第4話
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次話は金曜日になります。
さて、そろそろ本格的に移動を開始しましょう。
迷子の鉄則はその場を動かないこと、と言い含められていますが、いかにも曰くがありそうな場所に、見た目が幼い少女が独りでいたら、神子だと宣伝しているも同じです。
『森を西に行けば街道に出る。そこから北上すると街がある。大きな街だ。転移門が設置されているが、今は規制されていると同朋の情報だ』
‥‥‥ですよね。
私独りだと使用の許可がでない確率が高そうです。
出鼻を挫かれました。
帰還できるのはいつになるでしょか。
不安の種がすくすく大きく育ちそうです。
結界の外側にいますが、耳飾りは不快な音をだし通信はできないまま、もしかしたら国全体に、通信と転移妨害の魔法が展開していそうです。
開けた場所で確認しましょう。
猫君は新たに取り付けた底が広いポーチにタオルごと入ってもらいます。
おとなしくされるがままの猫君ですが、危篤な状態は脱したのでひと安心です。
「窮屈ではありませんか」
狭く薄暗いポーチの中が、封印時を思い出さなければいいのですが‥‥‥。
居心地が悪かったのか少し身動きしましたが、猫君は比較的落ち着いています。
野生の猫と幻獣を比べたらおかしいのですが、元々の性質なのか警戒心が薄いですね。
なぁ~う。
まるで大丈夫と言っているみたいです。
『森と海の娘。幸運猫は、元来人懐こい性格です』
『その為に絶滅の危機にある』
『他者の感情の機微に優れ無垢な者に幸いを、強欲な者には災いをもたらす。我等は、仔や其方の幸いを願う』
あら、口にだしていましたか。
心配してくださりありがとうございます。
でも、安心して下さい。お金には不自由していませんから。
調薬師として稼いだ金額は、全て私名義で貯蓄されています。
未成年の間は、衣食住は保護者様方のお世話になっている身です。
負担になる様なら使って下さいとお願いしてありますが、保護者様方もそれなりに稼いでいますので、貯まっていくばかりです。
『精霊様方、御助言ありがとうございます。取り敢えずですが、街に向かってみようと思います』
『その方がいいだろう。彼の地にはギルドがある。頼りになる者がおるだろう』
ん?
何だか意味深な言葉がありました。
けれども、大地の精霊様は口を閉ざして住み処に還られます。
『森の中は今迷路の、精霊魔法の効果が発揮しています。森と海の娘なら安全に街道まで、森を抜けれるでしょう。街道に出た後は、気を付けて行きなさい』
樹木の精霊様も還られます。
慌てて頭を下げました。
ふと、足下に大量の薬草があることに気が付きました。
精霊様の置き土産みたいです。
うわぁ。
鑑定結果によりますと、新薬の研究に必要な入手困難であった野生の薬草があります。
どうしても栽培された薬草では、効能が落ちて行き詰まっていたところでした。
これで研究が捗ります。
植生地が帝国領でしたので、自分で採取に行けなかったのですよ。
嬉しいです。
薬草を無限収納に納め高揚した気分で西へ歩き出します。
迷路の精霊魔法は方向感覚を狂わせ、自分が何処を歩いているのか認識不足に陥ります。
私は魔力の流れを知覚できることと、ハーフエルフですし魔法耐性・状態異常耐性が人族より高いので、迷路の影響はさほどありません。
さくさくと西へ進んでいきます。
調薬師の職業柄、道中目についた薬草を採取したのは言うまでもありません。
きっと、帰還するなり作業部屋に籠り、後見人様方にお説教されるかと思われます。
解っていても止められないのが研究馬鹿と言う者なのですよ。
恨むなら調薬師に希少な薬草を渡した精霊様を恨んでください。
みぃ~あ。なぅ。
あっ⁉
ごめんなさい、猫君。
薬草に興味が移り、すっかり猫君を忘れていました。
間違えてはいけません。君の方が優先順位が上でしたね。
でも、本当に他者の感情に敏感なのですね。
ポーチの中に居るのに注意されてしまいました。
気を取り直さなくていけません。
パチン、と戒める為両頬を軽く叩く私なのでした。




