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森と海の娘は平穏を望む  作者: 堀井 未咲
フランレティア編
92/197

第41話

金曜投稿です。

 無事に何事もなく水竜の卵を取り返し、親元に返還しました。

 トール君に付き合い、許可を得て少しだけ湖で泳がせて貰いました。

 興味津々で水竜の幼生体に纏わりつけられて、その可愛さに癒されました。

 聖女さんに、道具扱いされなくて良かったです。

 最後の卵ちゃんは、水竜が必要以上に守護をしまくりでした。

 もう、精霊にも盗まれることはないですね。

 安心しました。

 そんなこんなで、翌朝。

 王宮のホールに、ミラルカ組と聖女さん一行が集まりました。

 いよいよ、カズバル村に出発です。

 が、聖女さん一行の人数と荷物に呆れてしまいました。

 聖女騎士団はともかく、料理人やお世話の侍女等、どこに行くと思っているのでしょう。

 いわば、戦場に等しい地に行くとは、思っていないのでしょうか。

 引率の朱の死神さんは、頭を痛めている様子です。

 荷馬車で10台近くある荷物に、トール君は溜め息を吐いています。

 まあ、アッシュ君の転移魔法でしたら、余裕で運べます。

 水竜の卵を対価にしては、大荷物です。


「すまんが、転移魔法で運べるか?」

「お前が謝罪とはな。これでも、減らしたのだろうな」

「ああ、半分に減らした」


 死神さんは、愚痴ります。

 これで、半分ですか。

 本当に、何しに行くと思っているのでしょう。

 ピクニックでは、ありませんよ。


「まあ、いい。対価は支払っているからな、運ぶさ」


 アッシュ君が死神さんを連れて、大荷物の方に行きました。

 私達は、トール君の転移魔法で移動です。

 聖女さんが、ちらほらトール君を気にしています。

 ニホンジンに拘りがあるみたいですね。

 声を掛けそうになる度に、お兄さんに止められています。


「んじゃ。俺達も出発するか」

「「はい」」

「ん」


 私達の荷物は無限収納(インベントリ)空間収納(アイテムボックス)に、収納済みです。

 ほとんど、手ぶらです。

 トール君が、指を鳴らします。

 一瞬後には、カズバルの村に移動していました。


「たった数日で、退廃しましたね」

「魔物が入っていた訳でもありませんが、人がいないと寂れて見えます」


 人気のない村には、砂ぼこりが舞っていました。

 魔物避けの結界が機能していましたから、魔物に家屋が被害に遭ってはいないです。

 しかし、ほの暗い瘴気が漂い、早朝だというのに、陽が差し込んではいません。

 覚悟していましたが、ここまで瘴気が蔓延しているとは思いませんでした。


「瘴気避けの魔導具の点検に入るか」

「そうですね。聖女側には体調不良者が増えても、お荷物になるだけです」

「ん。少し息苦しい」

「万能薬で治すのも、一時的な手段にしかなりませんね」


 リーゼちゃんが不調を訴えましたので、トール君が周囲を浄化する結界を張りました。

 徐々に結界を広げていきます。


「嫌だぁ。気味が悪いわね」

「寂れた村じゃん。アンジェ、大丈夫か」


 聖女さん一行の登場です。

 アッシュ君が役目を終えたとばかりに、離脱します。

 死神さんが、部下に荷解きを指示しています。

 先ずは、拠点作りです。

 瞬く間に、テントが出来上がっていきます。

 聖女さん一行は、ただ見ているだけです。

 死神さんも、敢えて指示はだしていません。

 他者にかしずかれているからか、自分から動こうとはしていません。

 夜露はどの様に凌ぐのでしょうか。

 まさか、宿屋にお泊まりですか。

 ならば、私達もテント泊になりますかね。


「お疲れさん。俺は魔導具の点検に行ってくる」

「分かった。おれは、遺跡の様子を見てくる」

「ラーズ達は、どうするかな。あの様子だと、宿屋には泊まれないな。テントを設置するか」


 集合小屋も、荷物を運び込まれていましたから、使用は出来ません。

 自前のテントを設置した方が安全みたいです。

 宿屋には、料理人と侍女が走っていかれました。

 聖女さんの拠点は、宿屋になりそうです。

 我が儘なお花畑さんが、満足に眠れるとは思えません。

 あら、荷物の中には寝台が入っていました。

 聖女騎士団が宿屋に運んで行きました。

 勝手に宿屋の備品を壊してどうする気ですか。

 全く、配慮してはいません。

 討伐後には、直していくとは思えません。

 死神さんが、怒鳴っています。

 工人も連れて来ているようです。

 宿屋を改装する気です。

 阿呆ですね。

 関わりますのも、馬鹿らしいです。

 アッシュ君と別れて、トール君の点検に付き合いましょう。


「魔晶石の磨耗が激しいな」


 魔導具は魔晶石を交換して、再起動をかけます。

 点検が終わる度に、息苦しさが薄れていきますした。


「こりゃあ。短期決戦で終わらないと、瘴気にやられる者が続出するな」


 トール君が、断じます。

 それだけに、漂う瘴気の量が多いのでしょう。

 只人には害がなす瘴気に、帝国側には対策をしているのか疑問です。


「セーラ、この魔晶石に魔力を注いでくれ」

「はい」


 取り替えた魔晶石を渡されました。

 少しでも長持ちさせる為に、浄化の魔力を僅かながら注いでいきます。

 僅かなのは、私が浄化出来るのを隠したいからです。

 その辺りは慎重にならざるおえません。

 全ての魔導具の点検が終わり、広場に戻りましたら、思いもしない出来事が起こっていました。


「あいつ等、何を諍を起こしている」

「さあ。何がしたいのやら」


 死神さんの部下と聖女騎士団の騎士が、民家を取り壊していました。

 木造の民家は、呆れている間に跡形も無くなりました。


「あんた等、何を勝手に民家を取り壊している。村人が帰還したら家がないのは、困るだろうが」

「喧しい。燃料がないのだ。村の蓄えている薪だけでは、足りん」

「現地調達だ」


 悪怯れることもなく、騎士が正当性を訴えます。

 時刻は昼になろうかとしています。

 昼食の準備に薪が必要なのは、理解できます。

 けれども、まさか民家を解体してまで、手に入れようとするなんて。

 どこぞの、盗賊ですか。

 呆れ果てます。


「お前達の分は村の外で手に入れろよ。村の中の物は、我々の物だ」

「それは、死神とやらの指示か」

「ふん。聖女様の指示だ。亜人は、森を彷徨え」


 トール君は帝国の人間の為に、瘴気避けの魔導具を再起動させたのに、この仕打ですか。

 胡乱な表情のトール君は、無言で踵を返しました。

 魔導具の効果範囲外の畑近くに、私達専用の宿泊設備を設置するのを指示されました。


()でませ。お家くん」


 合言葉に、無限収納からコテージがでてきました。

 勿論、魔導具のコテージで、見た目より空間拡張されています。

 一部屋に見えますが、中は三部屋あります。

 キッチンや、お風呂場も備えつけていて、快適な温度を提供してくれます。


「まあ、馬鹿は放っていよう」


 コテージに入るなり、トール君は怒りをそう消化しました。

 ラーズ君とリーゼちゃんは、無関心です。

 私も、関わりを断ちたいです。


「お昼は何を作りましょうか」

「ん。お肉」

「暖かい物であれば、いいです」

「俺も肉料理で頼む」

「分かりました」


 ミラルカで、沢山の素材は補給しています。

 丸ごとチキンにでもしましょう。

 キッチンには、魔導具オーブンが設備してあります。

 作りがいがあります。

 丸ごとのチキンの中に、茹でた玉葱、人参、じゃがいも等を入れてオーブンへ。

 食欲旺盛なリーゼちゃんがいますから、他にも料理を作っていきます。

 手近に作りましたロールキャベツ、ポトフ、買いおきしてありましたパンを大量に並べていきます。

 チキンがいい具合に焼けてきました。

 と、飴色になったチキンを取り出しますと、アッシュ君が帰ってきました。

 ナイスなタイミングです。


 なあう。


 ジェス君も、亜空間から出てきていました。

 コテージには、瘴気避けがしてありますので、元気が良さそうです。

 リーゼちゃんが、飛び付くのを防いでくれています。

 ジェス君。

 私は、できたてのチキンを持っています。

 アチアチでは、済みませんよ。


「んで、遺跡はどうよ」

「ああ。異界化は鎮まっていた」


 配膳をしながら、聞耳をたてています。

 中央に丸ごとチキンを置いて、席に着きます。

 ジェス君が、専用のランチョンマットにお座りします。

 チキンはラーズ君が、切り分けています。

 ピッチャーには、柑橘水が入っています。

 準備したのはリーゼちゃんです。

 ありがとうございます。

 ジェス君用に、ロールキャベツと茹でた野菜を配膳しましたら、丁度皆に行き渡りました。


「まあ、先に飯にしよう」

「それが、いいな」

 〔ジェス、お腹すいた〕


 目の前にチキンが置かれたジェス君は、視線が釘付けです。


「はは。ジェスのお腹に催促をされないうちに食べような」

 〔はあい〕


 両手を合わせて、いただきます。

 ニホンジンの様式に合わせた食前の祈りをします。

 トール君はお父様から、私達はトール君から習いました。

 暫し、食事に専念します。

 うん。

 今日も失敗なく、美味しくできました。

 皆の食事を担う私にとりましては、最重要科目です。

 ロールキャベツとポトフのお鍋が、アッという間に綺麗に平らげていきます。

 アッシュ君も、割かし健啖家です。

 ポトフのお鍋が大半リーゼちゃんに食べ尽くされていきました。

 チキンも茹でたお野菜も、残らず無くなりました。


「ふう。ごちそうさま」

「「「ごちそうさまでした」」」

「ごちそうさま」

 〔ごちそうさま〕


 一息着きます。

 料理後の洗い物はラーズ君とリーゼちゃんが担当してくれます。

 お鍋を手にキッチンに向かいます。

 耳が良い二人ですから、アッシュ君のお話も聴こえています。


「遺跡の異界化は鎮まっていたが、厄介な魔物が際奥に発生していたぞ」

「神級クラスの魔物か」

「いや、クラスでいえば、高くない。魔力喰い(マナイーター)だ。勇者は、魔剣を所持していた。相性が悪いな」


 魔力喰い。

 名前の通り、他者の魔力を喰らいつくす魔物です。

 人であれ、魔物であれ、お構い無しに魔力を持つ生き物を補食します。

 対策を講じないと、何処までも成長して進化していきます。

 弱点は見当たりません。

 厄介な魔物です。

 只ひたすら、物理攻撃あるのみなのですが、勇者辺りが良い餌になりそうです。

 此方の言い分は聴かないと思います。


「聖女側がどう対処するか高みの見物と行くかな」

「トール君。その言い方ですと、悪役みたいです」

「協力しろと言われて着いて来てみれば、亜人発言ときた。やる気も失せるさ」

「ふむ。遺跡までの道は掃除してやるが、遺跡に入ったら勇者と聖女に任せるか」

「そりゃ、いいな」


 大人二人が悪巧みしています。

 しっかりと、怒っていましたね。

 御愁傷のひと言に尽きます。

 邪神討伐までに、辿り着くのか微妙になってきました。



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