【番外】グラディエーターと体育の時間
『グラディエーター』
ラッセル・クロウ主演。
すごいローマの将軍、賢帝に気に入られる。
賢帝の息子、父を殺して即位。
将軍、奴隷に落とされる。
怒りの下剋上。
アカデミー賞。
完。
オーストラリアといえば、砂漠、カンガルー、サメ、グランドキャニオンと、色々思い浮かびます。
ですが、意外と落雷が多い地域であることは知られていません。
春先になると伐採車は大忙しで黒焦げの街路樹を切り倒していきます。
シドニーは坂道落雷サンダーボルト・レインです。
その年は、イースター休暇直前に春の嵐がやってきました。
近所の大きな街路樹が炭になってしまいましたが、幸いにも大きな火事や怪我人はいませんでした。すごかったね~と言いながら登校すると、体育の先生が言いました。
「テニスコートが落雷で燃えているので体育のテストはグラディエーター鑑賞です」
バーニング・テニスコート。
今後、人生において「テニスコートが燃えているので体育のテストはグラディエーター鑑賞です」というセリフを、言ったり聞いたりする機会は、二度と無いでしょう。
(テニスコートは周辺の中学校と共同で使っていて、学校からはスクールバスで30分の位置にありました)
「先生、テニスコートはいつ使えるようになりますか?」
「分かりません。まだ、燃えていますから」
燃えているそうです。
近くにユーカリ、いっぱい生えてたからね。
剣闘士と書いてグラディエーター。
先生は、何故この映画を選んだのでしょう。
ライオンやサメを身ひとつで仕留めて来いとでも言うのでしょうか。
それとも「筋肉こそ体育」ということなのでしょうか。
主役のラッセル・クロウはオーストラリア出身の、たいへん有名な俳優です。ですので彼が主役かつ、アカデミー賞を取った有名な作品を見てみましょう。そんな説明があっても、疑念はつきません。
別にビューティフルマインドでも良かったのに……。
それにオーストラリア出身じゃなくて、ニュージーランド出身では……。
書いてC評価にされたら泣くので、ちゃんとオーストラリアの俳優と書きました。
わたしは、とんだチキン野郎です。
時間内みっしり筋肉。
飛び交う血と悲鳴。
視聴覚室大パニック。
恐怖や悲しみで泣きだす生徒。
中学生の純粋さに心打たれる駒米。
大騒ぎの一時間三十分が終わりました。
案の定、途中でチャイムが鳴ってしまったので続きが気になるところで終了です。
早送りでいいから全部見せてほしかった……としんみりモードの駒米は体育の先生に呼び出しを食らいました。
なぜだ。
なんだ。
ちゃんとオーストラリア俳優と書いたのに。
「あれを見ても動揺も叫びもしないなんて、人の心がないのか!!」
「なぜ、あんなにも静かにグラディエーターを観られるのか!?」
→日本では静かに映画を観るのが一般的なんです。
→そういう反応を期待してグラディエーターを見せたってことは、さては先生、Sですね!?
結論、カウンセリングルームに連れていかれました。
解せぬ。