閑話 聖女視点
水曜投稿です。
シルヴィータ編終了です。
伴いまして金曜日はお休みさせていただきます。
次回は来週月曜です。
なぜだろう。
何がよくなかったのだろう。
シルヴィータの国に来てからは、悪い事ばかりだ。
わたしの名前はアンジェリーナ・ディーナ・フローリカ。
エーデルトラウト帝国の伯爵家の次女にして、実りの女神様に選ばれた聖女よ。
わたしは優しいお兄様とお姉様に、躾は厳しくも子供達には甘いお父様とお母様に囲まれて育ったの。
わたしは所謂前世持ちで、異世界の日本人の女子高生だった記憶がある。
死因は思い出せないけど、女神様直々に願われてライトノベルにありがちな転生を果たしたの。
やったね。
女神様ありがとう。
優しい女神様は、この世界に生まれ直すにはわたしの魂は脆弱だからと、幾つかの加護と能力を与えてくれたわ。
始めの加護は在り来たりな言語理解と健康な身体、全属性な魔法。
それと、聖女の地位。
本当は神子にしたがっていた女神様だけど。
女神様のお姉さんに、神子はもういるから何人もいたらダメだと怒られたらしい。
別に聖女でもいいのではと思ったわ。
面と向かって言ったら、転生をできるかわからなかったので黙っていたけれど。
ただ、お姉さんと仲はよろしくないことがわかったわ。
なら、わたしの出番だ。
だって、聖女よ。
世界を救うのよね。
勇者や英雄と冒険したりして、魔王を倒すのよね。
聖女のわたしが神子以上に活躍すれば、溜飲が下がるのではないか。
女神様はわたしの提案に乗り気になってくれたわ。
どうしたら、お姉さんを出し抜き恥をかかせる事ができるのか。
ラノベの知識を生かした逆転劇を話してあげた。
女神様はまず手始めに神子にはない精霊術を附与してくれた。
神子はハーフエルフなのに精霊術が使えない欠陥品なんだって。
楽勝じゃない。
次に神子が持っている召喚術。
世界には召喚の神器が沢山遺跡に眠っている。
それで、幻獣と契約すればいいらしい。
なんだ、最初から召喚獣はくれないんだ。
ちょっと残念。
なんだか身体がふらついた。
附与の副作用⁉
暫くしたら、落ち着いたけど。
もしかして、危険な行為だったのかな。
ちょっと不安になりかけた。
女神様はやる気充分であれもこれも、と附与してくる。
どれだけ、コンプレックス抱えているんだろう。
最後にこれだけは無くてはならない、魔法を附与してもらった。
それは、魅了魔法。
異世界転生をするのなら、これがなくてはね。
女神様が用意してくれる新しい家族には、美形でお金持ちな家を頼んだ。
女神様は首をかしげていた。
だから、聖女の名声をあげるには、美貌は大事な事を説明したわ。
醜女な顔で貧乏な家庭だと、聖女と認識されなくて、選んだ女神様もお姉さんに馬鹿にされるよ。
教えたら、納得してくれたわ。
そうしてから、転生をした。
わたしの希望通りほぼ叶えられたわ。
貴族だけど、伯爵家なのが不満足だ。
もっと上の階級が良かったわ。
その分、両親は甘やかしてくれたからいいのだけど。
わたしが聖女だと公になったのは、5歳の洗礼の儀の時。
皇帝は歓喜してわたしを誕生したばかりの皇太子の婚約者に指名したのよ。
あり得ない。
普通は同年代か年上がセオリーじゃないの。
皇太子が成人されるまで、十数年かかるじゃない。
わたしは、20代のおばさんじゃない。
嫌だぁ。
いいもん。
わたしの魅了魔法でイケメン侍らかして、皇太子以上に偉い人を見つけるんだから。
そう決めた。
そうしたら、皇弟一家のお気に入りになったわ。
皇弟の息子は同じ年齢だから、お婿さん候補にいれてあげたの。
ばれたら皇帝に怒られるから、心の中にだけど。
わずらわしい皇妃教育の傍ら聖女の修行は辛い日々だったわ。
勿論、笑顔で乗り切ったわ。
帝国の未来はわたしが握っているからか、階級が上の令嬢が頭をさげる。
なんて、気分がいいんだろう。
嫌がらせをしてきた令嬢は、みんな皇帝に罰を受けた。
ざまぁ。
そんなこんなで、年月が過ぎると、聖女に正式に認定されたと同時に専属の騎士団ができた。
やったね。
夢のイケメンパラダイスができた。
嬉しい。
だって、イケメンを観賞するしか楽しみがないんだもの。
転生をしてわかった事は、日本食が無いことの絶望感。
お米らしき食材は有るのだけど、貴族は食べない平民食なんだもの。
調味料も醤油に味噌がない。
探せばあるかもだけど、どう説明すれば言い逃れできるかわからなかったので、保留しているの。
聖女が望んでいるから、では通らないし。
堅苦しい神殿は清貧が尊ばれる、だって。
信じられないことに、神殿の中では魔法がいっさい効かない。
お父様も無駄遣いは許してくれない。
この世界には異世界の日本人が、過去にはいたとの情報は見つけてある。
きっと、何処かには有るはず。
お母さんの料理が恋しい。
顔も思い出せないけど、料理だけは懐かしく思い出せる。
あら。
皇妃教育と聖女の修行に忙しい毎日を送っていたら、お姉様とお母様が屋敷にいない。
どうしたの、かしら。
お父様にきいたら、病気療養で領地にいるんだって。
さすがに、聖女のわたしでも病気は治せない。
わたしに移ったりしたら、いけないからだって。
ふーん。
後で手紙でも、出しておこうかな。
聖女の家族愛アピールになるよね。
けれど、手紙はだせなかったの。
突然、皇帝からシルヴィータの国に遊学に行け、と言われたわ。
シルヴィータは帝国と対立していたはず。
なんで、そんな場所に行かないと駄目なの。
神殿で女神様にきいたら、シルヴィータには空間属性持ちの召喚獣がいるんだって。
それなら、手に入れに行かないとね。
この世界の移動手段は馬車か徒歩しかない。
転移門は有るのだけど、使用には高額なお金がかかるから、聖女だからと言っても滅多に使えない。
召喚獣がいたら、領地のお母様のお見舞いに頻繁に行けるじゃないの。
是非ゲットしなくちゃあね。
そう思った。
なのに、現実はそう容易くいかなかった。
まず、何処に行くにも監視があった。
仲良くなったシルヴィータの殿下が気晴らしに呼んでくれた楽団も道化師も飽きた頃合いで、お兄様が遊学の本当の意味を教えてくれたの。
何でも、ミラルカの街には日本人がいるんだって。
本当⁉
会いたい。
会って日本食の事を聴かないと。
ミラルカってシルヴィータの国内にないけど、呼んでくれるですって。
協力⁉
何をすれば会えるの?
精霊をその球体に入って貰えばいいの?
お兄様の言われるまま、大地の精霊に頼んだわ。
どうするんだろう。
まっ、いいか。
精霊もわたしの役にたつのだから、張り切ってくれている。
後は待つだけ。
それはつまらないと言ったら、殿下の乳兄弟のお父様が領主のトリシアに観光に連れて行ってくれた。
あんまり賑やかさがない街だったけど、領主の息子が困っていたから精霊を解放してあげた。
精霊を束縛していたなんて、最低。
憤慨していたら、契約を申し込まれたの。
高位な水の精霊ゲット。
肝心な召喚獣は見つからないけどね。
これで、水不足は解消されて畑は豊作間違いないわね。
益々、聖女と女神様の名声をあげれるわ。
また離宮に籠る日々が続いて、観光したトリシアにダークエルフが現れたのだって。
ダークエルフは有害な存在だから、聖女の使命として討伐しなければ。
急いでトリシアに行かないと。
監視の目を掻い潜りトリシアに来たけどダークエルフはいなかった。
いたのはメーアエルフだと言う。
紛らわしい。
肌色が同じようなのに、違う種だから迷惑しちゃう。
領主に怒られたじゃないの。
何でわたしが怒られなくてはいけないの。
でも、日本人には会えた。
完全に外見は黒髪黒眼の日本人だ。
本人は否定していたから、日本人だってこと隠していたのかな。
だったら、悪いことしたしたかしら。
でも、聖女に協力できるのだから、いいじゃない。
なのに、なのに。
あの日本人。
わたしに牙を剥いた。
魅了が効かない⁉
賢者ですって⁉
知らない。
お兄様は知っていたみたいだけど、賢者の勘気に触れたから魔法を封じこめられた上に軟禁して、尋問ですって。
わたしは聖女なのに、こんな扱い赦されないんだから。
折角わたしの騎士団にいれてあげたのに、殿下が裏切った。
赦せない。
女神様の神罰が降りるのを願うから。
シルヴィータなんて国滅んじゃえ。
こんな国に遊学させた皇帝も皇弟に代替わりさせてあげるわ。
聖女のわたしに出来ない事はないんだから。
聖女を蔑ろにするなんて。
みぃんな、後悔すればいい。
ブックマーク登録ありがとうございます。
聖女のいびつさが表現できているか、うまく伝わっていますか、どうでしょう。




