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第1話
ジジジジ.....
タトゥーマシーンから放たれる無機質なモーター音となんとも言えない不思議な香りを放つお香から醸し出された黄白煙を見据え、無意識にポケットからタバコを取り出した。
「こ〜ら、ここは禁煙だ。吸いたきゃ外に出な」
ここはとあるタトゥースタジオ、女彫師であるアイさんの仕事場である。
「あ〜、ごめんごめん。お香の煙見てたらつい吸いたくなって。」
「ったく、そんなもん毒以外なんでも無いってのに。さて、きりがいいとこまで終わったから一旦休憩だ。毒でも吸ってきな。」
アイさんはそう言いながら俺の体にワセリンを塗りラップを貼る。
くたびれたジャケットを羽織り店の喫煙コーナーである非常階段に腰掛け紫煙を揺らしながら眼下に見下ろす汚い街並みを眺めた。
俺の名前は黒島秋人。ひょんな事から異世界転生をしてしまう先の見えない只の悪党だ。