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第十一話 バタフライの世界

 蜃気楼はもんくを考えていた。他でもない、お姫様と対談するときのものだ。

 なにか貴族的なマナーや、作法といったものが必要なのかと思ったが、魔法的なもので十分なのだそうだ。

 その姫君は魔法そのもののコレクターなのだそうだ。

 蜃気楼は自身が凄腕の魔術師であると自負している。それゆえにもっともいい接触の仕方を考えていた。


 この異世界、『ヴァルマスケイル』では魔法の研究が盛んに行われており、この地では()が崇高なものとされ、あらゆる魔法において蝶をモチーフに施されているのだ。



 生まれた環境というものは影響が強いもので、感性はそれに従うしかなかった。

 彼女は一般的に見て十分恵まれた生まれであり、余力があった。それは興味や関心を維持するのに十分だった。

 この世界の王都を支配する一族の娘、名は『セレーネ』といった。彼女は今では13才になるが、それまでに魔法というものに強い関心があった。彼女はなぜか一人っ子であり、支配者の後継について追及される事は無かった。セレーネはそれに不自然さを感じていた。

 彼女は一般的な尺度でいうところの異常なほど魔術にのめり込んでいた。この国の魔法は蝶に関係する。その育成においても余念はなかった。


「なんと美しい……」

 蝶を観察しながら、セレーネは独り言を言う癖があった。この蝶の園は実質的に彼女専用だった。

 様々な色の蝶を今まで育て上げたが、蒼や紅といった刺激的な色合いの羽がとくに好みだった。

 この、魔力を帯びた蝶。

 彼女はその第一人者だった。


 いつの事だったろう。セレーネが()()()()()を見た。セレーネの知らない種などいなかったが、それは特別だった。

 彼女はその蝶を追った。いつの間にやら見知らぬ森の中に迷い込んだ。

 まるで見知らぬ世界のようだった。

 さらに蝶を追った。すると……。


 人がいた。マントか、そのようなもの被った、男か女かも分からない者だった。


「この蝶はあなたのかね?」

 マント人間はセレーネにこの蝶を譲ってもらってもいいか訪ねてきた。

 その報酬は異世界の情報とそれを行き来できる魔法のアイテムだった。


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