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夏目漱石の弟子を養いたい!  作者: 小宮冬司
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1.私と灰皿と酔っ払い

時は明治151年。 ここは東京にどこかにあるシェアハウス:MOKUYOーKAI。私は管理人のミツエ。23歳。親の所有するシェアハウスを引き継いだから就職活動をしなかったんだけど、そっちの方が楽だったかもしれない。だって、こいつら、ヤバすぎるんだもの…。


このシェアハウスには主に帝大生さん(いわゆる超エリート)が十数人ほどいるんだけど、ほとんどが夏目漱石先生の弟子って聞いたから驚き。引き継ぐまでは超緊張した日々を過ごしていたんだけど引き継いで見ればそんな緊張は一瞬で無くなった。

まあ、男ばっかって聞いてたから予想はしてたけど、部屋が汚い。共有スペースに酒の一升瓶が10本以上は転がってるし、ソファと地べたで酔っ払いが3人、大いびきをかきながらぐーぐーと気持ち良さそうに寝てるし。

「あの、起きて下さーい。朝ですよー」

現在a.m.10:00。どんなお寝坊さんでも起きていい時間帯だ。いや、起きなきゃ駄目な時間帯。とりあえず私は自分から近い地べたにいる男性の体をゆすった。

「ほらほら、大学の授業に遅刻しちゃいますよー」

もう遅刻確定だけどね、と思いながらその人を起こし続けていると

「うるっさいのう!」

突然、その男性の手から灰皿が飛んできた。私の自慢の反射神経で避けられたそれは壁にぶつかって真っ二つに割れた。ここ、貴方にとっては一応賃貸物件だよね?と言いたくなった。

「んん〜、三重吉は朝からうるさいなぁ。僕頭痛いんだからさぁ」

ソファで寝ていた男性が灰皿の割れた音と方言の訛った怒鳴り声で起きた。灰皿を投げたこの危ない奴はまだ酔ってるのか。とりあえずこのソファの人に挨拶しよう。

「おはようございます。今日からここの管理人を父から引き継ぎました、ミツエと言います」

ソファの人がこちらを向いたかと思うとすぐに下を向いて

「うっ…お…おえぇっ…」

吐いた。多分二日酔いだよね。この人一升瓶抱えて寝てたし。いや、こんな冷静になってる場合じゃない。

「雑巾とバケツ、持ってきますね。洗面所はどこですか?」

「玄関の、突き当たり右に曲がって、すぐ…。ありがとう…」

急ぎ足で洗面所まで向かうと洗面台の下に青いバケツが置いてあり中を見ると雑巾が数枚、ビニール手袋が一箱入っていた。ここの人は二日酔いでよく吐くのかなと考えバケツを手に取ると側面に黒ペンで書かれた文字があった。

「んー、どれどれ。“このバケツ、三馬鹿用につき、掃除に使用するべからず”」

なんだって…?


私の目の前で二日酔いで吐いた男性は小宮さんと言うらしい。

「ごめんね、昨日三重吉と森田と騒いでお酒飲んでたから」

吐いてすっきりしたのか妙に笑顔の小宮さん。いやー、申し訳ないという感じで年上に謝ってこられるとなんか変な気分。

私から見て一番遠くにいる丸眼鏡をかけたまま寝ている人は森田さん、灰皿を投げてきた人は三重吉さん、と小宮さんは教えてくれた。バケツに書かれてた三馬鹿って、この人達なのかな。でもここには十数人住んでるからまだ確定したわけじゃないか。気になる。脳内で三馬鹿について考えていると森田さんと三重吉さんが起きた。すると三重吉さんは小宮さんとの距離をいきなり詰めて

「小宮!あの話はワシ言った方が正しい!」

と、喧嘩をふっかけた。

「はあ?三重吉の言うことなんて嘘ばっかりじゃないか!」

2人が昨日の続きであろう喧嘩を目の前で繰り広げる。まだ寝ぼけ眼の森田さんに止めてもらおうと思った瞬間、

「フッ…」

馬鹿にしているような感じとただ単に面白いと感じているような笑いが森田さんからもれた。

「なんじゃあ、森田。お前までワシに喧嘩売ろうってのか!」

「だからお前は気に入らないんだ、いつもいつも…」

「いや、僕はだな…」

いや、じゃないよ。もう三馬鹿はこいつらで決定だよ。朝からギャーギャー喧嘩して。子供か。

初対面ながら3人の喧嘩に呆れていたら玄関近くの階段から足音が聞こえてきた。

「ああ、またいつもの喧嘩か。懲りないね、あの3人」

共有スペースに入ってくるなり眠そうな目をした男性が溜息をついた。




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