第25話
水曜投稿です。
「セーラ、リーゼ。無事か。何処にも怪我はないか?」
おじいさんに別れを告げまして、テルハの冒険者ギルドをお暇しました。
アッシュ君の転移でアッと言う間にミラルカに戻ってきました。
アッシュ君様々です。
先に転移していましたラーズ君とトール君にジークさんが転移室で出迎えてくれました。
「ただいま帰りました。ラーズ君、トール君、ジークさんお迎えありがとうございます」
「これくらいで、礼はいらない。大変な目に合ったな」
ジークさんは、リーゼちゃんの叔父様で風属性の竜です。
風の赴くまま世界中を旅するのが好きな方なので、きっとトール君に呼び出されたに違いありません。
召喚能力はトール君にはありませんから、緊急連絡用の魔導具でと言う意味です。
「俺は無視かい」
「トール君。アッシュ君がいますので、私とリーゼちゃんが無事なのは当然ですよ」
「それでも、心配なのは仕方がない」
「お喋りは一端中止してくれ。この転移室は一度閉じる」
アッシュ君の言葉に緊張感が漂いました。
何やら不穏な気配がします。
「追跡か?」
「違うが、近いな」
追跡魔法を行使しました魔力の流れは感じませんでしたけれども、アッシュ君に部屋から出ないよう指示されました。
トール君も魔力を高めていきます。
私は壁際に移動します。
転移室は其れほど狭くありませんが、6人もいれば広くは思いません。
リーゼちゃんとラーズ君の背に庇われます。
その前にジークさんとトール君にアッシュ君ですから、転移陣が見えません。
皆さん、私を隠していますね。
フシャァァァ。
肩の上の猫君が威嚇の声をあげました。
毛並みが逆立っています。
「ちっ、千里眼かよ。誰の仕業だ」
ぞわっと、悪寒がしました。
聖女さんです。
この気持ち悪い絡み付く魔力は彼女です。
「トール君、聖女さんの魔力です」
「あの、小娘か。なら、狙いは俺だな」
「執着される意味、判るか?」
「知らん。が、ニホンジンに拘っていたな。それかな」
確かに、拘っていましたね。
どんな理由がありますのでしょう。
前にもお話ししましたトール君のお父様は、ニホンと言う異世界からの召喚者です。
勇者様とは同郷な事は知られています。
勇者教では、魔族に寝返りました罪人扱いされています。
だと言いますのに、なにかと免罪符を盾にしまして、お父様の知恵を受け継ぎましたトール君を、手にいれようと画策しているのです。
トール君は視野にもいれていませんけれど。
煩わしさは感じてはいるみたいで、希に嫌がらせをしに行っているみたいです。
あれ。
聖女さんご一行は魔法無視の部屋に軟禁されたのではなかったですか。
聖女さん自身はトール君に魔法封じられましたよね。
もう、効力がなくなりましたか。
「おかしいな。数日は魔法封じが効いているのに、何故だ」
「法術か。あり得るな」
アッシュ君。
一人納得していませんで、教えてください。
使い魔さんからの情報提供ですね。
「トール。あの愚息は聖女を盲信し過ぎだったらしい。地の利と身分を振りかざして、一行を連れてシルヴィータを出奔したぞ。行き先は帝国だな。実りの領域に入ったので、これ以上は追えない」
「だから、気をつけて隔離しろと言ったのになぁ」
「気持ち悪い魔力だ。姪達に近付けたくない。潰していいか?」
「いや。おれが潰す」
皆さんの背中越しに感じます魔力は、依然として気味が悪い空気を醸し出しています。
まるで、瘴気を発生した魔素溜まりの様です。
ジークさんが率先しまして魔法を還そうとしてくれますが、アッシュ君が腕を一振りしました。
アッシュ君の魔力が室内に満ちていきます。
気味が悪い魔力を払拭していきました。
清浄な森林の空気です。
思わず深呼吸してしまいました。
みぃ~あ。
強張っていました猫君も、落ち着きを取り戻しました。
頬に少し艶のない毛並みが擦りつけてきます。
そうでした、お風呂に入らなければいけません。
「アッシュ君。聖女さんの魔力は駆逐しましたのなら、お風呂に入りたいと思います」
「セーラに賛成。清めたい」
「いいぞ。ここの後始末はおれ達がしておく」
念の為にアッシュ君に【清潔】を掛けてもらいます。
お風呂発言に猫君が逃げようとしましたが逃がしませんよ。
ぜひとも、魅惑なモフモフにしてあげますから、我慢してくださいね。
「そういや、その猫はどっから拾って来たんだ。ん? 好運猫だぁ。親猫とはぐれたのか」
「違います。我が家の末弟になる、ジェス君です」
にゃあ。
いつまでも、猫君では可笑しいですから、今から名前呼びです。
元気にお返事できました。
「ジェス、諦める。セーラはお風呂好き。そして、モフモフ好き」
なぅ。
暴れていましたジェス君が小さく鳴きます。
お風呂といいますか、泳ぐ事が好きなのですが。
浮島には水場に泉がありますから、薬草園の手入れ後にはいつも泳いでいます。
「末弟⁉ どういう意味だ」
「ジェスは神獣種だ。時空を司る神族の眷族だが、器が損なわれて精神が彷徨っていた。そこへ、ある男神の祠に封印されていた好運猫の生が終り、封印が解けかかった影響で替わりの魔力源に、器を持たないジェスが絡み捕らわれ好運猫の器に定着された」
成る程です。
そんな経緯がありましたか。
ジェス君が神獣種ですのに、幻獣種と鑑定にでますのは、そう言う事情があったのですね。
器の情報と精神の情報があってないはずです。
「へぇ、んでセーラが保護したのか。その男神とやらは、納得済みなのか?」
「納得済みの前に、母神の大地に罰を降され謹慎中だな。救援の要請は大地からきた。おれが見に行った時は怖がらせたみたいでな。出ようとしなくて困った。折を見て何度か封印を解こうとしてみたが、嫌がるんだ」
外を怖がりましたのは理由がありそうです。
私が封印を解きましたときには、然して抵抗はありませんでした。
当初は弱り果てていたからと見受けられました。
しかし、リーゼちゃんが仰るには、私の魔力が心地良いとの情報でした。
「器に引き摺られて衰弱する前には、解放してやりたくてな。おれが怖いのならば、セーラに任せてみるかと思案していた。セーラの魔力波形はどちらかと言うと神族寄りだから、魔族のおれよりかは馴染みがあると、判断した結果がいまに至る」
「親はどうなった。神獣の親の意見はどうした」
「おれに保護を頼まれた時には、親は亡く時空神も代替わり真っ最中だった」
「わかった! 勇者関連の被害者か。親父が、捜して見つける事ができなかった子供」
「そうだ。未来に翔ばされていたみたいだ」
「なら、俺には異論はない」
アッシュ君とトール君にしか、わからない会話に入っていけません。
私達はおいてけぼりです。
疎外感満載です。
解りますのは、ジェス君が受けいれられました事だけです。
終わりのアッシュ君の説明はトール君むけです。
「アッシュ、トール。子供たちは訳がわからんぞ」
ジークさんが嗜めてくれました。
年少組は黙し成り行きを見守っています。
猫君は暴れてぐったりとしています。
お風呂の前にご飯が先ですかね。
時刻は夕方になろうとしています。
「あぁ、悪い。楽しい話じゃないんで、説明はしてなかったな。親父が召喚された時期は神族も派閥があり、権力闘争紛いなことをしていた。勇者側と魔王側とに別れて代理戦争をやらかしやがった」
「魔族にとっては迷惑極まりない話だな」
「竜種も迷惑を被ったぞ。勇者の騎乗として、使役されたな。以来、竜の卵を狙う人族が増えた」
竜を使役ですか。
飛竜と間違えられたのでしょうか。
竜種は飛竜種と違いまして、孤高な存在です。
幻獣種最強な竜種は、繁殖期を除きまして群れるのを嫌います。
大陸には竜種の生息地と有名な、飛竜を駆る竜騎士の竜王国があります。
実はリーゼちゃんの両親はその地で子育てされていまして災難に合いました。
竜王国にとりまして竜を狩られた事実は、面目を潰されたにも等しく、リーゼちゃんを育てて汚名返上としたかったみたいです。
ジークさんは信用出来ずにトール君を頼りましたけど。
「当時は地上の全ての種族が巻き込まれ、数多の種が絶滅したな。世界神の激怒で事は収まりついたが、神々も随分と粛清された。一番被害を被ったのは、海の妖精族だな。肌色の濃いエルフは闇の妖精族と一くくりされて、勇者教に宗敵扱いだ」
「未だに、それが撤回できないのが痛いな」
「我々竜種の闇属性の暗竜もかなりの犠牲がでた。どうして、人族は何事か起きると闇属性持ちを、躍起になり捜しだしては公衆の面前で晒し者にしてしまうのか」
「それが、力無き者の習性だな。人族は少しでも異端を感じると排除しようと動く」
言いたい事はわかります。
集団心理ですね。
あとは、無い物強請りです。
特権階級にいる方に成る程それは顕著に表れます。
人族の歴史は奪い合いから始まりました。
元々私達が住まうこの大陸には、人族が生息できます環境ではありませんでした。
流民の人族が流れ着いた地で満足していましたら、良かったのではないでしょうか。
より良い土地を目指しては都度に争い、他種族の富を奪いました。
何故に排除せず容認してしまいましたのかは、神々のご意志がありましたからとしか言えません。
トール君が教えてくださいました、代理戦争と関わりあいがありそうです。
信仰を活力源にします神族らしいお話しですね。
私達海の妖精族や闇属性持ちには、種が根絶やしにされ兼ねませんから大変な迷惑です。
滅ぶのは自分たちだけにして下さい。
その際には、道連れだけはやめて下さい。
声を大にして訴えたいと思いました。
みぃ~あ。
私の感情を読み取りましたジェス君が、腕をつたい歩きしまして肩の上に乗りました。
頭だけではなく、全身を擦りつけてきます。
慰めてくれるのですね。
ありがとうございます。
では、お風呂にいきましょう。
その後はブラッシングです。
毛並みに艶とモフモフを取り戻しましょうね。
なぁ。
逃げ出さないしっかりジェス君を確保しまして、リーゼちゃんとお風呂場に突撃です。
背後で胸を撫で下ろしていますラーズ君。
最近ラーズ君をモフモフしていません。
私は忘れていませんよ。
ジェス君の次はラーズ君ですからね。
末弟が終わりましたらお兄さんの番ですよ。
待っていますから、入って来て下さいね。
【清潔】でごまかしは禁止です。
行水ではなく、ちゃんと湯船に浸かってくださいね。
確認しますからね。
ブックマーク登録ありがとうございます。
後数話でシルヴィータ編は終わりです。




