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第13話

 マギーがミラルカに帰還したのは、アッシュ君が神国に同行して行ってから半月後でした。

 私は帰りの遅いマギーを心配していたのですが、事情を知るジェス君とエフィちゃんから危険はないと毎日教えてはくれていました。

 けれども、召喚契約の繋がりでさえ拒絶する何かに遮られていては、心配しないではいられませんでした。


「お姉様、ご心配おかけして申し訳ございませんでした。豊穣神様の神域にて大地母神様から承りました特命を完遂致しましたご報告を致しておりました」

「豊穣のお母様の神域ですか。なら、神域外との時間経過によるズレのせいで、帰還が遅くなっただけなのですね。マギーが無事で良かったです」


 マギーの説明によりますと、特命とは神国に聖遺骸として安置されていた前世の私の身体の奪還だそうでした。

 前世の私も神子でありましたから、遺骸となっても神の祝福が残留したままであり、神国に張り巡らされていた結界の要てして利用されていたのでした。

 ですが、神国の神皇が代を重ねていくにつれて、前世の私の遺骸の特殊性が失伝され、五代前の神皇の時代から、遺骸を利用した人為的な神子の誕生の道具と化していっていたそうです。

 この時点で、大地母神様や豊穣のお母様達大地に属する神々は、神国を身限り神罰を降して遺骸を取り戻そうと計画されていたのだとか。

 世界神様も了承し、神国を守護する神々に協力を指示されていました。

 ですが、神々も一枚岩ではなく、力ある上位神は神国から得られる信仰心を失いたくなく、あまり協力的ではなかったそうです。

 また、前世の私に固執したアンゲメサールの怨念に近い執念によって、前世の私の遺骸は神々すらも安易に手が出せない手法で隠されていました。

 それは、最凶の能力を有する神魔のアッシュ君ですら、遺骸が安置された場に侵入すらできない神力や魔力を無効化する入念と徹底ぶりな、アンゲメサールの独占欲の表された隠匿と秘匿を重ねた手法だったそうです。

 ただ、代替わりするにつれて、聖遺骸が利用されていきましたのも、アンゲメサールの独善的な情報秘匿のせいで結界の要であることが失伝されたのと、神国が帝国と並ぶ大陸の盟主たらんとし、優位性を得る為に神子を人為的に誕生させようてして、手頃な利用価値ある遺骸として暴挙に出てしまったのです。

 こうした暴挙が決め手となり、世界神様が上位神々から権能を剥奪するとまでお怒りになられて、漸く神国への神罰執行を上位神々はお認めになる結果となったのが、この度の騒動となった訳なのでした。

 上位神々の守護が失われ、大地母神様達の神罰が降り、容易に神国へ侵入したアッシュ君とマギーが遺骸奪還を果たし、豊穣のお母様の元へ遺骸をお返しに行ったという流れになるわけです。

 けれども、利用された遺骸の全てが回収できてはない事実も判明しましたので、アッシュ君は残された遺骸の欠片の再調査へと駆り出されてしまい、ミラルカへの帰還が叶わないでいます。

 前世の私の遺骸の奪還は、マギーだけでなくアッシュ君にも課せられていたのを初めて知りました。

 多分ですが、アッシュ君が魔素溜まりと瘴気浄化巡りも、遺骸奪還の名目が含まれていたのですね。

 私がもう少し成長していたたら、前世の自分の遺骸奪還の手助けできたのではないかと悔やまれます。


「お姉様?」

「マギー。前世の私の遺骸を奪還しようとしてくださっていて、ありがとうございます。ですが、私ももう少し成長していたらお手伝いとかできましたのに、と思いましたのです」

 〔それは、無理だと思うよ〕

 〔でしゅの~。セーラしゃまが、自分で自分のお身体を捜索したら、大変な事態になりましゅの~〕


 マギーに思っていた事を話ましたら、ジェス君とエフィちゃんから駄目だしされました。

 マギーも頷いてます。

 ラーズ君とリーゼちゃんは、私の意見に賛同していたようで首を傾げています。


「セーラの前世の遺骸なのですから、セーラが捜索した方が簡単に見つかるのでは?」

「ラーズ、同意。セーラ、視る、特化。発見、早い」

 〔確かに、セーラちゃんは視ることに特化した神子だけどね。この場合、悪い方向になるよ〕

 〔でしゅの~。セーラしゃまは、今世でも神子でしゅから~。遺骸の欠片が、セーラしゃまの神子のお力の影響受けて、暴走しちゃいましゅの~〕

「ジェスさんとエフィさんのお言葉どおりかと。お姉様は魔力を魔法行使できない性質ですが、無意識に調薬時に素材に等に魔力を込める付与をされておりますし。召喚契約した(わたし)達に魔力を譲渡されております。また、余剰魔力で持って、大気に含まれている魔素を瘴気化させない中和と浄化されてます。その余剰魔力に触れた遺骸の欠片が変質して、取り込んだ者を異物と認識して体内で暴走した挙げ句、人ならざる存在に変容させかねません」


 ジェス君達が言いたいのは、マギーが封印していたあの巨人の魔物を思いださせます。

 元々、マギーが封印していたのは、前世の遺骸の心臓を呑み込まされた神国の聖職者。

 心臓という魔力が豊富に内在する欠片であったが為に、その聖職者には適合されなくて人ならざる存在に変容してしまい、肉体を維持できなくなり魔力を有する人や魔物といったモノを常に食する悪しき存在と成り果て、もて余した神国を守護する神々がマギーに押し付けるようにして封印させた。

 この時点では、悪しき存在は巨人の姿ではなく、まだかろうじて平均的な成人男性の姿であったらしく。

 私が近くに行けば行くほど、変容していきついには巨人の姿になったのだと、マギーは教えてくれました。

 ああ、そうなると私はあまり遺骸の欠片保持者と接触しない方がよいのですね。


「ですが、ミラルカに侵入し、マギーが捕らえた諜報員は変容してなかったでしたが」

「ん。同意」

「あれは外部からの魔力探査や感知系の魔力を受け付けない諜報員の調教を受けていたことと、遺骸の欠片との適合も良かったことと、その欠片も小さなモノでしたから、影響を受けなかっただけです」

 〔アッシュ君が、セーラちゃんの魔力を遮断していたのもあるよ〕

 〔エフィたちもセーラしゃまの魔力を、魔石に代えてましたの~〕


 成る程です。

 アッシュ君は、神国からの諜報員が遺骸の欠片保持者である可能性を想定して、対策されていたのですが。

 当事者の私に知らせないようにしていただなんて、何で私は気付かないでいたのでしょう。

 落ち込みたくなります。


「こーら、お前達。セーラには話すなって、言ったはずだがな」

「トール君。トール君も、知っていたのです?」

「ああ、まあなぁ」


 ミラルカでの神国繋がりの教会損害事態は終息し、トール君も工房へ戻ってきていました。

 幸い人的被害は軽微でありましたから、教会跡地を更地にする際に貯めこまれていた教会の財を発掘後、被害度に応じて分配されました。

 ミラルカへの侵攻してきていた神兵団も、神国の本殿倒壊の一報を受け、飛び地のハーゲンに駐留したままでいます。

 アッシュ君ほどではないですが、トール君も小飼の情報屋さんや諜報員に調査させ、駐留している神兵団が神国へ帰還準備に入ったのを把握しています。

 ですが、神兵団のある好戦的な一派がいまして、使命は遵守しなくてはならないと頑なに、神子確保を諦めてはいないらしいです。

 まだまだ、私の単独行動は許されず、警戒心も下げられていないのが現状です。

 好戦的な一派は、最凶の名を戴くアッシュ君が不在であるのをどうしてか認識していて、今が好機であると喧伝しているとかです。

 トール君は、煩わし気にジークさんとリーゼちゃんに竜の本性で暴れてくるかと、囁いてました。

 無論、リーゼちゃんは乗り気でしたし、ジークさんも神兵団だけでなく神国でも暴れてくる必要があると返答してしまい、ラーズ君も付き合うと申し出たせいもあり、トール君は言い過ぎたと反省してましたけど。

 リーゼちゃんとラーズ君までミラルカを離れたら、私の護りが手薄になると説得しなおす羽目になったトール君でした。

 本来なら一番安全な避難先は、豊穣のお母様の神域でしたけど。

 豊穣のお母様達も暗躍されていたので、神域では私一人取り残されていたかもしれなかったのですよね。

 何しろ、私は豊穣のお母様の眷属の方とは相性悪いですし。

 マギーの話だと、前世の遺骸の側にいてはいけないみたいですし。

 神域には、ラーズ君とリーゼちゃんは入れないですし。

 ジェス君とエフィちゃんなら、あるいは入れそうですが。

 おとなしく、ミラルカで護られていることが最善ですね。

 でもです。

 私には秘密の対策は、除け者みたいで嫌ですよ。


「あのなぁ。そんなに、恨みがましい視線で咎めるなよ。マグノリアが言っただろう? セーラの余剰魔力が、瘴気を中和したり浄化したりしているってのを」

「はい、聞きました」

「その無意識な浄化も、セーラの精神状態が不安や負の感情で揺らいでいたら、逆に作用するんだぞ。だから、セーラの感情を抑制させない為に、俺達はセーラが自然体でいられる環境を維持し、見守ることにしてんだ」


 あっ、そうですね。

 無意識に中和や浄化しているなら、逆に憎しみといった感情に支配された私が、瘴気を増幅してしまうのもできてしまえるということになるのですよね。

 そうなってしまった場合、私は罪の意識に耐えられず自滅を願ってしまうのも辞さないですから。

 トール君とアッシュ君は、万が一にもそうならない心配りしてくださっていたのですか。

 うう。

 きっと、豊穣のお母様も多大な配慮してくださっているのですね。

 改めて、神子の役割りの重責を認識させられました。

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