【番外】授業中の手紙とロード・オブ・ザ・リング
『ロード・オブ・ザ・リング』(三部作)
指輪を火山にポイするだけの過酷なお仕事。
ホビット、エルフ、ドワーフは実在する。
壮大過ぎるので三部連続放送する時はトイレ休憩ください。
思い込みって、怖いですよね。
何の疑いもなく信じていた世界が突如崩れる絶望たるや、筆舌に尽くし難し。
ドイツではドイツ語を喋っていると思っていましたし、
フランスではフランス語、
アメリカやイギリスでは英語を喋ると思っていました。
シドニーのある中学校のお話です。
先生の目を盗んで授業中に手紙を回すのが流行しました。
「今日は購買でサンドイッチ買わない?」とか「誰が好き?」とか、先生に気づかれずクラス全員に手紙が回るかどうかとか。
授業中、先生が背中を向けた瞬間に丸めた紙が放物線を描くのは全世界共通なのだと感動すら覚えました。
問題はね。
生徒同士で回される手紙が全部エルフ語で書かれてたって事です。
利点:先生にばれても内容が分からない。
欠点:わたしも読めない。
まさか、級友との円滑なコミュニケーションにクウェンヤ基礎文法が必要になるとは誰が思うでしょう。
完全にノーマークの言語。
ロード・オブ・ザ・リングの並外れた景観を撮影したロケ地がニュージーランドであることは知っていましたが、まさかオーストラリアでここまで流行しているとは思ってもいませんでした。
手紙だけではなく、時々日常会話にすら混じるエルフ語。
英語よりも必死にエルフ語を学ぶエブリディ。
こんなことなら、もっとしっかり見ておけばよかったと思うも、時すでに遅し。
図書館で原作を借りてきましたが、読めません。
トールキン先生、頑張り過ぎ。
世界観、創り過ぎ。
神作家か。神作家だ。
なぜ、エルフ語がそんなに流行していたのか。
理由はすぐにわかりました。
オーランド・ブルームです。
教室で人気投票をすればぶっちぎりでレゴラスが一位。
エルフが恰好いいと黄色い悲鳴。
まさに王道…!!!
まさに正道…!!!
フロド好きとボロミア好きとアラゴルン好きとギムリ好きには出会ったことがありましたが、此処まで圧倒的なレゴラス人気を目の当たりにしたのは初めてだったのです。
俗に言う夢女子のスラッシュ小説という、覗き込んではいけない深淵の知識を仕入れてしまったのも、この頃。
これぞまさにオーストラリアン中二病。
黒き歴史は世界で刻まれている。
結局、唯一覚えている「はのんれ」という言葉で全てを乗り越えました。
意味はありがとう。
ありがとうは世界を救う。
ハノンレ、アラゴルン。
ハノンレ、ヴィゴ・モーテンセンファンの友。
こうして無事に、秘密の回覧に加わることができました。
そう、わたしもまた「ロード・オブ・ザ・リング」を観た者。
基本的にスティング、ストライダー、マイプレシャスしか単語を覚えていない者なり!
「レゴラスかっこいい」
「レゴラスがいい」
「レゴラス」
たまにはレゴラスだけじゃなくて、エルロンド様やガラドリエル様についても言及してあげて。
後に、そう語った人がいたそうです。