ポンコツロボット
「おい、コーヒーをいれてくれ」
「カシコマリマシタ」
一服しようとした男はロボットに命じた。ロボットは主人である男の命を受け、キッチンの奥へ姿を消すと、しばらくしてコーヒーをいれたカップ、ミルク、角砂糖を乗せたトレイを持って戻ってきた。男はさっそく、ロボットの持ってきたコーヒーにミルクと角砂糖を入れて口にする。
だが、次の瞬間、男は口にしたコーヒーの違和感に、含んだコーヒーを吐き出し、ロボットを怒鳴りつけた。
「馬鹿野郎っ!! これはコーヒーじゃなくて醤油だろう!!」
「カシコマリマシタ」
何を勘違いしたか、醤油を取りに行こうとするロボットを男は制し、参った様子で頭を掻いた。
以前からロボットの購入を考えていた男は、この際にロボットの購入を決めた。男の購入したロボットは旧式であり、最新式と比べると、いささか性能は劣るが、その分値段は控えめだった。ロボットは単純な命令にしか対応しないが、男にとってはそれで充分だった。男は、「これで生活が楽になる」と思った。
だが、実際は違った。男の思い描いていた理想とかけ離れ、ロボットはあまりにもポンコツだったのだ。いくら旧式とはいえ、これは酷すぎる。我慢の限界を越えた男は、とうとうロボットの販売元にクレームの電話を掛けた。
「もしもし、私はこの間、おたくのロボットを購入した者だが…」
「それはそれはどうもありがとうございます。弊社のロボットはお客様の生活に一役買っておりますか?」
丁寧な口調で対応する電話口の相手をよそに、男はここぞと溜まった鬱憤を吐いた。
「どうもこうもない!! 酷いじゃないか!! 指示した簡単な事も出来ないあんなポンコツを売り付けるなんて!! 金は返してもらうぞ!!」
しかし、相手は解せない様子で答えた。
「ううん、それはおかしいですね。弊社のロボットはどれも優秀であり、全てのロボットに主人に似る機能を搭載しており…」