表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/2

共通1 学園へ向かうヒロイン


 干からびた葉が、生暖かい風に吹かれ、儚くも崩れる。

 人類が進化し、魔法による利便さを得ると同時に、木々は汚染され、もはや限界を迎えているのだろう。

 

「そろそろ、悲劇が始まる」


一人の男がそうつぶやいた。


□□


「うわ! もうこんな時間だ! 入学して初日から遅刻なんて、学園生活に支障がでちゃう!」


急いで髪を整えて、カバンをホウキにかけ、学園まで直行した。


「わああああああああああ!」


強風に煽られて、せっかく整えた髪の毛がグシャグシャになる。

風で目が乾燥してきた。今は風圧に立ち向かうのがやっとで地上に降りることはできない。

涙目になりつつ、風が収まるのを待って、先へ進んだ。


「は……はは……着いた!」


もうすぐ校門だと、思って気が抜けて着地に失敗してしまった。

ホウキにまたがったまま、グルグルと回転。視界に男子生徒二人が映る。


◆[どうしよう!]


〔自力でなんとかする〕A

〔避けて!〕B

〔流れに身を任せる〕c


A 二人にぶつからないように逆回転すると行先は木だったので、咄嗟に風を空間に維持する魔法を使う。しかし上手くいかない。

「きゃあああ!」


B「よ、避けてえええええ!」

その言葉の通りに二人は間を開ける。でもこの後は何も考えてなかった。このままでは木にぶつかってしまう。

「こうして姿を見るのは……二度目だな」


「いたくない……」

「フ……入学早々騒がしい生徒が入ったものだな」危ないところを男性が助けてくれた。どうやら衝撃を吸収して、受け止めてくれたみたい。「あ、ありがとうございます!」

なんとか無事に地面に降りられて安心していると、周囲がザワザワと私に注目している。

「……なんだあれ」

「隕石かと思ったら、女子じゃないか!」


何はともあれ、ケガはない。遅刻する前にギリギリでクラスに到着した。


「みんなおはよ~! 私はレピス! よろしくね!」


「………ああ」

「うん」

「どうも」


皆いかにもガリ勉のような真面目系ばかりで、計画していた学園デビューのプランを実行することは無理そうだ。


「やあ、皆おはよう! 俺はロットバルト・ナイトオリア。よろしくな!」


またも同じようなことをやって空気を微妙にする者が現れる。

彼に何故だと言いたそうな目を向けられる。こっちが聞きたいくらいだ。


空いている席に座ろうと辺りを見渡していると、勢いよく教室の扉が空く。


「貴様ら! このシュヴァーアイン様と同じクラスになれたことを誇りに思え!」


入って来るや否や、偉そうに叫ぶ男子。どうせスルーされるんだろうな、ロットバルトが気の毒そうに呟く。

どうなるのか傍観してみる。クラスの女子はイケメンがいると盛り上がる。

高評価なのに対し、男子は妬ましそうで実に極端だった。


「ていうか彼ってヴァイセじゃない!?」


私はこの国の人ではないから、階級はない。インダ女皇国では星歴3000年にして形ばかりの階級制度が残っている。

皇族がヴェルモンディ、貴族はヴァイセ、一般階級がティシャトリア、そしてシードラは奴隷だ。



「みなさんお静かに!」


クラス担任と思われる女性教師は騒動を収めようとしている。

けれど、隣のクラスからも女子生徒が押し寄せて一人で何とか出来る状況ではない。


「怒りの業火よ、我が右腕に宿れ。者共に裁きの鉄槌を食らわせたまえ」


バァン! 男性教師が窓の外へ力を放出すると、騒ぎが納まり皆は畏怖した。


女性教師は拍手し、別のクラスの生徒を連れて去っていく。


「少々問題のある生徒がいるようだが……修正しがいのあるというもの」


男性教師が代わりにこのクラスを受け持つ事になったらしい。



「私はディーエ・アルデヒド。

さあ、腐った林檎達。授業を始めよう」


先生もかなり問題ありだと思います。

_____クラス一同そう思ったことだろう。


厳しそうな先生で不安ながらも授業は普通に想像していた範囲のもので、基礎についての話をされる程度。むしろ優しめの授業だった。


「今日は生ぬるい授業をしたが、明日は実力テストでもしてもらうぞ」


アルデヒド先生の発言にクラスがザワつく。どうやら甘めの授業で油断させられていたようだ。


「僕はともかく、凡人達は自信がなさそうですよ」

「安心しろ。筆記ではなく、魔法の実技だ」


クラスに活気が戻ると同時に、私は自信がなくなってくる。

そもそも魔導士は裕福な暮らしを送る貴族の道楽もといボランティアなので、城仕えや一部の戦闘系を除けばほとんど儲からない職業だ。

ほとんどの平民は生まれながらに持つ魔力の調整を学ぶための義務で通っているだけなので将来は魔法使いにはならない。

私は筆記も実技も苦手、学費は税金による無料制度だから通うことになった。

成績が悪いと魔法使いになるならない関係なく怒られるからそこそこ頑張らないとだ。


「今のうちに明日のペアを決めておくように。……余った者は私と組むことになるからな」


「えー!?」

「勘弁してくれよ……」


「でも先生よく見たら、若くてかっこいいじゃん」

「独身かな……卒業するまでフリーだといいなあ……」


男子は嫌そうにしているけど、むしろ先生と組みたい女子は数名いるみたい。


クラス配当はランダムで、私のクラスは男子が多い。そもそもミーゲンヴェルドは女性が少ないのもある。

ここでは女子グループはほぼ出来上がっていて、遅刻寸前に着いたことが仇となったのは言うまでもない。


「平民はひっこんでなさいよ」

「なによ、学校では関係ないわ」

「そうだな」

「まあ、どなたと組まれるの?」

「ここには組みたいのがいないな」


シュなんとかは女子に次々ペアを申し込まれている。

けれど、彼はなぜか全て事わって、次の申し込みを募集した。


「おれ魔法騎士に憧れてるんだ!」

「ぼくも! ロットバルトくんと組んで騎士の雰囲気味わいたいな……」


ロットバルトは反対に男子から人気らしい。

聞こえてきた会話によると、彼は騎士の家系だからのようだ。


どうしよう……このままだと誰も組んで貰えなさそう。


誰に声をかけようかな?


〔シュなんとか〕A

〔やめとこう〕B

〔ロットバルト〕C


A 「あの、シュ……私と組んでほしいんだけど」「おい」「なに?」「お前まさか、僕の名前を忘れたのか?」「ごめん、なんとかアインだったのは覚えてるけど」「……では特別にアインと呼ぶことを許可する。僕は寛大だからな」「そ、そうなんだ」「明日は早く来い」「組んでくれるんだ?」「……ああ」「でも他に沢山いたのにどうして私と?」「……気にする必要はない」「わかった! じゃあまた明日ね」「………」


C 「ロットバルト、私と組んでほしいな。……なんて、無理だよね」「いいよ」「ありがとう!」言ってみるものだなあ。と思っていたら、シュなんとかが近づいてきた。「なぜお前が彼女と組んでいる!?「あれ、もしかしてロットバルトと組みたかったの?」「違う!」「なぜって言われても、声をかけられたからだね」


B なんだか二人がこっちを見ているけど、ペアの申し込みを待つことにした。結局相手は決まらなかったし、どうしようかな。


◆B1〔先生に組んでもらう〕 B2〔当日を待つ〕


B1「先生! あぶれました!私と組んでもらえませんか?」「物好きな……私がペアであろうと手は抜かないが?」「先を超されてしまったわ!」「あ、だめですよね?」先生と組むのはあぶれた人なんだもん。今からペア探しを諦めてどうするのよ。「構わん」


B2 同じように余ってる人もいるかもだ。明日適当な相手と組もう。 「あ……あの」「なあに?」「ディルニア学園はどこですか?」「すぐそこだから一緒にいこう」彼の手をひいて学園の前に向かう。「ありがとうございます……僕レトです」「私はレピス! それじゃっ!」


□□


「学校はどうだった? 成金いた?」


友達のカレンは果物をかじりながら聞いてくる。


「生まれついてのボンボンしかいないよ」

「へー」


 彼女は生まれついて魔力許容皆無体質。魔力のないものは暴走しないから学園に通わなくていい。その上カレンは裕福で婚約者もいて、日々好きなことができて幸せそうだ。

 比べてもしょうがないか、学食は無料じゃないし。学費が無料の学園ではバイトも禁止だから天涯孤独な魔力保持者はもっと大変だろう。

 それに比べたら私は恵まれているほうなのだ。





次の日になり、遅刻せずに教室まで着いた。実家じゃないんだし誰も起こしてくれるわけがないんだからもっとしっかりしよ。。



「あれ?」



B1 見慣れない男子が皆に取り囲まれておどおどとして困っている様子。



B2 昨日の彼がこちらに気がついて視線を寄越した。



「レトって言います。隣国から出て、昨日の夕方ようやく到着したんです。今日からよろしくお願いします……」


彼が挨拶をしていると、先生がやってきて皆に外へ出るように言った。


「ここは学園の敷地の森……一体何をするんですか?」

「テストは時間内にこの森に隠してある模様のついたリンゴを探してくることだ。他のアイテムでも、こちらの雪の結晶マークがついているものに加点しよう」

「一斉にいくんですか?」

「いいや、人数も少ないので1チームごとだ」

「それって最後のチームにかなり不公平じゃないですか?」

「1番目のチームが加点アイテムを全部とるとか……」

「当然1チームごとに一定数の自動補充がある」

「つまりフェアってわけね」

「いいわけ無用で実力を試されるんだな」


それぞれ順番を決めるクジを引く。


R 「行こうか」「うん」

D 「……ついてこい」「はい!」

L 「あの……僕と一緒にいってくれませんか?」「私と? いいよ、行こう!」「はっはい!」

? 「お前があぶれるとは意外だったな」「クラスの皆はガチガチなので」「一人で行くか?」「いやです! 森めちゃくちゃ怖いっ!」


……この森の入り口、初めて見るはずなのに“懐かしい”と感じるのはなぜだろう?




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ