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森と海の娘は平穏を望む  作者: 堀井 未咲
ミラルカ編
31/197

第3話

金曜投稿です。


 ビッグビーの群れを殲滅し終わりましたのち、あの場を離れました。

 迷宮探索に進みます。

 絡んできましたティナさんのパーティは放置です。

 地下4階層は忠告通り毒持ちの魔物が多いです。

 ポイズンと名がつく魔物の出現率が普通な魔物を上回っていました。

 ドロップアイテムも耐毒薬が目立ちます。

 いまのところは自前の毒消しの出番はありません。

 発見される都度に、矢と風魔法が飛びます。

 一撃で退治できますので、適性ランクは私達の方が上みたいですね。

 だからと言って、油断はできません。

 未攻略な迷宮の中にいるのです。

 いつ何時にランクが上な魔物が出現しても、対処できるように警戒は怠りませんよ。


「道が分かれています。どちらに進みますか」

「風の流れ、右は行き止まり」

「では、左ですね」


 はい、右は行き止まり。

 地図にマッピングしておきます。

 んん⁉


「待ってください。なんだか、地図がおかしい気がします」

「どうしました」

「何が変」


 リーゼちゃんの風魔法で行き止まりは通りすぎましたが、今まで歩いた場所を確認すると、ぐるぐる円を描きますように回っています。

 何故今気がついたのでしょう。


 みゃあ。


 ジェス君?

 鋭い鳴き声に頭の中が晴れていきます。


 なう。

 みぃあ。


 ジェス君の鳴き声に魔力が乗っています。

 危険感知が状態異常攻撃を訴えてきています。

 あれ?

 何かがおかしいです。

 敵は何処かに潜んでいるみたいです。

 何時から状態異常に陥っていましたか。

 まごつく私達に業を煮やしましたのか、藍色の影が頭上に向かいます。

 ポーチからジェス君が飛びだしましたのです。

 慌てて弓を構えます。

 私の動きに即座に反応するラーズ君とリーゼちゃん。

 背中合わせで周囲を索敵します。

 ジェス君は漆黒な塊と格闘しています。

 まだ本調子ではありませんから、無理はしないで欲しいのですが。


 みゃう。


 勝った。

 と翻訳していいですね。

 誇らしげに胸を張りますジェス君。

 獲物は鑑定してみます。

 イリュージョンバット。

 ランクAな魔物です。

 名前のイリュージョンは対象者を迷わせる幻惑を見せ、惑わすところからきています。

 散々歩き回りさせて、疲労から身動きとれなくなった獲物を仕留めます。

 私達、確かに惑わされていましたね。

 ぐるぐる回っていました。

 状態異常耐性が高めな私達。

 まさかな罠に嵌まっていました。

 ショックです。

 頭上にまで注意をはらっていませんでした。

 これが油断大敵ですか。

 身を持って理解しました。


 にゃっ?


 ジェス君に倒されたイリュージョンバットがドロップアイテムに変わりました。

 初めて見ましたか。

 驚いていますジェス君。

 前足で床をたしたししています。

 可愛いです。

 癒やされます。


「セーラ。ここは迷宮内です。もふりは家に帰りついてから、お願いします」

「注意力散漫だめ。今、罠にかかったばかり」


 あぅ。

 嗜められました。

 当然ですね。


「ジェスも、次は僕らに警告してください。君は、まだ養生していなくてはいけませんよ」


 みぃ。


 ラーズ君にポーチの中に容れられましたジェス君は、分かったと前足をあげます。

 ですが、助けられましたのも事実です。

 ドロップしましたアイテムは、ジェス君の戦利品ですよ。


 ▽

 三日月の短剣。

 混乱の効果付与。


 斬りつけた相手を混乱にさせてしまう短剣です。

 月のメダルに続きまして、三日月ときましたか。

 どうやら、この迷宮は状態異常耐性が高くありませんと、攻略は出来ないかと思われます。

 風の天馬パーティも、惑わされて疲労困憊状態だったと見受けられます。

 攻略出来ませんでしたから、八つ当りされたのですね。


「セーラ。その短剣は別枠で保管してあげてください。後日、ジェス用の魔法鞄(マジックバッグ)を用意します」

「はい。わかりました」


 なぁ~う。


 ポーチから、見上げますジェス君は首を傾げています。

 普通の猫なら何てこともありません仕草です。

 けれども、神獣のジェス君は不思議に思っているのですね。


「この短剣はジェス君が、一人で倒してドロップしたアイテムです。私達3人が決めましたルールでは、個人で倒した獲物やアイテムは、個人所有になります」


 パーティで倒した場合はラーズ君が一纏めします。

 所有権を主張しない限り、売却した代金を3分割します。

 蝙蝠のドロップアイテムが、相当しますね。

 ビッグビーのハチミツは私が所有権を主張しましたので、売却はしません。

 ラーズ君は手出ししなかったから、発言はありませんでした。

 リーゼちゃんはお菓子に使わられるのを納得しているので、私の主張に了承しました。

 こうして、無事にハチミツは私所有になりました。

 短剣はジェス君が一人で魔物を発見、退治しました戦利品です。

 所有権はジェス君にあります。

 私達に異論を挟む余地はありません。


「ジェス君が頑張ってくださいました、ご褒美です。迷宮からの贈り物ですよ。家に戻りましたら、トール君とアッシュ君に成果を見て貰いましょう。きっと、褒めてくれますよ」

「その後でお小言だけど」


 みゃっ。


 リーゼちゃん。

 敢えて言いませんでしたのに。

 ジェス君の尻尾が膨らみました。

 本来は養生中なジェス君は、トール君にお留守番を言い渡されていました。

 嫌がったジェス君は、私の胸元に爪をたてて離れませんでした。

 アッシュ君にポーチの中で静かにしている事を条件に、ついてきたのです。

 不甲斐なくも末っ子に闘わせてしまいました。

 ジェス君と共に私達もお説教が待っていますね。


「安心してください。僕達もお説教は待っています」

「うん。一緒に叱られる」

「はい。皆で叱られましょう」


 肩が落ちます。

 トール君のお説教は理詰めできます。

 普段の大雑把が鳴りを潜めてきますので、かなり怖いです。


「‼ 戦闘準備。正面右側から、接近中」

「了承」

「了解しました」


 丁度、鬱憤晴らしな相手が向こうからやってきてくださいました。

 各々、武器を構えまして待ち構えます。

 曲がり角から魔物が出てきてきます。

 飛び掛かってきます魔物の胴体がリーゼちゃんの風魔法で分断され、ラーズ君の双剣が頸を跳ねていきます。

 私の出番はなかったです。

 不完全燃焼です。

 次の相手に期待しましょう。


 みゃう。


 ジェス君は、ポーチの中から出てきては駄目ですよ。

 先程ラーズ君に言われましたでしょう。

 おとなしくしていましょうね。


「セーラ、地図を貸してください」

「どうぞ」

「索敵任せて」


 ぐるぐる円を描いています地図は役にはたたないと思います。

 居場所を完全に見失いました。


「リーゼ。風の流れはどちらにむいているか、判りますか」

「ん。下はあっち。上はこっち」

「では、下側に向かう道を案内してください」

「了承。魔物の気配ない。上下左右確認済み」

「瞳を使います。時を計ってください」


 同じ鉄は踏みません。

 私も瞳を使います。

 余り使いすぎると体調に響くので、短時間に済ませます。

 固有技能(ユニークスキル)の【理の瞳】は本来はトール君に使用制限を約束させられていました。

 しかしながら、過日の強制転移事件を期に身の安全が保証できない事態に、またなるとも限りません。

 ラーズ君とリーゼちゃんが、側について対処できる場合なら使用許可がおりました。

 時間制限つきですけど。

 色違いな瞳に理力を集めます。

 すると、途端に視界に情報が溢れだします。

 壁の材質から、この階層に棲息すれる魔物の情報まで、あらゆる事柄を教えてくれます。

 その中から地下に続く最適な道順を探します。

 眼前に透明な迷宮の模型が浮かび上がりました。

 視界が俯瞰してゆきます。

 真上から模型を見下ろす形になります。

 あら。

 意外と上下の階段は近い場所にありました。

 灯台もと暗しですね。


「セーラ。時間です」


 ラーズ君の合図で瞬きを数回繰り返します。

 理力を散らして視界を元に戻しました。

 少々情報量の多さに頭がくらりとします。


「大丈夫ですか。無理な厳禁ですよ」

「魔物いない。休憩する?」


 なぁ~う。


「大丈夫ですよ。視界が普通に戻ります瞬間は、訓練していましても慣れません」


 こればかりは、何回行いましても慣れてはくれません。

 固有技能は身体に負担がかかってしまいます。

 過保護なラーズ君には平静を装いましても見破られました。

 迷宮の中の安全地帯に入るまで我慢です。

 頭のなかは、迷宮の詳細な情報で一杯です。

 先頭を歩きますリーゼちゃんに、手を引かれて来ました道を引き返します。


「この迷宮の正式名称は望月の迷宮ですね。階層毎に何かしらの状態異常が起こります」


 魔物発見後即座に退治していましたから、状態異常には掛からずにこれましたが、1・2階層にも少なからず状態異常持ちな魔物が出現していました。

 各種状態異常耐性がありませんと、迷宮攻略は難しそうです。


「状態異常ですか。僕達ですら状態異常に陥りましたので、装備を改めまして再挑戦しましょう」

「賛成。ここは安全第一でゆく」

「ですが、上の階段には風の天馬パーティがいます。降りまして5階層の階層主(フロアマスター)を討伐して、転移装置で転移した方が早そうですよ」


 迷宮には迷宮の核(ダンジョンコア)を守ります階層主が5階層毎にいました。

 階層主を倒せば転移装置が使用できるようになります。

 風の天馬パーティには絡まれるのは分かりきっていますので、無用な争いは避けましょう。


「ああ。風の天馬ですか。まだ動きがありませんか」

「ん。囲まれているから、動けない。因果応報」


 正確には魔物誘発剤の効果が高くて身動きできないのですけど。

 迷宮内では階段か転移門でしか、移動はできません。

 トール君が開発した転移石での転移はできそうですが、まだ実験段階ですので販売は見合わせています。

 ティナさんの様子では、私達に救援は出しにくいと思います。

 いち早く階層主を討伐しまして、迷宮をでましょう。

 迷宮で起きた出来事は冒険者ギルドに報告しますよ。

 受付嬢のアマリアさんには嘘発見の技能(スキル)がありますから、嘘がつけない私に報告をさせます。

 きっと、今回も根掘り葉掘り詳細な情報を引き出されますことになります。

 ティナさんは迷宮内で生死に関わる行為をしています。

 止められませんでした風の天馬パーティにもペナルティが課せられますこと請け合いです。

 下手をしましたらランク降格か、無料奉仕が待ち構えていますよ。

 彼女が何故危険を誘発しましたのかは、アマリアさんに聴くことにしましょう。


ブックマーク登録ありがとうございます。

念願の50件越えです。

うれしい限りです。

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