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第一話 世界のハジマリ

 永遠を手に入れるためには、それを持つものから奪い取るしかない。遠い世界の悪役はそう確信していた。



 季節は夏。友達が一人もいない少年は冒険を求めていた。彼は自身の本名を他者に語ろうとせず、蜃気楼(ミラージュ)と名乗っていた。当然中学2年生だ。


「すべてを極めちまったなあ……」


 中学2年生にして相当な中二病を発症してしまった彼は、アニメだとかラノベだとかの世界の住人になってしまったのだろう。

 彼がなぜこの電車に乗っているかというと、伝説の町の噂を聞いたからである。

 その町は地図に載っておらず、ある一つの物事に対し、研究をしているというのだ。


「不老不死か……。わるくねえな……」


 不老不死の研究をしているその町にたどり着くには相当な下調べが必要だろう。だが彼はそのような計画など一切立てず、ただ適当にこの電車に乗ったのだ。それから数時間がたち、この列車はこの日最後の駅に止まった。


「ここは……?」


 なんの変哲もない町のように見えた。蜃気楼はこの駅で降りた。

 ……

 この駅の名が、町の名が何かなど気にも留めなかった。彼は中二病で、狂人であればあるほどカッコイイ年頃なのだ。

 蜃気楼は歩いた。暗い夜道を。木々が生い茂るその道を。どこに続いている?蜃気楼の持ち合わせる軍資金は三万円だった。今日はどこかに野宿しなければならない。夏休みはまだ一か月以上もあるのだ。そうしてたどり着いたのは……。


「海だ」


 そこには海が広がっていた。今は夏で、これほどまったく人がいないところは穴場なのではないだろうか。蜃気楼は夏休みにはここに来て修行という名の遊びをしようとおもったほどだ。

 海を眺める蜃気楼は不安だった。だってそうであろう?いい年してこれほどまでの中二病なのだ。進路や、未来への希望など持ち合わせてなどいない。ただただ哀れな……少年だった。だがいつかは大人になるのだ。ただのおじさんになるのだ。


「……!!」


 蜃気楼は恐怖した。砂浜に少女が一人ですわっているのだ。このような時間にいる時点で何かあるはずだ。蜃気楼はいくつか仮説を立てた。特に有力なものは1:なにか黄昏ることがあって、比較的海がすきだからここでこんな時間に思いふけっている。2:この少女が、蜃気楼と同じタイプの中二病だということだ……!!。


 蜃気楼は一瞬考えたのち勇気をだして少女のとなりにすわった!!


 ……

 おそるおそる隣にいる女の子の顔つきをちらりちらりとのぞき見した。蜃気楼と同じくらいの年の女の子だった。だが人は見かけによらない。この者が何者なのか……。


「やあ」


 少女に声を掛けた。蜃気楼には友達が一人もいない。これではまるで不審者ではないだろうか。

 今少女がなにか手に持っているのが見えた。

 そして少女は口を開いた。


「たとえば、この世界には意味がなく、そこに住む人にもなんの理由もないものとしてそれらはすべてコントロールされている」


 ……え?


「それはあるなんの意味もないものを産み出すことを目的に繰り返されているとしたら。そのものとは……永遠」


 ……


「友達になるには、仲良くなるには、なにか理由が必要かどうかということよ」


 蜃気楼はすべてを理解した。この娘は……中二病だ!!これほどまでの中二は遭遇したことがなかった。そうときたのならこちらにも術はある。


「自己紹介がまだだったな。俺の名は……蜃気楼! ミラージュでもいいぜ」

 少女は無表情に近い表情で蜃気楼を見つめた。


「私の名前は……」


「ストオオオオップ!」


 少女は突然の反応に驚いた表情をした。


「きみも本名は言いたくない口とみた。この俺が今スマホで中二ワードを自動的に生成するサイトできみの新しい名を生成しようじゃないか」


 蜃気楼はスマホを取り出して中二生成サイトで中二ワードをひねり出した!


「海の翼だってさ……」


 少女はすべてを理解したような表情だった。


「なるほど。その名を自称するよ。これから巻き起こる戦いにはなんの意味もないけどね」


「え」

 少女はずっとそれを握りしめていた。それはこれから巻き起こる冒険そのものだった。それはすべての世界が変質しうる存在だった。


 それは、琥珀色の宝石だった。


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