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森と海の娘は平穏を望む  作者: 堀井 未咲
ミラルカ編
30/197

第2話

 ザシュ!


 大型化した蝙蝠の眉間目掛けて矢を射りました。

 狙いたがわず命中しまして、蝙蝠は地面に墜ちました。

 ラーズ君は双剣を振るい、リーゼちゃんは風魔法を駆使しています。

 ジェス君は静かにポーチの中です。

 私達クロス工房年少組は、ミラルカ近郊に新たに発見されました迷宮に来ています。

 この迷宮は地下迷宮でして、只今地下に降ります階段を探しています。

 冒険者ギルドで頂きました情報によりますと、階層は三階まで攻略されていました。

 私達は、その三階を攻略中なのです。


「蝙蝠、うざい」

「同感ですが、リーゼ。僕まで巻き込まないでください」

「ちゃんと外してる」


 ラーズ君とリーゼちゃんは無駄口をたたいています。

 リーゼちゃんの風魔法の余波でラーズ君の髪の毛が乱れるようでした。

 この階層は蝙蝠が多く出没します。

 延々と流れ作業で退治していますと、矢を射りますのがだれてきそうですね。

 腕も疲れてきましたよ。

 地面には蝙蝠が残しましたドロップアイテムがところ狭しと山になってきていました。

 どういう仕組みか判りませんが、迷宮で退治しました亡骸はドロップアイテムに変化します。

 不思議です。

 地上の魔物はドロップアイテムに変化してくれません。

 自ら解体しないといけないのです。

 一度賢者様なトール君に尋ねましたけど、理屈は難しくて理解力が足りませんでした。

 判り易い例えはこうです。

 なんでも、亡骸は魔素に分解され、迷宮の核(ダンジョンコア)に吸収されまして、余剰な魔力がアイテムになるそうです。

 判りますか?

 それだけ、判ればいいのです。

 迷宮の恩恵だと思うことにしました。

 迷宮の壁が発光していますのも、そう思うことにしておきます。

 灯りいらずです。


「終りが見えてきた」

「リーゼ、他に人の気配がありません。大技で掃討してください」

「了解。【竜巻(トルネード)】」


 魔法の効果範囲に入らないよう注意しながら退避です。

 牽制も忘れません。

 一塊の蝙蝠の群れが風魔法の【竜巻】に駆逐されていきます。

 ドロップアイテムも巻き上がっていきました。

 リーゼちゃん、ちょっと魔力込めすぎですよ。

 ですか、そのおかげで蝙蝠は全滅できました。

 トール君の口癖の、結果オーライです。


「ドロップアイテムは、牙と羽に、魔石ですね」

「牙と羽は冒険者ギルドに持ち込みます。魔石はポーション瓶の素材にすればいいです」

「ラーズに同意。ポーション瓶素材足りない」


 ポーション瓶作成はリーゼちゃんが担当しています。

 ガラス素材に砕いた魔石を混ぜこませまして、時間経過によります劣化を防いでいるのです。

 私達はトール君謹製の無限収納(インベントリ)がありますから、収納したアイテムの劣化は気にしてはいません。

 しかし、他の皆様用に如何に長持ちさせられますか、リーゼちゃんと私は日々研究を重ねています。


「セーラ。宝箱発見」

「罠がありますよ。毒矢と麻痺薬です」


 ドロップアイテムの山に宝箱が埋もれていました。

 宝箱も迷宮の謎ですね。

 一攫千金を狙います人を呼び込みます。

 大抵は貴重なアイテムが入っています毎に、罠が複雑化していきます。

 鑑定と解析能力は私が随一ですので、罠解除と鍵開けは私が担います。

 リーゼちゃんですと力業で宝箱毎破壊してしまいますし、不器用なラーズ君は繊細な作業にはむいていません。

 適材適所ですね。

 鍵開けのツールと解析能力で危なげなく、宝箱を開けました。

 中には銀色に輝きますメダルが入っていました。


「メダルが……」

「待ってください。まだ罠解除していませんよ」

「リーゼ。状態異常がかかり難い竜種とは言え、注意を怠らないでください」

「うぅ。ごめんなさい」


 罠解除していません宝箱につい手を伸ばしてしまいましたリーゼちゃんに注意しました。

 リーゼちゃんまだ危険です。

 危ないですから、近くにいます私達にも降りかかってきますよ。

 ラーズ君の指摘にリーゼちゃんは素直に謝りました。

 本性が竜なだけに人型を取りますリーゼちゃんの感覚は鈍い事が判明しています。

 調薬師の私がいますと油断して、度々罠にかかっていましても放置していた事がありました。

 本人は対して意識していませんでしたから、質が悪いです。

 それからは、ラーズ君と共にリーゼちゃんの状態異常には気をつけています。

 麻痺薬の罠解除をしまして、異常がないか確認しましてからメダルをとりだします。


「月のメダル。所持者の状態異常耐性を上げる効果、ですね」

「僕達には無縁な代物ですか」


 そうですね。

 状態異常耐性は三人とも高いですから、効果は期待しますほどありません。

 ラーズ君とリーゼちゃんは幻獣種の種族特性で、私は豊穣のお母さまが附与してくださいました固有技能(ユニークスキル)があります。


「ギルドに売却しますか?」

「倉庫行き?」

「工房で販売してもかまいませんか?」


 3人同時に意見が出ました。

 私達に必要がありませんが、状態異常耐性が附与されていますアイテムを欲しがる冒険者や、種族によりましては弱点を補いますから、需要はあるかと思われます。


「では、迷宮をでましたら再考するとしましょう。また、蝙蝠に相対するのは勘弁です。移動しましょう」

「はい。同意します」

「同じく」


 地下へ続きます階段は、この先です。

 攻略に戻ります。

 リーゼちゃんの気配察知と、ラーズ君の聴覚探知で魔物を先制攻撃しながら撃破していきます。

 体力温存、安全第一です。


「階段発見。冒険者も発見」

「馴染みのあります声がしますが、警戒は怠らないでください」

「わかりました」


 ここまで、他の冒険者に出会いませんでしたのは、ラーズ君の先導と幻惑で巧みに避けていました。

 クロス工房が休業していますので、工房印のポーション類が高騰してきています。

 転売目的でたかられますのをラーズ君には、注意喚起されています。

 実際に迷宮に入ります時に、目をつけられまして、迷宮の中で後をつけられました。

 直ぐに見失われましたが。

 顔馴染みの方の方が無理難題を言われますのは、圧倒的に多いですね。


「よう、風の天馬だ。ちょっくら、休憩中だ」

「クロス工房年少組です。地下4階はどんな塩梅ですか」

「出張販売してくれるなら、情報代はいらないぞ」


 風の天馬パーティは総勢6名獣人族で構成されています、Aランクパーティです。

 ミラルカ随一の迷宮探索者チームですね。

 冒険者ギルドで頂きました情報の情報源は彼等によりまして、もたらされたと言いましてもおかしくありません。

 クロス工房年少組と言いましたラーズ君に、笑って返します位には仲が良いです。


「残念です。出張販売ではなく、本日の僕等は冒険者です」

「そいつは、困ったな。では、忠告だ。地下4階は状態異常耐性が高くないとキツイぞ。毒持ちが多い」

「毒持ちですか。忠告、ありがとうございます」


 ペコリ、と頭を下げまして、横を通りすぎました。

 毒に対する準備はしてきています。

 解毒薬に効毒薬は迷宮探索には必需品です。

 竜種のリーゼちゃん専用も用意してきました。


「ねぇ。本当に困っているのよ。少しは融通してくれないの」

「止めろ、ティナ。お前達、気にせず行っていいぞ」

「何でよ。助け合いは冒険者の常じゃない。どうせ、後で助けを求めてくるから、先払いしていきなさいよ」


 初見の猫族の女性に呼び止められました。

 新人さんでしょうか。

 怪我を負っています。

 拝見しましたが、どれも浅手です。

 緊急性があるものは、ありません。

 他の方も極僅かなかすり傷と見受けられました。


「ティナ‼ リーダー命令に従えないのなら、パーティから抜けろ」

「なによ。みんなだって、ポーションの質が落ちて探索に影響が出てるって、言っていたじゃないの。何が悪いのよ」


 仲間割れは見えないところでお願いします。

 あと、苦情はグレゴリー氏に言ってください。

 工房の休業は氏の言葉が撤回されますか、商業ギルド長が何らかの行動をおこしますまで続きます。


「お前達、気にせず行っていいぞ。後日、謝罪に行く」

「いえ、先生にはポーションの件は伝えておきます。しかし、商業ギルド副ギルド長自らの発言には撤回されたとしましても、禍根は残ります。今後どうなりますかは、僕達にも判りません」


 暗にティナさんの発言がパーティ全体の言葉としまして受け止めました、と言っていますね。

 固唾を飲みましてやりとりを静観しておみえのパーティの皆さまは、ラーズ君の嫌味が伝わりましたようです。

 表情が硬くなってきています。

 工房が再開しますかどうかは、トール君にアッシュ君次第です。

 休業状態な今でさえ毎日グレゴリー氏が、ポーションを売れ、レシピを公開しろ、と日参してきています。

 扉越しに喚かれていまして、近所迷惑していますのが判らないらしいです。

 警備隊に毎回通報されましても、諦める様子がありません。


「ティナが、悪かったな。行ってくれ」

「はい。失礼します」


 リーダーさんの言葉に、階段を降りていきます。

 殿のリーゼちゃんは微かに威圧を発動させて、背後を警戒しています。

 問題児のティナさんが強襲しないか疑っているのですね。

 ティナさん。

 背後からの不意討ちは用を為さないですよ。


 カンッ。


「ティナ‼」


 軽めな音がしまして、何かが転がり落ちてきました。

 魔物誘発剤ですか。

 こんな逃げ道のない場所では、風の天馬パーティも危ないと思うのですけど。

 すかさずラーズ君が掴みとります。

 そのまま、上に投げ返しました。

 リーゼちゃんは風魔法を使用しまして誘発剤をパーティの周囲に漂わせます。

 因果応報です。

 一人の身勝手さが巻き起こしましたのですから、パーティ全体で購ってくださいませ。

 まぁ、迷宮の謎で階段は一種の安全地帯になっています。

 それほど、被害は少ないと思われます。

 悲鳴と怒号が聴こえてきましたが、無視しまして階段を降りていきます。


「前方、羽音が聴こえてきました。戦闘準備」

「了解」

「わかりました」


 私達の目にも人の頭位の大きさなビッグビーが数匹見えてきました。

 誘発剤に釣られて来ましたか。

 接近されます前に、難なく弓と風魔法で退治できました。

 ドロップアイテムは、針とハチミツです。

 やりました。

 ビッグビーのハチミツは甘くて栄養価が高く、お菓子やさんに高額で買い取って貰えます。

 私が常備しています魔力を込めました飴も作れます。

 ティナさん、様々です。

 ありがとうございます。

 もっと出てきてくださいな。

 そして、ハチミツを落としてくださいませ。

 意気揚々とお待ちしていますよ。


ブックマーク登録ありがとうございます。


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