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「さあ!この五つの宝玉を握りしめて天高く投じてみてよ」
豊に手渡されたのは、ピンポン玉ほどの大きさの物が五つ。黒く金属質なそれは、青白い光を螺旋状に纏っていた。
目を閉じ、感触を確かめるように、しばらく手のなかで転がした。
(ガチャ……)
元の生活に戻りたいというだけの要求が、お詫びという戦場へ送られる。
拒否の叫びは嘲笑で返され、僅かな希望を見出せば、ガチャという理不尽が待っていた。
(胡散臭い悪魔によって、おれの命は軽々しくガチャに賭けられる。あの時代の大名は何人いる? 百人か?百五十人か? そこから二人…。どれ程の確率でまともな武将が出る?引きもよくない、運もないおれが、何故ガチャに運命を託さないといけない)
あまりの理不尽に、知らず涙を流していた。
自分を鼓舞して涙をぬぐうと、せめて命を託せる名将が現れることを願い、薄暗い虚空に向かって鋭く投げつけた。
願いを込めて投じられた五つの玉は、意思でもあるように連なって舞いあがり、目を背けるような眩ゆい光に包まれた。
やがて光が収まると、キラキラとした塊が回転しながら現れーー。
消えた。
「な、何だ?」
「えーっとね、さっきのは、引き当てた大名の領地を形にしてるの」
「まさか……さっきの塊で、遠江の国だとか豊後の国だとか判別しろと?」
肯定するように影はゆらゆらと大きく頷いた。
グッと豊はひとつ呻いて、開きかけた口を噤む。
怒りを圧し殺し、グルグルと回転していた塊の形を思い出してみるーー。
(駄目だ。分からない。どこまでも巫山戯てる。こんな都道府県当てクイズより難易度の高いものが分かってたまるか!)
豊は視線を落とし、歯噛みして顔を歪めた。
「いやあ、ゴメンね。復元はこれからするから、本人の登場はまだなんだよね」
「復元?」
怒りを含んだ目に疑問が混じる。
「そうさ。死んでるんだから当たり前だろ。体を作って脳には過去から引っ張った記憶を入れて、僕でも、頑張らないと上手く出来ないんだから感謝してよね」
「それはどういう……?」
話を聞いた豊は困惑の表情を浮かべ、先ほどまでの怒りは、悪い予感で塗り潰されている。
「説明不足だった? 僕らの場合は記憶ってのが全てなの。心臓が止まっても脳が壊れても、記憶に思考や人格があるんだから、移せばまたその人なの。あ、でも昔の人は欠けちゃうから7〜8割くらい本人かな? 残りは、君の知識から補填するから大丈夫。なるべく外見も君のイメージでやってみるね」
鼻唄混じりの説明の中で、豊にも、たった一つだけ分かったことがある。
「人を………人間を……作る?」
得体の知れぬ恐怖が押し寄せ、悪寒を伴い呟いた。
「うえー。そんなに動揺することかな? 君らも太古の生物を蘇らせようとしたり、植物の遺伝子を弄ったりしてるよね。それを人間にしたからってどうだっていうのさ? ほんと君らって面白いよね」
狂ったような甲高い笑い声が響く。
(おれも造られる大名も、この悪魔にとっては遊技盤の駒なのだろう。子供が捕まえたカブト虫を戦わせるようなものだ)
そう考えを巡らすと、まるで生贄にでもなったように悲壮な表情で宝玉を放つ。
今度はしっかり見極めねばと、目を凝らし回転する塊を睨みつけていた豊だったが、小さく頭を振ると、ガックリとした様子でうな垂れた。




