第24話
月曜投稿です。
アッシュ君のお蔭で身の危険を予感させられました。
映像は殿下さんの不敵な笑みを写して終わりました。
嫌ですね。
神子誘拐を目論見ました王族の血筋だけあります。
「あいつら、潰す」
リーゼちゃんの肌に竜燐が広がっていきます。
感情が制御できなくなりました状態に陥りかけていました。
このまま放置しますと、竜形態で領主様のお屋敷に突撃してしまうでしょう。
アッシュ君は泰然と構えています。
リーゼちゃんが大暴れしてしまいましたら、神子が私だと宣伝したも同じだと思いますけど。
「怒るのは解るけどな。奴等への報復には、無視が一番効果があるぞ。ミラルカに来てもトールは相手にしないから、勝手に自滅してくれるぞ」
「儂らにとっては一大事だがな」
いつの時代も王族や貴族の横暴に苦労しますのは、搾取されます平民です
「なにを言うか。今の王族を選んだのは、シルヴィータの住人だ」
「どういう意味ですか?」
「よくある話だ。今玉座にいる人物は最も王位から遠い前王の甥でな。優秀な後継者が流行り病で亡くなり、民衆受けの良い公爵家に王位が回ってきたのさ」
流行り病ですか。
何だか裏がありそうです。
アッシュ君がわざわざ教えてくれようとしますのは、どのお話も黒幕さんが暗躍している事が多いのです。
今回の茶番劇もそうですね。
「実際はどうだかな。貴族の言いなりになる傀儡欲しさに毒殺された、との噂が一時期あったな。あの殿下は旧王家の出で旧王家派の筆頭だ。トリシア領主も旧王家派。神子誘拐を実施したのは新王家派。両派の権力争いに神子が狙われた。いい迷惑だ」
「アッシュ兄さん‼」
「儂は何も聴いとらん。歳のせいか耳が遠いのでな」
おじいさんの存在を忘れていました。
完全に気づかれていますよ。
アッシュ君と親しい人ですから、ばれてしまいましても無闇に言い触らさないと思います。
まぁ、地獄耳なアッシュ君の事です。
自ら火消しに走るでしょう。
奇妙な噂が独り歩きしているみたいですし、ミラルカに戻りましたら暫く浮島にでも籠るとしましょう。
薬草園の手入れはトール君製作の魔導人形が、お手伝いしてくれています。
手入れが大変な植物は栽培していませんので、数日間私がお世話しなくても大丈夫です。
希少な薬草も手に入りましたから、心置きなく研究に費やせます。
寝食忘れたりはしませんよ。
トール君に怒られまして、研究禁止令等だされますのは、一度で懲りました。
「セーラ。何か悪いこと考えてる?」
「いいえ。殿下さんの野望に応える義務はありませんから、ミラルカに戻りましたら研究に費やそうかと思いましただけです」
「ん。店番は任せて。先生と一緒に追い払う」
「人前に出るのは極力避けた方が良かろう」
おじいさん、しっかり聴こえてますよ。
リーゼちゃん頼りにしてます。
きっと、ラーズ君も加わりますね。
それ以前に工房兼お店にたどり着けないと思います。
工房の外観は何処にでもあります普通のお店ですが、専ら常連のお客さまは私達年少組がいない時間帯には訪れません。
はい、後見人様がたは所謂天才はなんとかと紙一重な職人気質をお持ちです。
愛着のある品々を販売したがりませんし、対人恐怖症で会話が噛み合わない状態が続きまして倒れてしまったり、なにかしら問題行動が見受けられます。
つまり、私達3人が居ませんと開店していないのです。
そしてです。
工房には冒険者ギルドか商業ギルドの紹介状がありませんと、新規のお客さまは入店できない仕組みになっております。
珠にですが、どうして工房兼お店をやろうとしましたのか、じっくり聞き出したい病に駈られます。
明確な説明は無理だと思いますけど。
トール君達の事ですから、なんとなく開業したのではと思っています。
なぁ~う。
おや。
猫君お目覚めです。
「ジェスか」
膝上のポーチから、猫君が外に出てきました。
アッシュ君がすかさず手の平に猫君を乗せ、目線の高さに持ち上げます。
寝起きな猫君は固まっています。
「はじめまして、だな。ようやく、外の世界に出てきてくれたな。セーラの傍らは居心地が良いだろ。リーゼやラーズもセーラと共にジェスの良き兄妹となってくれるぞ」
みゃう。
アッシュ君を認識しました猫君は嬉し気に鳴きまして、撫でる手に頭を擦りつけました。
やはり、知己を得ていました。
お家に連れて帰りましても、トール君の反対はなさそうです。
「末っ子?」
「そうだ。ジェスの詳しい経緯はミラルカに戻ったらだ」
「儂には、只の仔猫にしか見えんが。惑いの森と関係がある件の幸運猫の子かのぅ」
惑いの森とは、祠のありました森の事ですね。
精霊様が【迷路】の精霊魔法を行使していました由来からきてますか。
「欲の厚い聖女側が欲しがった御神体ははじめからなく、あるのは忘れ去られた祠跡が残るのみ。聖女から情報を得た殿下とやらが捜索に訪れたら、案内してやるといいさ」
何も得る物がない。
アッシュ君はそう仰有いますが、結界維持に魔導具を残してきてしまいました。
祠を破壊されましたら、見つけられてしまうでしょう。
まぁ、汎用品ですから私まで辿りつけないと思います。
その魔導具が御神体だと間違えられます可能性は低いですから。
「案内できるのか。惑いの森には昨日にも彷徨い憔悴した騎士が発見された場所だぞ」
「ジェスが保護できた事で精霊も其々の場に戻った。惑いの森が開放されたから、騎士は見つけられたんだ。精霊の恵みが無くなった森は荒れるだけだな」
豊穣のお母様の神託もありますし、打開策を見いださなければ土地が荒れていきますのは確実ですね。
「儂らに未来は無さそうに言ってくれるな。シルヴィータは周辺諸国の食を支えている農業大国だぞ。一国だけの問題ではないのだからな」
「実りの聖女と豊穣の神子を天秤にかけたのは新旧の王家だ。神々は慈悲深い面だけでなく、荒ぶる一面もある。高い代償を払ったな」
「所詮は他人事か。飢えに苦しむ民衆がどうなろうと、英雄殿には関係がないか」
「だから、おれに言われても困る。当事者に言ってくれ」
「兄さん⁉」
「アッシュ君⁉」
「お前さんの言うことは、さっぱり分からん」
おじいさんに同意します。
私にもわかりません。
アッシュ君は、神子に豊穣のお母様を取り成せと言いたいのでしょうか。
私は絶対にしないと誓いましたよ。
だって、本末転倒ですよ。
神子がシルヴィータの未来を憂いて出奔した事実はありませんから。
それは、シルヴィータに買収されました神殿の意図です。
そこに私の意思はありません。
「あぁ、そうか。あいつはまだ表にででなかったな」
「誰の事だ。お前さんの秘密主義は今はいらん」
「大地母神の加護持ちな旧王家の最期な一人。他国に留学して難を逃れた前王の三男」
「臣籍に降った方の事か」
あら。
加護持ちの方がお見えなのですね。
大地母神様の加護は王家に与えられます。
新王家に与えられていませんのは、課題や試煉を乗り越えていないからです。
今回の一件は大地母神様の新王家への試煉に当てはまるのではと私は思いました。
ですから、横槍になります行為は控えたいのです。
「成る程。だから、あの方の領地は不作とは縁がなかったのか。これは、殿下が焦る訳だ」
「殿下さんと、その方はなにかしら因縁でもあるのです?」
「あぁ、シルヴィータの王位継承には面白い風習があってな。ある植物が欠かせないんだ。あの殿下は栽培に失敗して、継承権が下位に落ちたんだ」
「代わりに神子や聖女にさせようとした」
「正解だ。リーゼ」
リーゼちゃんの頭を撫でるアッシュ君です。
猫君はアッシュ君の膝上で大あくびをしています。
まだおねむでしょうか。
「王位がまた旧王家に戻るも、新王家が続くのも、これからの選択次第だな」
「どちらにしても、騒動は起きるというのか」
おじいさんが溜め息をこぼされます。
シルヴィータが帝国の属国になりますか、岐路に立たされていますこの状況に、冒険者ギルドとしましては、内政干渉になる行為に繋りますから、アッシュ君がもたらしました情報は外に流せません。
またアッシュ君も赦さないと思います。
しかしですが、おじいさんはシルヴィータの住人です。
農民の皆様は先祖代々の土地には愛着がありますから、移住には余程の事がない限り消極的ですよね。
私にできることはなんでしょう。
神子の役割は無しの方向で考えますと、できることは薬品類を納品する位しか思い付きません。
あとは、緊急依頼に対応する事ですけど、容姿が邪魔する可能性がありますね。
争乱時に闇の妖精族と間違えられますのは、あり得そうです。
そうしますと、薬品も毒だと疑われてしまいますか。
どうしましょう。
できることはありません。
「どうした?」
思わずアッシュ君を凝視してしまいました。
「私が手助けできることはないなぁ、と自覚しました」
「止めておけ。異種族の権力争いに加担する気はトールにもないし、帝国につけこまれる種にしかならんだろう」
「私の容姿の問題ですね」
「そうだ、下手したら闇の妖精族が暗躍したと、シルヴィータにも断罪されかねん。暫くは外出禁止だからな」
「……はい、わかりました」
「済まんなぁ。エルフの嬢さん。儂らを心配してくれたようだがな、嬢さんはなぁんも悪くはないだろう。罪悪感を持たんで善いぞ」
おじいさんに言われてしまいました。
罪悪感なのでしょうか。
もやもやとした気分があります。
「セーラは、弱いものいじめが嫌い」
「リーゼちゃん?」
「王候貴族がどうなろうと構わない。けど、犠牲になる弱者が気になって仕方がない。セーラの一族を思い出してしまうから」
リーゼちゃんの言う通りですね。
理不尽に奪われました一族を重ねてしまったみたいです。
なぁ~う。
猫君が慰めてくれますのか、私の肩に飛び乗り頬を舐めてくれました。
リーゼちゃんに抱きしめられます。
「セーラが望むのなら政権交代の手助けする。トリシアのヤツじゃない、旧王家派のヤツに王位を継承させる。そうすれば、シルヴィータは安泰」
「それは、違う気がします」
「なら、できることは1つある。お母さまと話しすればいい。セーラがシルヴィータで感じた事、見聞きした事話してみればいい」
豊穣のお母さまと、お話し。
そうですね。
トリシアには、悪い人も善い人もいました。
お宿の従業員には差別されましたが、市場の女将さん方はみなさん気にしないでくださいました。
随分とおまけしてくれました。
そんな優しい人の日常か崩壊してしまうのを私は見たくないのですね。
リーゼちゃん。
教えてくださりありがとうございます。
私は自分を見失っていました。
神子だから、と地位に固執していたのは私自身でした。
私は私らしくあればいいのでした。
矛盾してしまう思考に蓋をしてしまっていました。
お母さま。
沢山報告したいことがあります。
一杯お話ししましょう。




