加護の職業でなくてもいい
頭を押さえながらブラックが前のスペースへ歩いていく。
もう一人は黄色いボサボサ頭でそばかすと日焼けがザ・モブみたいな雰囲気の子が鍬をもって前へ出ていく。
鍬?
スペースの真ん中で向かい合うと、ブラックが右手で顔の左半分を隠したポーズをとってアニメ声で名乗りを上げる
「オレはブラック=シャドウ 闇よりも黒く影に生きる者・・本名は捨てた」
「最低限加護の申告はするように!」
「あっハイ <スカウト>ノ加護と<目利き>ヲモラッテマス」
<目利き>は<鑑定>の下位互換で詳細は分からないけど良し悪しがわかる。結構便利だし<鑑定>は大分レア加護らしい(無頼毎日加護特集調べ)から<スカウト>も合わせるといい加護もらった感じだなぁ
「オラの名前はルルグ=アシュレイ!<農民>の加護をもらっだけんど、農業なんてダサいごどやってられん!s級冒険者になって可愛い嫁さんもだうだ!」
そう言うとルルグ君は自前の木剣ならぬ木鍬を大上段に構えた。
ブラックはマントの中から取り出した木製の短剣を2振り逆手に持って半身に構えをとった。
ちょっとカッコイイ。
隣でソフィがウンウンうなずいているので合格なのだろう。
「始め!!」
ブラウマン先生の開始の合図でルルグ君が突っ込む
「”耕し!耕し!”」
真っ直ぐに進みながらルルグ君の鍬がものすごいスピードで2振りされる。
ブラックは右前方にすれ違うように避けながら左手の短剣をルルグ君の顔に向かって投擲した!
二刀流じゃなかった!
振り下ろして持ち上げるまでが”耕す”の効果だったらしいルルグ君はいい反応で鍬の柄で飛んできた短剣を弾く。
ブラックは短剣を投擲した左手を懐にいれなにかを取り出しルルグ君に向かってこれまたばら撒くように投げつける
「黒星!」
ビー玉くらいの丸い球が10個ほどルルグ君に迫る!
「”種まき!!”」
ルルグ君が愛鍬の柄の端を振ると先端が開いてなにかが飛び出した!
種だ!なんか多分野菜かなんかの種がブラックの球に当たると激しい破砕音が鳴ってパッと一瞬光る。
癇癪玉のデッカイバージョンかなぁ、攻撃力はあんまりなさそう。
種で防いだと思ったら音と光でちょっとびっくりした感じのルルグ君はブラックを見失う。
さすが<スカウト>、意識の外を動くようなぬるりとした動きですでに小太りなルルグ君の後ろに回り込んでいる。
「”バックスタブ”」
囁いてブラックの残った右手の短剣がルルグ君の首を後ろから切り裂く。
いや、木製でもそれはちょっと死ぬかもと思った瞬間
「田植え‼」
残像が残るほどのスピードでルルグ君が腰を折り曲げてブラックの一撃を回避して、そのままぐるんと前回りして立ち上がると鍬を構える。
ブラックは物凄い苦い正露丸を飲んだ時のような顔でエーって言ってる。
「そこまで!」
ブラウマン先生の終了の合図で引き分けに終わった。
隣のソフィは真顔で首を横に振っている。オレもそう思う。
ブラックとルルグはとりあえず礼をしている
「オメーなかなかやるでねえか!オラの嫁にしてやってもええぞ!」
「死ね」
ブラックはそそくさとオレとソフィの後ろに回り体育座りで隠れている
もちろんこの場の女子陣の目はだいぶ冷たい。
ルルグ君は照れ屋さんだなとかつぶやきながら観客へ戻っていく
「ルルグはなかなか自分の加護を使いこなしている!このまま精進するように!他の者も戦闘系の加護でも自分の加護と向き合えばもう一段上を目指せる!<農民>をもらっても必ず農民にならなくてもいいしそれだけで弱いことにはならない!慢心は己の成長を止める!心するように!」
ブラウマン先生がなんかいいことを言っているが、世の中の加護は当たりはずれはあるし、農民よりは剣士のほうが強いだろう。ルルグ君はよくわからん。
しいていえば、農民とか農業とかの神の力は確かに他の神の力よりも多めに漂っているので戦闘に使えるなら強いかもしれない。いや、そんなことはないな。
先生に褒められてルルグ君は鼻を大きく広げてご満悦だ。
「次!ルビー2人前へ出ろ!」




