第4話
月曜投稿です。
「いやぁ。こっちに来ないでください」
はい。
ただ今、階層主と戦闘中です。
リーゼちゃんの背後から複眼に矢を射ています。
階層主の名は、ジャイアントスパイダー。
熊並みに大きな蜘蛛です。
私が大変苦手な昆虫の大型種です。
ラーズ君の双剣とリーゼちゃんの風魔法で脚を斬り払ってくれていますが、何故か私の方に向かって来ていました。
きゃあきゃあ、騒いでいるからでしょうか。
弱い個体だと認識されていますか。
実際にリーゼちゃんの背中から離れる事ができてはいません。
全ての脚を切り刻まれましたのに、狙いが外れてくれません。
執念深さに思わずリーゼちゃんに抱きついてしまいました。
「リーゼ。セーラの安寧の為に協力技をいきますよ」
「了承」
ラーズ君、リーゼちゃんお願いします。
早く視界から蜘蛛を消してください。
戦闘中に騒いで煩いのは理解しています。
危険な行為をしている自覚はあります。
けれども、自分でも止められないのです。
生理的に受け付けられないのです。
「「【炎の竜巻】」」
ラーズ君の火魔法とリーゼちゃんの風魔法によりまして、炎の竜巻に灼かれながら切り刻まれていく蜘蛛さん。
申し訳ありませんが、オーバーキル状態ですね。
涙目でリーゼちゃんの左腕に掴まりました私の肩では、ジェス君が落ち着いてとばかりにすり寄っています。
うぅ。
情けない姿を晒して、ごめんなさい。
何故この迷宮には蜘蛛がいるのでしょう。
視界に入らない小さな蜘蛛なら、なんとか騒ぎ出すことはないのですが。
大型種はどうしましても無理です。
ラーズ君とリーゼちゃんがいませんでしたら、最終奥義な最凶魔人様のアッシュ君を呼んでいました。
召喚ではなく、危機的状態にあるときに叫べは転移で駆け付けてくださいます。
ラーズ君や、リーゼちゃんの目から逃れまして、個人行動はできませんので滅多にやりませんけど。
「終わりましたよ、セーラ」
「うん。宝箱が出現。鑑定お願い」
「……はい。罠はありません。鍵もかかっていません。ラーズ君、お願いします」
魔法の効果が消えまして、蜘蛛がいた場所にはメダルを発見した宝箱とは、色形が違う宝箱が出現していました。
階層主を討伐した報酬ですので、罠や鍵はありません。
蜘蛛ではありませんが、生理的に触りたくないです。
ラーズ君にお願いしました。
「セーラの蜘蛛嫌いはドロップアイテムにも影響しますか」
「トラウマ? 何処でかな」
「うろ覚えな記憶ですが、リーゼちゃんに会う前の森の集落でだと思います。お父さんの困った顔が思い出されます」
しがみついて離れがたい記憶があります。
うんと小さな頃だと思われます。
精霊術が使えない私に、嫌がらせをされた記憶だとは言えませんね。
リーゼちゃんの報復がされかねません。
ラーズ君も黙認してしまいませんね。
にゃぁう。
ああ。
ジェス君には通じていましましたか。
二人には内緒ですよ。
森の集落では、落ちこぼれはいらないと弾き出されました。
アッシュ君に拾われませんでしたら、今頃はどうなっていましたやら。
ジェス君にも会えませんでしたね。
なぁ~う。
慰めてくださいますか。
ジェス君に頬を舐められました。
「セーラ。和んでいますところを申し訳ないですが、こちらの鑑定をお願いします」
「はい。……ぎゃあ、いりません。麻痺毒が附与されました毒針です。早く仕舞ってください」
ラーズ君に示されました宝箱の中身は、握りに蜘蛛を象りました意匠がある毒針でした。
かなり精巧な創りです。
先程討伐しました蜘蛛を思い出します。
ラーズ君は苦笑気味にアイテムを仕舞ってくれました。
「迷宮の意地悪です。後、あちら側に採掘場所があります。採掘していきますか」
「採掘? 何が採れるかな」
「僕の鑑定には銀混じりの鉱石に見えますけど」
「私には、かなり上級な宝石の原石が見えます」
「ほんとだ。ちょっと離れて。採掘する」
いけません。
リーゼちゃんにしがみついたままでした。
慌てて腕を解放しました。
階層主がいなくなりまして、姿を変えました部屋の隅に出現しました採掘場は、キラキラと輝きを見せています。
魔法の鞄から、愛用のつるはしを取りだしまして、一振りしたリーゼちゃんの足元に数種類の鉱石が散らばります。
蒼玉と紅玉の原石に、銀と銅に鉄鉱石。
二振り目で隕鉄がでてきました。
三振り目では、また蒼玉の原石でした。
まだキラキラとしていますが、リーゼちゃんが退きました。
「これ以上採掘できない」
「? まだ輝いていますよ」
「光りない」
「僕の目には輝いています。と、言うことは僕とセーラも採掘できる訳ですか」
ラーズ君は採掘技能を持っていませんけど、念の為につるはしは常備してあります。
リーゼちゃん愛用のつるはしは私とラーズ君には重いのです。
竜族の膂力と比較するだけ虚しいものはありません。
試しにラーズ君が採掘技能無しで一振りしました。
「銅と鉄。不思議」
「石ころがでないだけ有り難いですが、リーゼとの対比がすごいですね」
「ラーズ、それ違う。本命はセーラ」
「ああ。納得しました。大地の恩恵ですね」
そうでしょうか。
鉱山に何度か一緒に行きましたけど、ラーズ君と同様な成果でしたよ。
ラーズ君の二振り目も銅と鉄でした。
が、ここでラーズ君は退きました。
「輝きが消えました。やはり、リーゼとの違いがありますか」
私にはキラキラはまだ輝いています。
次は私の番ですね。
魔法金製のつるはしを構えます。
森の妖精族は、鉄製品と相性が悪いのです。
「ジェス。石が跳んで危ないですから、こちらに避難してください」
なう。
ジェス君が肩からラーズ君の差し出されました手の平に移動しました。
てっきりポーチの中に入るかと思いました。
さては、採掘に興味津々となりましたか。
では、気合いいれまして一振りしましょう。
「よいしょっ、と」
ガツン、と音がしました。
足元に落ちました鉱石は、どんな種類がでましたか?
「やはり、セーラに敵わない。金剛石と虹色魔晶石」
はて?
同じ鉱床から各自違います鉱石や原石がでました。
これも、迷宮の謎ですか。
二振り目も魔晶石が数個採掘できました。
三振り目は金剛石と紅玉の原石です。
あら。
キラキラはまだ続いていますよ。
四振り目。
「謎は深まります。何故に超硬石が出るのです?」
「大地の御方の思し召しだと思います」
「鉱石系の加護はないですよ」
「ステータス確認する。知らないだけ?」
「それは、誰が覗いているか判りません。安全な家での方が良いでしょう」
それもそうですね。
帰りましたら、確認してみます。
鉱石はトール君に買い取って貰いましょう。
魔晶石は純度が高い最高級クラスですから、売却はできませんね。
もしかしまして、情報は出さないべきですか。
アマリアさんには、隠し通せないかと思います。
ラーズ君に対応はお任せ案件ですね。
秘技、黙秘の出番です。
「採掘はこれで終わりで良いですか?」
「あっ、はい。終わりました」
キラキラは無くなりましたので、鉱石や原石を収納して迷宮をでましょう。
私達が入ってきました扉の反対側に、扉があります。
6階層に続いてる階段と転移装置がありました。
4階層の幻惑に惑わされましたから、装備を一新して再挑戦です。
転移装置を起動します。
ジェス君がポーチに入りましたのを確認しまして、移動開始です。
転移失敗にならず、1階層の広場にでてきました。
次回は転移装置で5階層に戻れます。
他の冒険者とかち合うことなく迷宮をでました。
迷宮脇には冒険者ギルドの出張所ができつつあります。
休憩所には先輩パーティやギルドの選抜パーティが、陣取っています。
「あら、年少組じゃないの。何階層まで攻略したか、ここで報告してね」
出張所にはアマリアさんの妹のアリシアさんが見えました。
今日も艶やかな毛並みですね。
簡易な依頼ボードには攻略の進捗具合いが貼られていました。
明るいアリシアさんは、メモ帳とペンを手に近寄ってきます。
暇なのですね。
「僕達は、5階層までです」
「おおぅ、遂に4階層の壁を踏破したか。5階層なら、階層主がいたのよね」
「はい。僕達が退治しましたのは、ジャイアントスパイダーです」
「うんうん、わかったわ。因みに4階層を攻略した情報はあげてくれるのかしら」
「いいですよ。攻略には状態異常耐性がないと、大変きついですよ。出現します魔物は全て状態異常を持ちます。あぁ、そうです」
「ん? 何かあったの?」
「3階層から4階層に降ります階段で風の天馬パーティの一人に絡まれまして、魔物誘発剤を投げ込まれました」
ラーズ君の言葉にアリシアさんの表情が引き締まりました。
ちゃかすことはせずに、溜め息をひとつつかれました、
「了解したわ。本部にも顔をだすのよね。姉さんにも報告してね。今の時間ならギルドマスターも本部にいるから」
メモ帳に赤色のペンで緊急と書き出しますアリシアさん。
ギルド員なだけに、理解は早いです。
私達が帰還しまして、風の天馬パーティは帰還していない。
いまだに、魔物から逃れられてはいないみたいです。
非常事態です。
「はい。みんな聴いていたわね。お馬鹿な事を仕出かしたお馬鹿さんを救出に行って頂戴。状態異常耐性が高いパーティはいるかしら?」
「レベッカのパーティには、やたら耐性に詳しいのがいたな」
「3階層なら楽勝までいかないが、余裕で退治できるぞ」
「はいはい。マップはこれね。みんな気をつけてよ。状態異常耐性があがるポーションを配付するから、並んで頂戴な」
休憩所にいます先輩パーティの中から名乗り出ます冒険者さん達を、手際よく振り分けますアリシアさんです。
普段は能天気なテンション高めな方ですが、とても有能な人転がしなギルド員なのです。
「アリシアさん。これも配付してください。誘発剤の中和剤です」
「ありがとう」
ポーションの無償援助は怒られますが、緊急事態に中和剤配付は懐が傷みません。
救助後にギルドから補填されますのです。
ラーズ君も黙したままでした。
リーゼちゃんは、我関せずを貫いています。
正直に言いますと、1階から降りますより5階層から登る方が早いのです。
ですが、それを出来ますパーティは因縁をつけられました私達だけです。
アリシアさんも気が付いているはずです。
依頼がありましたら、吝かではありますが応えようと、ラーズ君から念話が入りました。
リーゼちゃんは渋っていますが。
どうなりますかは、迷宮内の風の天馬パーティ次第です。
ティナさんが素直に救助に応じると良いですね。
一騒動ありそうな予感がしました。
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