【映画】アザーズと腹が鳴る音
『アザーズ』
ニコール・キッドマン主演。
第二次大戦中、霧の中の洋館。
日光に当たると死ぬ病気の子供たち。
お金持ちの奥さんと、使用人。
屋敷の中に何かいる。
ジャージー島、綺麗。
完。
映画の内容や賛否両論は上手な先人たちが山ほど書いていると思います。
評論書くのはプロに任せて、この映画との思い出について語ります。
静かなホラーをご存じでしょうか。
不気味なBGMも、奇妙なSEも無い、まったくの無音で緊張感を高めるタイプのホラーです。
画面が横スライドしたら鏡に、オギャー! いたー! というタイプです。
このアザーズは無音タイプのホラーでした。
話は変わりますが、緊張するとお腹がなりますよね。
お葬式とか。テストとか。先生のお話中とか鳴りますよね。
お昼前、アザーズを観ていた時、わたしのお腹は鳴りそうでした。
それも凄く、大きな音が出るという奇妙な確信がありました。
隣の席には友人。映画館は満員御礼。
間違いなく聞こえる。これは何の弁解もできない。
周囲はドキドキしていましたが、わたしもドキドキしていました。
お願いだから今すぐ緊急でスプラッタ映画になってくれとさえ、願いました。
そして、時は来ました。
それは、死刑宣告でした。
よりにもよって完全な無音の時だったのです。
美しい洋館を見ながら鳴りました。
盛大に、長々と、断頭台の鐘の音(暗喩表現)の如く、連続して鳴ったのです。
我が闘争。ここに完。
その時から、胃の暴虐に争うわたしのファイティング精神は長々と、無残な屍をさらすことになったのです。
いっそのことトイレにでも立とうかとも考えましたが、ど真ん中という良席が仇をなし、無音の中で皆様の前方を横切る視覚的罪悪感に比べたら……まだ腹が鳴る方が……マシかもしれないと結論づけました。
観客のマナーが良すぎることを、これほど呪った日はありません。マーベラス。最後まで、エンディングのスタッフロールすら静かでした。誰かの腹の音以外は。むごい。
映画館を出てから友人は言いました。
「お腹、すっごく鳴ってたね!?」
知ってる。心の底から。
アザーズは好きな映画です。
しかし、観る度にどうしても、腹が鳴ったことを思い出します。