第十四話 イトの世界
はたしてこのか弱き姫君はあのイカレタ勇者の暗殺計画を掻い潜る事ができるのだろうか。
何しろ奴は正真正銘の精神破綻者だ。損得勘定で行動しているのではない。
精神がねじ曲がり、ねじ切れているのだ!
セレーネには用事があった。それはこれまで何度かあったことであったが、また成功するとは限らなかった。
取引。
自身の育成した蝶を対価にしていた。命を売るような事になんとも思わないこともなかったが、それは全てにおいて都合のいいやり方だった。
セレーネの親も、その周辺の人物も彼女の身の回りの事に言及する事は無かった。
その取引は誰にも見られる事も無く遂行されてきた。
秘密の部屋へ来た。その部屋は自身の魔法の力でつくりだした、なんとも荘厳な部屋だった。
セレーネはそこを魔法の物品のコレクション部屋にしようとしていたし、実際にその通りだった。
「これは……なんの道具なのだろう?」
異世界の存在を知り、真に価値あるものを知る事により、セレーネの精神に異変がおとづれてしまった。
それが何のためのアイテムなのか、どれほど危険なものなのか、一切調べることなく収集した。
それほど愚かで破滅的な思考回路を持っていたとは自身でも気づけずにいた。
今日は取引の日だ。
どのような物品が手に入るか、もしくは魔法そのものか……。
魔法の仲介人。その何人かを懐柔して、世界のあちこちから貿易人を連れてきてもらうよう指図してあるのだ。
セレーネはそれが傲慢であると思っていたが、誰にも見られていないのなら、それは魔法の原理と同一に思えた。
貿易。物品を作成し取引をする。それほど胸躍る事もない。
セレーネは蝶以外にももっといろいろな商品を作成するべきだと考え至ったし、そのための計略をいくつも立てていた。
そういう作戦を立てているうちにセレーネは自身の身の安全に気を遣うようになっていた。
こちらが他の世界を見ているのならば、あちらもこちらの世界を見ているのだ。
抜かりは無かった。
何しろマント人間と取引した後は真っ先に防衛の魔法について研究した!
他の世界からの暗殺者。それを撃退する方法を。




