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お狐様の下僕  作者: 山本
3/3

彼女はきまぐれだ。

ピピピッピピピピピッ

「……」

機械的な電子音で脳を揺さぶられ、私は目を覚ました。

デジタル時計のボタンを押して怠い上半身で起き上がり、しばらくぼうっとしているとさっきまで見ていた彼女の顔が思い出せなくなり、再び寝ころんだ。

私と一緒にベッドに寝ころんでいるウミウシのぬいぐるみを力いっぱい抱きしめる。

「…今、どこにいるんだろう」

九尾の彼女は今一体どこで何をしているのだろう、とウミウシに語り掛けて冷静な私が空しいわと突っ込んできた、せやな。



ウミウシを放り投げ私は顔を洗い歯を磨いて櫛で黒髪を梳かした。

黒髪に黒い目と純日本人な自分を見て、そんな自分とは正反対な彼女の顔が思い浮かぶ。

私の生活はここにはいない彼女が軸となって回っている。

其のことに不毛だと思う自分もいるが、これは義務だと思っている自分もいる。

そして今のところ義務だと思う自分のほうが多くいる。

彼女を中心とするのは彼女に命を救われた者としての義務なのだ!

10年前の春、小学校である山に遠足に行っていた途中、私が乗っていたバスは事故に遭った。

トンネルの途中で突然の地鳴り、そして言わずもがなのトンネルの崩壊。

そこからは息をつく暇もなく爆発、放火、阿鼻叫喚。

それまで歌を歌いながら笑いあっていた雰囲気は180度方向を変えて見る見るうちに地獄へと真っ逆さま。

そしてもちろん大勢の人が死んで死にかけて、私も死にかけた。

下半身バスに潰され、死にかけていた私を彼女こと九尾は救ってくれた。

どういう意図なのかは分からないし想像もつかない。

ただ覚えているのは、彼女は私に微笑みながら頭を撫ででくれた。

「私の事、覚えていてね」

最後にそう言い残して去っていって。

「!!!」


それからの私の頭は九尾によってパンクするんじゃないかってぐらいにいっぱいになった。

九尾の目撃情報があったら何があっても行くし、図書館やネットで情報を集めまくる日々。

だけどあれから一度も彼女とは会えてない。

「…もう、忘れられてるか」





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