長時間の会議でダークになったのだ。さすがにコミュ症なダークに交渉とかかわいそうなのでみんなで分担するのだが、とりあえずの代表はダークである。
ギルドの中に入るとあんまり混んでいない。空いている窓口にダークの背中をソフィアと押していく。
「あ、あ、あのぉPT登録・・したいの・・・・ですが」
受付嬢は結構キレイなおねーさんだ。
「はいはい。みんなギルドカード出してね。みんなちゃんと冒険者だよね?」
学校を出ないでいきなり冒険者になろうって人もいるらしいけど、オレ達はちゃんと登録してある。みんなFランクのギルドカードを出す。
おねーさんはギルドカードをみて微笑ましそうにPT登録用の用紙をとりだしたが、ふとソフィアに目を向けて凝視してくる。
「あなた達、今ちょうど雷の勇者様と水の勇者様と疾風の勇者様が勇者PTを可愛いい女の子限定で募集してるのだけれど、どう?」
ソフィアとダークの顔から表情が抜け落ちる。
「ここだけの話なんだけど、勇者PTに入るとね、なんと勇者PTの加護がもらえるらしいのよ~もらってる加護の力が強くなるんだって!」
受付嬢は悪気はないのだろうけれど、オレの存在は完全にスルーしていた。あと疾風の勇者は魔法使いの女の子がいたハズなのにどういう了見だ!
手にもった扇でカウンターを叩いて感情のない声でソフィアが言う。
「いいから、PT登録の、紙を、よこしなさい。」
なんか怒らせたコトに気が付いた受付嬢は通常営業モードに切り替わったようで粛々と登録を済ませてギルド内について定型文の案内と注意事項を教えてくれる。依頼の受付、報告はこちらの窓口で裏手に別の入り口があり、依頼外の素材の買い取りなんかはそっちでいいらしい。依頼を受けるつもりがないのでこの受付嬢の顔もあまり見る事はないだろう。
手続きを終えて宿に帰ろうとしたら別の声がかかった。もちろんソフィアにだ。
「キミ可愛いね。このボク、疾風の勇者ハヤトのPTメンバーにしてあげるよ♡」
勇者なのに被りがあるのか・・・。ってそんなことよりソフィアがぶちぎれ寸前だ。魔法剣1秒前だ。
「どうしましたか~」
割り込んで腕あたりを適当に触って眠らせておく。
「あれれ?大丈夫ですか~?」
崩れ落ちる勇者を支えるフリをしてサイフをもらっておく。支えるフリなので床にぐしゃっと音を立ててへばりついたが、そんな事くらいでは起きる訳がない。
手が空いてる受付嬢を呼んで急に寝ちゃったんですよ~って言って退散した。外街にいるんだからDランク以下の雑魚でPTメンバーもいなかったし最近加護もらったイキリ勇者だったのだろう。サイフの中身もしけたもので中身だけ抜いて捨てた。
もう3人ともぐったりしていたので早々に宿へ帰った。明日からがんばろうってヤツだね。帰りがけに晩御飯で買い込んだ屋台の串焼きは何の肉かは聞いても教えてくれなかったけど、美味しかった。
宿代なんかもそんなに余裕もないし、なるべく早く稼ぎになる階層まで行かないとね。今日は寝るけどね。部屋をシーツで仕切られてラッキースケベはありませんでした。残念。




