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悪役令嬢は3人の王子と結婚する

作者: ナイユ

オチのある話。ラストまでに3人の正体がわかった方は頭がいい。

王子は実は〇〇〇〇だったというお話。

 


「あわわわ!! あの!! 今日の夜は俺と!! イケナイ事してくれませんか!??」


 挙動不審なイケメンが赤いマントを揺らめかせ、こちらに迫ってくる!

 待って、待って。


「お、落ち着いて!! 落ち着いてください。レッドコート様」


 そんな私の言葉にかまわず、レッドコート様は私の髪を一房手に取った。

 そして、チュッチュッと私の髪に口づけてくるじゃないか。こらこらこらこら。

 気弱な口調の割に大胆だな!


「わかりました! わかりましたから。今夜はレッドコート様と共にいますから」

「本当!!? ありがとう。俺のお姫さま!!」


 バサリと赤いマントをたなびかせ、レッドコート様はキラキラと笑った。

 きゅんとする。可愛いじゃないか!!



 さてさて私は悪役令嬢である。

 悪役というだけあって、私は決していい奴ではない。

 レッドコート様と楽しい一夜を過ごしたが、次の日はまた別の男と寝室を共にする。



「どうだったの? 昨日のレッドコートは」


 おねぇ口調で緑の瞳をした人物。

 それが今夜の私のお相手だった。


「グリーンアイ様ったら。プライバシーに関わる事ですからそれは言えません」


 当然の事だ。いくら3人がそうだとしても、守られるべき事だ。

 何がおかしいのか、くつくつとグリーンアイ様が笑っている。


「ふふふ、さすが私の子猫ちゃん。だから私、子猫ちゃんの事大好きなのよね」


 切れ長で二つとない美しい緑色の瞳。

 木や葉っぱと同じ色のはずなのに、艶めかしい。

 ああ! うっとりしちゃうわ。


 そうして、私は自分のベッドでグリーンアイ様と並んで眠りについた。

 閉じられて美しい緑色が見えなくなっても、彼のまつげは上品で美しかった。



 この世界はゲームである。

 なぜだか前世の記憶がよみがえり、私はそれを知ってしまった。

 この世界にはヒロインがいる。

 でも私は彼女に、彼を渡すつもりはない。



「全くあいつらときたら盛り過ぎだろう。疲れているんじゃないか、お前」


 整えられた青い髪をした美丈夫が、低い声でそう言った。


「いえ、ブルーヘッド様大丈夫です。お気遣いありがとうございます」

「嘘をつけ」


 いや、本当に。本当に大丈夫である。


「本当の事を言って構わんのだぞ。お前の事を一番に考えているのはこの俺だ」

「は、はぁ」


 整えられた青い髪の持ち主は、少しだけ頭が固いところがある。

 彼はギュッギュッと私の体を抱きしめてきた。ちょ、痛い。痛い。

 結局この日の夜は、ブルーヘッド様とベッドに入った。



 私は毎日、3人の誰かと夜を共にする。

 そんな私を王宮の皆は誰も叱りはしない。むしろなぜか褒められさえする。

 ――私が正式な婚約者であるアレキサンドライト王子と王宮内を歩いている時だった。


「あぁ、お可哀相ね。アレキサンドライト王子。あんなんで、結婚なんかして大丈夫なのかしら」


 女中や庭師が噂をしていた。

 なんて失礼な事を言うんだろう! もうすぐ私たちは結婚するのだ。ほっといてほしい。



 ある日、ヒロインが王宮を訪問してきた。

 可愛い顔をしたヒロインは、白衣を着ていて理知的にも見える。

 ヒロインがアレキサンドライト王子を、自分の元に渡してほしいと言ってきた。

 彼女は善意で言っている。だけど。

 私は彼女に反論した。 


「でも、そうしたら3人の命はどうなるんでしょうか。彼らは殺されるんじゃないですか」


 ヒロインは黙ってしまったので、肯定なのであろう。

 私は彼女を王宮から追い出した。




「お前。明日は結婚式だろ。調子はどうだ?」


 整えられた青い髪をかきあげ、ブルーヘッド様が低い声で問いかけてきた。


「まぁまぁですかね。……まぁ、その手はどうしたんですか!?」


 ブルーヘッド様の指先から血が出ていた。


「ああ、たいした事はない」

「でも」

「いよいよ結婚式が来るのかと思うと気が高ぶって、手元が狂った」


 私はブルーヘッド様が腰に下げた、彼お気に入りの剣を見た。


「じゃあ、私が手当てします!」

「ああ、頼む。ありがとう」


 珍しい事があるものだ。ブルーヘッド様はたくましい体の割に、ご飯を食べない。

 私は彼が食事しているところを一度も見たことがない!

 ご飯を食べる時間さえも、剣の練習に割いているのだ。そんな、剣の達人である彼が。……そんなに動揺しているのだろうか。



「はい、あーん」


 グリーンアイ様が私にスプーンを向けて言った。


「グリーンアイ様ありがとうございます。でも、明日結婚式だから、ドレスのためにもあまり食事は」


「ダメよ。ダメ。食事は、ちゃんと食べなきゃ」


 グリーンアイ様はブルーヘッド様とは逆に、よく食事をする。

 いつもご飯を食べている。夜一緒に寝る時くらいじゃないだろうか、食べないのは。


「グリーンアイ様はいいですね、食べても太らないんですもの」


 私は彼の鍛え上げられた体を見てふてくされた。柔らかくて女性的な雰囲気のくせに、良い体していて羨ましい妬ましい! ハンカチをかみしめたくなるわ!!


「まぁまぁ。ほら、ご飯食べて機嫌直して。美味しいわよ、これ。はい、あーん」

「あーん。……うぅ。確かに美味しいです」

「うふん。そういえば、手当て子猫ちゃんがしてくれたのかしら」


 グリーンアイ様は自分の手元を見て、困ったように微笑んだ。


「全くブルーヘッドは、剣ばかりいじってヤンチャなんだから」




 結婚式当日。

 煌びやかな教会で、私はアレキサンドライト王子と皆の前に立つ。


「あああぁ、嬉しい! よかった。やっとこの日が来た」


 レッドコート様が感極まった様子で言う。


「レッドコート様が喜んでくれて、私も嬉しいです」

「これも君が、あの女から俺たちを守ってくれたおかげだよ!!」


 あの女というのは、ヒロインの事だろう。


「もぉぉ本当に!! 何度、あの女を殺そうと思ったか!」


 レッドコート様が指輪を持っている。


「……殺すのはいくら何でも」


 彼の手には私が巻いた包帯があった。手当てした時のものだ。

 結婚式だけど、まぁ、小さいからそんなに目立たないかな。


「でも! あの女は、俺たちを殺そうとしていた!!」


 まぁ、そうよね。彼らが怒るのも当然か。

 私が言い返すのをやめると、彼が指輪をはめてくれた。

 嬉しいわ!


「俺たちといてくれてありがとう」


 今日のレッドコート様は、いつもの彼自慢の赤いマントを脱いでいる。

 彼は白の花婿衣装で私に口づけた。



 結婚式の後、また庭師や女中が噂をしていた。


「アレキサンドライト王子、まだ病気が治らないんですって」

「結婚したというのに、一体いつまでああなのかしら」

「おお、怖い怖い」



 だからなんて失礼な事を言うんだろう!  




 整えられた青い髪に美しい緑の瞳、そして背中には赤のマントを羽織った彼――アレキサンドライト王子。彼は、多重人格である。レッドコート、グリーンアイ、ブルーヘッドの3つの人格を持っている。


 そしてヒロインはそんな多重人格を治してくれる存在だ。彼女はお医者様でもある。

 治すという事は一つに統合するという事。そして今ある3つの人格は消えてしまうのだ。

 だけど、もう私には人格ではなく、本物の人としか思えない。彼らを殺してほしくない。



 だから私はヒロインに負けず、これからも3人の王子との幸せな日々を守るのだ!

 

 コンコン


 今日もアレキサンドライト王子が私の寝室に入ってくる。

 さぁ、今夜のお相手は【誰】かしら。

 


騙されたという方も気づいたぜという方も、ブックマーク、評価してくださると嬉しいです。

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― 新着の感想 ―
[一言] 読みました! とても面白いかったです! それぞれの人物が同じ人だったなんて、意外性のあるお話でした!! こういうお話もすごく好きです! グリーンアイ様みたいなおねぇ口調のキャラって 凄くツ…
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