第18話
月曜投稿です。
迷宮を転移装置を使用して出ました。
出張所のアリシアさんには当り障りのない情報を、ラーズ君が話しました。
ちょうど休憩中の冒険者パーティが数組いまして、何か問題がなかったか心配されました。
ティナさんのような問題児がそうそういるとは思いません。
ですが、気にして下さいまして有り難いです。
外見が幼く見えても色んな荒事には慣れています。
冒険者ギルドに登録したその日に、アッシュ君付きでA級ランクの魔物を討伐に加えられました。
何て無茶振りでしたか。
ラーズ君、リーゼちゃんの魔法禁止で、物理攻撃のみという縛りでした。
リーゼちゃんの全力な一撃であっけなく終わりました。
私を守らなくてはと張り切り過ぎたのです。
その日は一日中ラーズ君と私から離れませんでした。
喪った兄妹を思い出したのかも知れないですね。
「皆さんは第5階層は到達されましたか」
「いんや。まだだぜ」
ラーズ君が情報収集を始めました。
休憩中のパーティは心良く応じて下さいました。
冒険者ギルド専属パーティですね。
待機している時に失礼します。
「何が知りたいんだ? 攻略はどこまで進んだ?」
「第10階層は攻略しました」
「おおう。流石はクロス工房の年少組だな」
「あの、最凶な英雄殿の弟子だけあるな」
「最速な攻略だな」
皆さん羨む処か称賛してくださいました。
何方も一度は、アッシュ君と対峙した事がおありとみます。
傍若無人、敵対者には容赦無しを地でゆきますアッシュ君です。
ミラルカの警備責任者ですから、その実力は周知の事実です。
私達の武術の師匠です。
皆さん、何事も経験だと、アッシュ君に連れ回された私達をご存知なのですね。
「第10階層か、初見でよく階層主を撃破できたな」
「はい。情報はアリシアさんに提供しましたので、後で確認してください」
「やはり、状態異常耐性が要になってくるのか」
「そうです。耐性を上げる装備も必要ですが、索敵能力も高くないと危険です。後衛をじかに狙われました」
ジェス君がいなかったら、危ない目にあったでしょうね。
苦手な蜘蛛に囲まれてパニック状態に陥り、リーゼちゃんが大暴れしていた事でしょう。
下手をしていたら、迷宮内で竜体型に戻っていたかもです。
噂があがればそれこそ、竜退治の名声を夢見て冒険者が大挙して来ます。
賢者の石と、どちらが衆目を集めるでしょう。
比べてみたくはありません。
どちらも、厄介事にしか発展しないと思います。
「後衛をじかにか。それは、対策を練らないと危険だな」
「エルフの嬢ちゃんは、見た目より強いからなぁ。内のパーティの後衛は不安視しかないな」
「ハリスは典型的な魔術師だしな」
魔術師にも其々体術が得意な人がいたりします。
典型的なと言うのは学者肌なのでしょう。
それは、狙われましたら危険ですね。
対策をきちんと練ってください。
本当に危ない目にあいますから。
「ほんで、何が起きたんだ」
「起きた、と言いますか。階層主を撃破しましたら、鉱脈が出現しました」
「鉱脈?」
「はい、鉱脈です」
ラーズ君が採掘した鉱石をだしました。
話して良いのですか。
思慮深いラーズ君ですから、何か思惑がありそうです。
銀鉱石がテーブルに転がりました。
5階層でも採掘できた鉱石ですね。
「おかしいなぁ。5階層を攻略した他のパーティは、宝箱しか出てないと情報があがっているぞ」
「あいつ等がアリシアに嘘を吐く理由もないしな」
アリシアさんも嘘には敏感ですからね。
ギルドの受け付けになります人材には必須な条件です。
「では、鉱脈の話は僕達以外出てないのですか」
「ああ」
「鉱脈発見情報は今の処はないなぁ」
やはり、私の称号が関係しているのでしょうか。
迷宮の謎は深まるばかりです。
大地の精霊王様の加護は迷宮にも、効果があるみたいですね。
私以外の精霊の加護持ちさんに、是非検証していただきたいです。
あっ。
無理強いは駄目ですよ。
ギルドの規約に反しない限りは、私も協力は惜しみませんが、きっとラーズ君に止められますね。
余計な波風はたたせないようにと、叱られますね。
また、厄介な鉱石が採掘できてしまいましたら、どうしましょう。
賢者の石以上に稀少な鉱石だと、後は日緋色金位ですかね。
あれは、扱いが難しい鉱石です。
トール君でも鉱石からインゴットにするには、時間を要します。
迷宮の底が何階層まで続きますか分かりませんので、次回は鉱脈ではなく稀少な薬草が採集できると良いのです。
「おっ、ちょうどいい。ジェイクのパーティが戻ってきた」
「あいつ等は5階層を昨日攻略したから、聴いてみるか」
ジェイクさんでしたら、工房の常連さんです。
尋ねやすいですね。
アリシアさんに報告が終わりましたら、聴いてみましょう。
「あら、どうしたの?」
「年少組が尋ねたい案件があるんだと」
「お前さん達は5階層を攻略しただろう」
「ええ。もしかしたら、採集の件かしら?」
合図に気付かれたジェイクさんのパーティの仲間が、私達に話し掛けてくださいました。
確かミレーユさんです。
ミレーユさんは、ラーズ君と同じ双剣を扱います剣士です。
「採集? 採掘ではなくてですか?」
「ええ。私達は5階層の階層主を撃破したら、突然出現したわ」
「僕達も、そうです。突然鉱脈が出現しました」
やはり、パーティによって違いました。
基準は称号でしょうか。
私も秘匿情報がありますから、他者のステータスを尋ねるには不躾すぎます。
「アンリが狂喜乱舞して採集していたわ。何でも、ミラルカ近隣には自生しない植物なんですって」
「話して大丈夫何ですか?」
「大丈夫よ。採集は私達だけではなく、リカルドのパーティもしているから。だけど、鉱脈は初めて聴いたわ」
「迷宮の七不思議だな」
皆さん苦笑いです。
本当に不思議な迷宮です。
採掘に採集。
その内に伐採何て事が起きそうです。
「おっ、呼ばれているぞ。年少組」
促されまして、指差す方向をみます。
アリシアさんが手招きしていました。
傍らにはジェイクさんが厳しい顔付きをしています。
何が起きたのですか。
ミレーユさんと、アリシアさんの元へいきます。
ちゃんと、お話してくださいました皆さんに、お礼はしました。
情報の対価に一杯奢りました。
勿論お酒ではなくてお茶です。
昼間から呑んだくれは厳禁です。
「アリシアさん、何かご用ですか」
「貴方達5階層で鉱脈を採掘したのよね」
ニコニコ笑顔なアリシアさんです。
前回も今回もラーズ君が採掘した鉱石を見せています。
私とリーゼちゃんが採掘した鉱石は出せません。
秘匿情報です。
これから、ギルドで公開していいのか、トール君の指示待ちです。
「年少組は鉱石か。おれ達は植物だった」
「ミレーユさんに、聴きました。何でも珍しい植物だったとか」
「……それも、稀少な魔術の触媒になるんだと」
触媒を介しての魔術。
何だか、危険な匂いがしてきました。
賢者の石並に厄介事に発展しそうです。
「セーラちゃんなら判るかな」
アリシアさんがメモ帳を渡してくれました。
話題に出すのも駄目なのですか。
一体どんな植物でしょうか。
死人草。
そう、書かれていました。
「ジェイクさん。焼却処分して下さい。それか、私が買い取ります」
「お、おう。安心していい」
「アリシアさんに、奪い取られましたよ」
肩を落とすアンリさんですが、当たり前です。
ミラルカに持ち込み禁止な危険な植物です。
栽培何てしたら、アンリさんだけでなくパーティメンバーにも、罪が及びます。
死人草は、読んで字の如く。
墓地に生える薬草です。
乾燥して細かく砕き粉末状にしますと、禁薬の出来上がりです。
その禁薬は麻薬の一種で、摂取すると魔法の威力が格段に上がります。
反面、常習性があります。
適量を守れば害はありません。
しかし、先を先をと望み破滅する魔術師が多いのが現状です。
一定の摂取量を超えた魔術師は、理性を無くし只の虐殺者に変貌します。
さながら、生きる屍とかすのです。
対抗する中和剤は、ありません。
恐ろしい植物なのです。
「貴方達、禁止鉱石は出てないわね」
「ありません。僕達は宝石類の原石と魔晶石が採掘した位です」
アリシアさんに呼ばれた理由がわかりました。
鉱石にも、身体に害があるものがあります。
それに、火薬の類いです。
「なら、良いわ。何か有れば即ギルド追放は免れないからね。特にアンリさん。ギルドマスターにお説教を受けて頂戴」
「わかりました」
「ジェイクさん達にも、ペナルティが課せられるのよ。反省して下さい」
アリシアさんの厳しい一言に伏せた顔を上げましたアンリさん。
魔術師は、世間知らずな一面があります。
アンリさんも例に漏れず、個人の罪がパーティにも及ぶとは思っていなかったみたいです。
それほど、厳しい処遇が課せられます植物なのですよ。
「ごめん、ジェイク。浅はかだった」
アンリさんは素直に頭を下げました。
何方かは見習って欲しかったですね。
そうしましたら、追放はなかったと思います。
何度も繰り返し謝るアンリさんに、ジェイクさんも肩の力を抜きました。
「もう、いい。止めなかったおれも悪かった。一緒にマスターに説教を受けよう」
「本当にごめん。みんな」
「そんなに、危険な植物だったの?」
話がわからないミレーユさんが首を傾げています。
植物には疎いようです。
「ミラルカでは所持しているだけで、拘束後に無期労働刑ですね」
「⁉ アンリ。何を持ち込んだのよ」
「……」
「なんですって」
アリシアさんに耳打ちされましたミレーユさんが激昂されました。
驚きますよね。
調薬師でも、扱いは厳選されます。
資格保持者は年に何回か薬師ギルドの抜き打ち監査が入ります。
私は調薬師の資格を得てからの時間が浅いので、扱いは赦されていません。
メル先生は資格保持者ですので、いずれは学ぼうと思っています。
メル先生もその知識の継承者に、私を選んでくださいました。
期待を裏切らない研鑽を積みたいです。
私は、禁薬の中和剤を造る途を模索したいと思っています。
出来れば、大陸から禁薬を無くしていきたいのです。
理由は、単純明快です。
禁薬の大半が帝国に属してる調薬師が産み出しました。
これも、帝国への意趣返しになると思うからです。
いたちごっこになるかと思われますが、闘う所存です。
絶対に、負けたりしません。
ブックマーク登録ありがとうございます。




