第20話
月曜投稿です。
賢者の石の売買にて驚愕な事実が判明して、暫し呆然としてしまいました。
気がつけば翌日になっておりました。
どんな風に過ごしたか記憶にありません。
賢者の石が想像していたよりも、高額設定になっていまして驚きの虹晶貨です。
一財産です。
鶴嘴を一振りした行為で1億ジルとは。
冒険者稼業で、一攫千金が叶いました。
白金貨も見たことはありませんでしたのに、虹晶貨を1枚手に入れてしまいました。
どうしましょう。
それにしましても何気なく渡されましたが、トール君の財産はいかほどなのでしょう。
聴くのが恐ろしくて聴けません。
一度無限収納に仕舞いました虹晶貨は、ラーズ君にそのまま仕舞うのはどうかと指摘されました。
ですので、丁度良い小箱に厳重に封を重ねて仕舞い直しました。
本当はパーティ資金に回したかったのです。
けれども、ラーズ君に却下されてしまいました。
迷宮攻略は、三人で行いましたし、私一人で成し遂げたとは、思っていません。
大の苦手な蜘蛛が階層主であったため、私は戦力にならなかったはずです。
なのに、
「忘れましたか? 鉱脈を採掘したのはセーラです。僕達のルールを適用すれば、採掘した鉱石は採掘者に所有権があります。パーティルールを覆してまで、所有権を主張するほど落ちぶれていません」
と、ラーズ君ににこやかな笑顔で説得されました。
リーゼちゃんも、頷いていました。
まさか、採掘技能の高いリーゼちゃんを差し置いて、とんでもない鉱石を採掘してしまうなんて、称号の効果は凄まじいです。
他者に知られてしまいましたら、採掘を強要されてしまい兼ねません。
延々と鶴嘴を振るい続けなくてはいけなくなりますね。
まるで、強制労働刑です。
「なんだ、まだ困惑しているのか?」
本日分のポーションをお店に納品してリビングで黄昏ていましたら、アッシュ君に苦笑されました。
ラーズ君とリーゼちゃんはお店番、ジェス君はお昼寝タイムです。
気持ちよさげに熟睡しています。
そう言えばアッシュ君も、かなりの資産を保持しているはずです。
依頼料は、破格のお値段でしたし。
アッシュ君はどう還元しているのでしょうか。
「小市民には虹晶貨は、手の届かない貨幣なのです」
「調薬で稼いでいるだろうに」
「実際にいただくのは、お小遣い程度ですよ」
「シルヴィータで稼いだだろ」
「大金貨まではいきませんでしたよ」
報酬は80万ジル。
金貨8枚です。
当初は3分割で60万ジルでしたのに、追加報酬となりました。
迷宮攻略に装備を一新しましたので、トール君に支払いましたから残金は少ないです。
アッシュ君にはテルハの冒険者ギルドから報酬が振り込まれていることでしょう。
私達とは、どれだけの差額があることか。
最低でも白金貨、1000万ジルは稼いでいるとみます。
DランクとEXランクを一緒にしては駄目ですよ。
「そうだったのか」
「そうだったのですよ。そのお金は装備を一新した代金になりました」
景気よく一括で支払いましたとも。
迷宮で採掘した鉱石も私には利用価値がありませんでしたので、手放しました。
虹色魔晶石は、魔導具の動力源になります。
魔導具職人のトール君に喜ばれました。
新作の魔導具はどのような品でしょう。
楽しみです。
「ラーズから聴いたが、エリィに悪戯されたんだってな」
「はい。危険物を紛れ混まされました」
「トールが怒りまくっていたな」
被害に遭いましたラーズ君ですから、有りのままを話したでしょうね。
私が放心していた間の事ですね。
私も苦言が言いたかったです。
これが、納品する商品に紛れ混まされたら、大問題に発展してしまいます。
エリィさんは憂さ晴らしにしたかったみたいですが、赦される行為ではないのです。
管理不足を指摘されましたら、私にも充分に反省点が挙げられます。
素直にお説教は受けます。
「安心しろ。エリィには転移室への入室禁止が言い渡された。浮島には当分の間は出入りできなくした」
表情に出ていましたのか、頭を撫でられました。
それは一安心です。
せっかく、手間ひま掛けて作製した薬品を無駄にはしたくないです。
エリィさんだって、寝る間を惜しんで製作した衣装を汚されたくはないですよね。
充分に反省してくださいませ。
ミラルカ近隣には人魚族が泳げる水場は少ないです。
どこも、農業用の溜め池や水源地です。
警備も厳重です。
締め切りが間近でなければ、日に何度も浮島の泉に泳ぎに来ているエリィさんです。
出入り禁止は確実に頭を抱えることになりそうです。
「話は変わるが、そろそろ帝国から使者が来るぞ」
「勇者召喚ですね」
とうとう、時期がきましたか。
条件付きでトール君は、承諾すると言いました。
事前準備は何をしましょうか。
ポーション類はどれだけの種類が必要になりますかね。
回復要員として赴く訳です。
最善な状態を維持させないと、トール君の顔に泥を塗りたくはないです。
「帝国は我が儘が目に余るようになってきた聖女を見放すつもりだ。後釜にミラルカの妖精姫を据える算段をし始めた」
妖精姫の二つ名は帝国にまで及んでいるのですか。
一人歩きし過ぎではないでしょうか。
それにしましても、お母様さま情報では聖女さんの寿命はそう永くはありませんでした。
心核に相当なダメージを受けているようです。
後天的に能力を付随させられていましたね。
固有技能を複数所持する私でさえ、魔力放出阻害がでています。
聖女さんにはどれだけの反動が出ているのか、推測できません。
出来たとしましても、救いの手を拒絶されそうです。
「覚悟しておけよ。聖女と直接対決が待っているからな」
「ラーズ君の推測では、聖女さんにはお兄さんが策士とし策謀を張り巡らしているようです。シルヴィータでも、領主さまの補佐役を隷属させていました」
「ああ。必ずそいつも着いてくるな」
「邪神討伐に使える逸材です?」
「いや、頭脳担当だからな。足手まとい確実だ」
アッシュ君に切り捨てられそうです。
目的地が判明してはいないですし、召喚されました勇者さんがすぐに討伐に赴く実力を有しているか分かりません。
実質的に直ちに討伐とはいかないでしょうね。
聖女さん側には騎士団がいますから、少数精鋭とはいかないですね。
補給はどうするのでしょうか。
私が心配しても仕方がないですね。
何をしても自己満足に終わりそうです。
「勇者召喚の代償に帝国は罪人の生命で購う事が決議された。神国は黙認のようだがな」
「日和見ですか。ここは批判する体勢を見せるべきではないですか」
神国は帝国と対立しています。
が、一枚岩とはいきません。
シルヴィータと手を組んだ神殿長がいました。
神子の秘匿情報を帝国に流していそうです。
だから、妖精姫を手に入れようとしているのかもしれません。
不確実な情報では帝国は動かないはずですから。
「今は静観の構えだが、勇者が召喚されてから神国は動きだすだろう」
「どういう意味です?」
「そのままの意味だ。勇者召喚はなにも帝国だけの秘術ではない」
アッシュ君の言葉に息を飲みました。
もしや、神国も勇者召喚を行う気です?
「勇者召喚は代償にした対価に比例して能力が違う。罪人1000人と聖職者100人とでは、どちらが勇者としての力量が上か分かりきっている」
その通りですが、神国側の大義名分は何か気になりました。
帝国は邪神討伐の目的があります。
ただ、対抗して召喚を行うには命が軽すぎます。
神国にしては自暴自棄になっています。
「今の神国には旗頭となる人材がいない。神子を頼ろうにも、豊穣神自身が神子を箱庭から出さない姿勢を貫いているしな。実際は、ミラルカで自由気ままに暮らしているが」
「お母さまも、権力にとりつかれた愚かな聖職者が多いと嘆いておられました。当代の神王も人身掌握に弱い方だと聴きます」
神国の神王の座は、神殿長と大神官の中から選ばれます。
条件は神族に認証されるかいなかです。
先代の神王は神子の情報を一部分ですが公にしてしまい、豊穣神の不興を買い失脚されました。
お母さまのご機嫌は農作物に影響を与えます。
新たに選抜されました神王は神子とは面識がない、地方都市の神殿長さまでした。
お飾りの神王なのはみえみえです。
が、お母さまの受けは良いおじいさんです。
老齢な方ですから、後継者選びに発展したとみました。
「最近の神国はシルヴィータのように、同盟国の台頭に頭を悩ませている。神子を掌握できない手腕に求心力低下が挙げられるな。シルヴィータの最新情報は、農地に異変が起きているようだ」
やはり、かなりな王族の方が加担していました。
直轄領では農作物が枯れていく現象に、市民が憤りをみせ始めているとの事。
国王の責任転嫁によりまして、神子誘拐を唆した貴族が粛清されました。
勿論、お母さまのお怒りは解けていません。
農地回復には大地の御方の加護持ちな方に、頑張って頂くしか手段はないのではと思われます。
私は干渉はしたくないです。
どうして、誘拐犯の手助けをしなくてはならないのか。
殿下さんの使者が評議会に訪れているようです。
私は見かけてはいませんが、ラーズ君の緊張具合いから判断しています。
接触しないようにしてくださっているのでしょうね。
有り難いです。
今日の夕飯はラーズ君の大好物づくしにしましょう。
腕によりをかけて作らさせていただきます。
話がそれてしまいました。
「神国も同時期に勇者召喚をするとしましたら、標的は何方になるのでしょう」
「必ずしも、討伐が目的ではないな。トールの父親が良い例だ」
生産活動狙いですか。
勇者召喚にそぐわない気がします。
聖職者の生命と引き換えにするに値するのでしょうか。
「求心力が低迷するにつけて、寄付金や上納金も減っているしな。トールという前例があるだけに、金の成る樹がほしいんだろう」
随分と俗物的になりました。
神国の名が廃ります。
神々が降り立つ聖地がお金儲けに勤しむ。
なんて、お笑い草ですかね。
確かに、祈りだけではお腹は膨れませんけど。
魔素の浄化や治癒術師の派遣で少なくないお布施を頂いているはずです。
そんなに権力に固執したがるモノなんて、私にはわかりません。
身の丈に合った生活が一番です。
そんなわけですから、アッシュ君。
この虹晶貨、預かって頂けないでしょうか。
無限収納に入っているだけでも、身に余ります。
どうか、なにも聴かずに受け取ってはくれないですかね。
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