第17話
月曜投稿です。
つ、疲れました。
朝食を食べるだけなのに、朝からドレスアップとは、一般庶民には考えられません。
馴れている王族の皆様を尊敬します。
神子衣装は複雑な身形に見えますが、一人でも着替えが出来るようになっています。
頭から被るだけでいいのです。
コルセットもありません。
どちらかと言いますと、貫頭衣に似ています。
体系隠しにもなっています。
ロングベールをかぶれば、認識阻害の刺繍による魔法が展開してくれます。
ドレスとは、違いまくりでした。
「似合っていますよ」
「そうだな。今後の事を顧みてドレスも作ってみようか」
ラーズ君とアッシュ君と合流しました。
が、どうみても着替えが普段と変わりがありません。
どういうことですか。
自分達だけ、ずるいです。
ラーズ君は、余所行きのジャケットにスラックス。
アッシュ君に至っては、紫紺を基調にしたコートにスラックス。
朝食を食べる身形ではないように思えます。
あと、今後をとはどういう意味ですか。
こんな窮屈なドレスを着る場所には行きたくありませんから。
「ラーズ。自前。ずるい」
「そうです。ずるいです」
「仕方ありません。僕等に似合う衣装がなかったのです」
「本当にですか?」
思わず女官長さんに、訊ねてしまいました。
私とリーゼちゃんは、髪型までドレスアップされましたよ。
男の子向けの衣装がないなんて、嘘みたいです。
「申し訳ありません。急遽間に合いましたのが、お嬢様方の御衣装のみでした。男性用の御衣装は、サイズが間に合いませんでした」
律儀に答えてくださいました。
ありがとうございます。
女官長さんは、悪くありません。
まあ、ラーズ君ならともかく、アッシュ君が着替えるとは思っていませんでしたが。
ラーズ君は、便乗したと思います。
私も余所行きのワンピースでは、いけなかったのでしょうか。
あの苦行の時間がラーズ君達に分かりますかと、問いただしたくなりました。
「では、皆様。食堂にご案内致します」
時間が押しているのか、女官長さんに先導されます。
移動開始です。
すぐに女官さんに、囲まれたました。
時折、警備の兵士さんや騎士さんに、すれ違い敬礼されました。
何だか、見世物になった気分です。
見世物といえば。
〔ラーズ君。ジェス君は、何処ですか?〕
〔ジェスは、兄さんの空間魔法で隠していますよ。亜空間でお休み中だと思います。流石に、王族との会食に連れては行けませんから〕
ジェス君だけ、客室にお留守番はさせられないですよね。
宰相補佐官さんが、幸運猫だと暴露してしまいましたし。
安全の為に、アッシュ君の側に居てくれるのならば、良しです。
〔ジェスの食事は僕等が済んだ後に、運んでくださる予定です〕
一緒に食事を食べれないのは残念ですが、仕方がありません。
まさか、王族との会食に動物を連れては行けません。
不敬罪ですよね。
「どうぞ、此方でございます」
恭しく促されて食堂に付きました。
王族私的な食堂ではなく、国賓対応な場所だと分かる、華麗な装飾と壁紙に囲まれた食堂でした。
席順はどうしますか。
上座は王妃様ですよね。
悩むべきもなく、席に案内されました。
上座に一番近い席にアッシュ君とラーズ君の二人。
私とリーゼちゃんは、その隣です。
席はまだ空いていました。
同席者が他にもいるようです。
「王妃様、王子殿下、王女殿下、御成りでございます」
ええと。
立ち上がるべきですかね。
女官さんと警護の騎士さんに、侍従産やらを引き連れて、王妃様方が登場しました。
椅子が女官さんに、引かれました。
立ち上がるよう、促されました。
「立ち上がる必要はありません。皆様方は他国の出身ですし、国賓です」
朗らかな声にに制されました。
椅子が戻され、座り直します。
「うわぁ、本当に魔族の人だぁ」
「獣人に竜人に、エルフまでいる」
「こら、お客様に何て失礼な!」
種族蔑視ではなく、驚嘆な歓声が上がりました。
王女殿下は、10台前半。
王子殿下は、10台未満です。
因みに王妃様は、30台位でしょうか。
王妃様に制止されなければ、私達に突撃されそうです。
「子供たちが、申し訳ありません」
「いや、子供は元気が何よりだ」
王妃様の謝罪には、アッシュ君が答えます。
一番の年長者に任せてしまいましょう。
王子殿下と王女殿下は、御付きの侍従に促されて、空いている席に付きました。
アッシュ君も、憤慨している気配はありません。
処か、微笑ましく見ています。
女官長さんが、ほっと息を吐きました。
大丈夫ですよ。
アッシュ君は、子供には寛容ですから。
私達も、指を指されて蔑視された訳ではありませんので、気分を害してはいません。
「本来ならば、国王陛下が招くのが筋ですが、賢者様との会談が長引いております。それに、奥の宮を預かる身としましては、昨夜からの不始末をわたくしから、お詫びさせて頂きます」
本来、王族はみだりに頭をさげてはなりません。
御付きの侍従にさせるのが慣例です。
ましてや、私達は人族の方からは魔族と言われる種族です。
帝国の法律では、奴隷以下の扱いです。
そんな私達に躊躇いがありませんでした。
「分かった。水に流す。こちらは遺恨がない。賢者も同様に判断するだろう。逆に問題を起こす原因を作り悪いと思う」
「お気遣い有難うございます」
「「ありがとうございます」」
言い含められていましたのか、お子様方も謝罪の言葉を口にします。
なんとも言い難い空気が漂い始めました。
侍従のなかにですが、私達をよく思わない方がいるようです。
余所者の魔族に謝罪する王族がいる傍らで、胡乱な眼差しを向ける侍従がいます。
すぐに王妃様に気付かれて、騎士が外に連行していきました。
「申し訳ありません。未だにお客様に対する不忠者がおりました」
「害がなければ放置するが、次回からは容赦なく排除するぞ」
「構いません。フランレティアも変わらねばならないのです。これまで、頼りにしていました帝国の為さりようには、陛下も憤慨しております。ですが、堅いお話はここまでに致しましょう」
王妃様の合図で料理が運ばれて来ました。
確か、外側のカトラリーを順に使用すれば良かったのですよね。
コース料理は、久しぶりです。
マナーは大丈夫でしょうか。
寮の料理長様に学びましたが、通用するのか不安です。
幼い王子殿下も、気負いなくカトラリーを使用しています。
王族なだけは、あります。
アッシュ君は人目も気にせずに、優雅に食事をしています。
ラーズ君とリーゼちゃんも同様です。
私も、料理人の端くれです。
王宮料理人の料理を堪能しようと思います。
昨今の食料事情を鑑みて、コース料理は品数はそう多くはあるませんでした。
ですが、趣向を凝らして出された料理は、味付けに苦心して、飽きが沸かない用に工夫されていました。
お肉料理のソースが絶品でした。
あっ。
私はお肉とお魚は食べれますよ。
純粋な森の妖精族は苦手な方がいるようですが、全く食べれないのではないです。
エルフに夢を見すぎな人族に、エルフは菜食主義者だと思われています。
豆ばかり食べている訳ではありませんので、勘違いなさらないで下さいね。
「エルフって、お肉食べれるんだ」
「菜食主義じゃないんだ」
「海の妖精族は、お魚も食べますよ」
期待を裏切るようですが、私は好き嫌いはないですよ。
トール君と料理長様に、食わず嫌いは治されましたし、ラーズ君とリーゼちゃんに給餌されて食べさせられました。
私は両親を亡くしてからは、随分と一人で彷徨いガリガリに痩せ細っていました。
お兄ちゃんお姉ちゃんとしては、いつ儚くなるか心配されていました。
栄養価の高い食事療法で、体重はみる間に増えていきましたよ。
あの頃は、生きるか死ぬかの狭間で大変でした。
リーゼちゃんは、私とラーズ君を側から離そうとしなかったですし。
ラーズ君は、お腹一杯に食事を詰め込もうとするしで、保護者様を呆れさせていました。
私は、保護された事実を受け止めきれずに、何時放り出されるかで、不安な毎日を過ごしていました。
肥え太らせて奴隷商人に売られると、思っていたのですよね。
嫌な子供です。
トール君は中々なつかない私の様子に、業を煮やして養子縁組までする始末。
やっと、理解が追い付いた時には、豊穣のお母さまの神子になっていました。
なんて、波瀾に跳んだ数日だったことか。
「でも、森の妖精族はお肉は食べないのでしょう。だから、あんなに細くて綺麗なのでしょう。貴女も私より華奢ですし」
王女殿下は年頃に有りがちな、憧れの対象がエルフなのでしょうか。
フランレティアには森の妖精族の、集落がありましたでしょうか。
どちらかと言いますと、鉱山の国なら岩の妖精族だと思われます。
エルフとは犬猿の仲だと噂されています。
確かに不仲では、あります。
私は気になりませんけれども、地中に都市を構える種族の性質が、どうも相容れないようです。
「森の妖精族でも、お肉を食べる集落はありますよ。王女殿下は、どちらでお会いしましたか?」
「あのう……」
言い淀みされました。
これは、聴かない方が良かったですかね。
沈黙が痛いです。
「どうしましょう。お母様。わたし……」
「申し訳ありません。娘が不作法を致しました。ですが、出来れば彼女をお救いできませんでしょうか」
「彼女ですか?」
「はい。帝国から派遣された将軍は、見目麗しいエルフを奴隷にしております。時折、この王宮にも連れては、得意気に武勇談を語っております」
戦争奴隷。
頭の中で単語が浮かびます。
帝国は、とうとう森の妖精族も敵視し始めた、ということでしょう。
こっそりと、アッシュ君を伺います。
絶対に情報は掴んでいるに違いありません。
「兄さん。どうしますか」
「それを、冒険者たる我々に依頼するなら受ける。だが、妖精族を救って以降はどうする? 正統な理由で奴隷になったのなら、主人の了承を得ずに奴隷解放は出来ないだろう」
「それは、わたくしにお任せくださいませ。必ずや、森にお帰し致します」
「私も、お願いします。彼女は、いつも叩かれたり、蹴られたりしています。可哀相です」
「ぼくも、お願いします」
ただの、会食ではなくなりましたよ。
昨夜の出来事を詫びる場ではなかったですかね。
何時の間にか、エルフを救う話になってきています。
将軍は貴賓室にて、代官と一緒に軟禁中だと思いますから、手を回せば保護できるのではと思います。
多分、出来ない何事かがあるのでしょうね。
だから、私達に接触できる会食は、渡りに舟だったのですね。
王女殿下を巻き込んでまで、依頼されてしまいました。
こういうのを権謀術数と言うのでしょうか。
ですが、アッシュ君の心中では規定路線な気がします。
エルフの彼女保護するメリットがあるのでしょうね。
私は、無関心を貫いて食事を取るリーゼちゃんが、羨ましくなってきました。
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