第六話 世界のカクヤク
「生贄か……」
何の罪も無い者、いやだからこそ生贄に選ばれたのだろう。それがこの世界の世界観なのだろう。ましてや、蜃気楼の元居た世界ですらそうだった。
「いつ頃決行されるんだ? その忌まわしき儀式は」
少女は恐ろしい笑みを浮かべていた。
「明日の夜、決行されるのでしょうね。まあ私たちはどさくさに紛れて世界の核を回収できればいいのだけれど」
本当に何もかも知り尽くしてるな。まじで何者なんだ?蜃気楼は怖くなった。
少女は語りだした。
「今からあの町にどっぷり浸かります。滅びゆく人々の心を知るのです」
まるで聖女のような物言いだった。この恐ろしき女はとにかく悪辣なる存在だということを察した。蜃気楼はその少ない人生経験の中で、そう認識するしかなかった。
この悪女に無言でついて行くことにした。
ガヤガヤ
町の中に入るとそれはそれは賑わっていた。異世界の街並みそのものだった。辺りからは、かいだことのない匂いがした。
ありとあらゆる所にこの地にしかないであろう工芸品が数多くあった。観光地なのだろうか?
「ここにいる人たちはなんでこんなに楽しそうなんだ?」
蜃気楼はなぜだか逆に悲しい気持ちに襲われたのだ。
「消える前の、最後のともしび」
二人は歩いた。賑やかな通りを突っ切り、わざと、わざと暗い道に入っていった。それはまるで蜃気楼の人生のようだった。
少女はぽつりと言った。
「もっと奥の道で、そこで待機しましょう」
たどり着いた場所は……部屋だった。実験室のような部屋だった。
そこに入るか入らないかした瞬間。
「ハアイ!」
男の声に聞こえた。異様にハイテンションな言い方だった。なんども言うようだが蜃気楼は中二病で、人を見かけで判断しないのだ。
そこにいたのは、まだ幼いこの世界出身だと思われる女の子と、悪魔だった。




