第19話
水曜投稿です。
なんとか書けました。
ブックマーク登録ありがとうございます。
「調査と討伐が終わった。何故に帰れない」
「それは、領主様に言って下さい。苦情は僕達の情報を流したエディ氏と隊長さんにお願いします」
そうなんです。
あの迂闊な隊長さんは、トリシアの領主様の縁戚なことが判明しました。
転移の門を使用します許可を掛け合ってくださりまして、領主様に私達が賢者様のお弟子だと喋り、異変の解決に尽力したと報告したのです。
魔素溜りはまだ解決していませんよ。
水の汚染は続いていますから、早く浄化してあげてください。
「残念ながら浄化できる神官がいない。賢者殿の弟子なら、魔素溜りぐらい浄化できて当然だ」
何て無茶振りでしょうか。
久方ぶりに話が通じないお馬鹿さんにあいました。
邪竜討伐できる冒険者だけではなく、浄化できる神官もいないとは、トリシアの街の守護はどうなっているのでしょうか。
シルヴィータ全域で人手不足なのですか。
王都に人手を集めまして何を企んでいるのか少し気になりました。
聖女さんが王都にはいらっしゃいます。
彼女に関連性があるとは思いませんが、神子捜索ならばトリシアに人員を増やすと思われます。
これから、増えていくのでしょうか。
「何をしている。さっさと行かないか」
先ほどから煩いですね。
領主様の補佐を務めていると自己紹介した何某さんが、命令口調で指示してきます。
ラーズ君とリーゼちゃんは完全に無視しています。
私達3人は許可がおりますのを、冒険者ギルドの一室で待機していました。
接待係になってしまいましたエディ氏が買い求めて来た、お茶と軽食に舌鼓を打っていました処に、またもや乗り込まれたのです。
今度のお供はキャリーさんでした。
「貴方達エディさんより優秀なんでしょう。だったら、中途半端な調査で終わらせないで最後まで依頼をこなしなさい」
こちらも命令口調です。
エディ氏の仇討ですか、本人は既に牙が抜かれていますけど。
それが、気に入らないのでしょうか。
「勘違いしないでください。ご依頼は水源地の調査と邪竜討伐です。魔素溜りの浄化は神殿の領分です」
「だから何だ。お前達ができないなら、賢者殿を呼んで浄化したらいい」
それが、狙いですね。
エディ氏が見えない隙をついて突撃してきたのも納得です。
弟子の私達に無理難題をふっかけて、天人族のトール君に浄化してもらう企みですか。
でも、残念ながらトール君は浄化が苦手なのですよ。
リーゼちゃんと同じで繊細な魔力操作が出来ない天人族なのです。
鍛冶や魔導具の装飾には、細やかな作業が出来ますのに不思議です。
「貴方方は大バカですか。賢者様に浄化等頼みましたら、水源地そのものまで消し飛びますよ。威力が半端ない方ですから、どんなに切羽詰まった人でも頼みません」
「何だと。亜人の癖に使えない。まぁ、いい。そこのエルフの娘にやらせろ。エルフなら精霊使いだろう。契約精霊を呼んで守護につかせろ」
「どうして、私達が貴方方の言うことを聞かなければならないのですか」
堪忍袋の緒が切れました。
この何某さんもキャリーさんも、私達には敵対者です。
亜人と侮蔑する輩には全力で以て反論しましょう。
精霊も私もトリシア処かシルヴィータの国に属してはいません。
命令されたからと言いましても理不尽な要求に応える必要性はありません。
「生意気な小娘だな。亜人は人族に隸属してればいいんだ」
「それは、帝国の思想と同じです。いつから、シルヴィータは帝国に鞍替えしたのですか」
「……屁理屈謂うな、いいから言うことを聞け」
何某さんは感情も顕にして亜人と連呼してきます。
神国や神殿は内情はどうあれ、表向きは他種族は平等だと唱っています。
シルヴィータは永年帝国と反発してきた国だけに驚きを隠せませんでした。
〔セーラ。申し訳ありませんですが、人物鑑定をお願いします〕
〔構いません。何だか変な気配がしますよね〕
〔はい。妙に甘ったるい臭いがしてなりません〕
ラーズ君は甘い臭いですか。
私には、他者の魔力が纏わりついているように見えます。
濃密な薄桃色な魔力は魅了系な覚えがあります。
果たして慎重に覚られないよう人物鑑定をおこないます。
▽ ステータス
名前 ナディル=ベルク
種族 人族
年齢 42
状態 魅了 隸属中
うわぁ。
この方魅了系処か隸属状態です。
隠蔽されていますが鑑定結果によりますと、隸属主は帝国のどなたかです。
帝国の情報は極力耳に入らないようにしてきました弊害がでてしまいました。
〔ラーズ君、この方帝国領の伯爵の地位におられる方に隸属されています〕
〔フローレン伯爵ですか〕
〔そうですけど、ラーズ君は知っているのですか?〕
〔……聖女の家名と同じです〕
そうでしたか。
やはり、トリシア異変に聖女さんが関わっているのですね。
自作自演の説が濃厚になってしまいました。
偶然かアッシュ君が仕組みましたのか、私達に依頼が舞い込み解決の糸口を掴んでしまいましたので、賢者様に路線変更ですか。
「何を黙り込んでいる。お前達は私の言う通りにしてればいいんだ」
「亜人なんだから、叔父様の役に立ちなさい」
キャリーさんはギルドの制服を着用していますから、お仕事中と見受けられます。
本日何度目の職務放棄ですか?
この分ですと余罪がありそうです。
それに、問題発言だと理解していますか?
冒険者ギルドに所属する冒険者は人族だけではありませんよ。
私達みたいに他種族が派遣される事は多々あります。
貴女の言葉がトリシア支部全員の意向だと思われまして、今後のギルド運営に陰を落としかねません。
ミラルカですと懲戒免職ものですけど、トリシアの職員教育はどうなっているのでしょうか。
あれ?
つい、最近もそう思いましたよね。
どこでした?
思い出しました。
お宿でですね。
エディ氏もそうでしたが、水の浄化が追いついていないのではないのですか?
良く絡まれて困ります。
「早く浄化しろ」
「そうよ、早くしなさい」
「その必要はない。君達の方こそ黙りなさい」
穏やかな声がいきり立つ何某さんとキャリーさんを静止します。
第三者の登場は前以てラーズ君から念話で教えられていました。
「何だと‼ 私を誰だと思っているっ‼」
「ほぼ毎日会っているので知っている」
「なっ‼ ……オリバー様⁉」
「えっ、ご領主様にギルド長」
そうなのです。
ギルド長さんと領主様は何某さんが喚きたて始めた時から扉の向こう側におられていました。
ですから、ラーズ君が苦情はとリーゼちゃんに返していたのです。
「ナディルにキャリー、君達には失望させられた。特にナディル、君が帝国の思想に追従しているとは思ってなかった。只今より君を罷免する」
「キャリーもだ。冒険者ギルドは民間組織なだけに、帝国や神国の派閥争いには関わらないと規約がある。再三に注意してきただろうが。おまけに他支部からの協力者の情報を身内にリークしやがった」
静かにお怒りな領主様とあらわにするギルド長さん。
何某さんとキャリーさんは、対称的な二人の怒気に青褪めていかれます。
エディ氏は間違いに気付かれたら直ぐに謝罪して下さいました。
上下関係が厳しい騎士なだけありました。
それにしましても、キャリーさんは救いようがありません。
規約に反して職務上知り得た情報を他者に渡す行為は犯罪です。
罰金刑で済めば良いですね。
領主様の護衛な騎士さんとギルド職員に促されまして、何某さんとキャリーさんは退場です。
間際にこちらを睨んでいかれましたので、まだ一波乱ありそうです。
「トリシアの領主として、部下の失言を詫びる」
「ギルド長としても謝罪する」
領主様とギルド長さんに頭を下げられました。
上司としまして部下の不始末を見抜けられませんでしたのでその謝罪は受けます。
ラーズ君どうしましょう。
お二人中々頭を上げられません。
対応をお願いします。
「謝罪は受けます。ですから、頭を上げて下さい。それで、こちらは水に流しますし、先生には正確な説明と報告はしますから」
「そうしてもらえると、ありがたい。正直に言うと賢者殿の知恵にすがらねばならない状況に、国全体が陥っているのだ。下手をしたら、いつの間にか帝国の属国処か国自体が無くなりかねない。危機に瀕しているのを国王は知らない」
「……尊きお方の件ですか?」
「そうだ。君達の師である賢者殿の同族な天人が王城に現れ、神託を告げた。その場に居合わせた馬鹿息子が連絡してきては、神子様を早く見つけて取り成して貰うのだと煩い」
苦々しい表情の領主様です。
ラーズ君があえて伏せた名称を口にします。
誰が聞いているか分からない場所で人払いをしてませんが、神子様関連の情報は開示していいのでしょうか。
「あぁ。神託は王城処か王都全域に響き渡っていて、知らない者はいないのでな」
表情にでてしまいました。
領主様が私に笑いかけて教えて下さいました。
ムム。
ラーズ君の様にポーカーフェイスが出来ない私です。
「神託の内容はこうだ。
愛しき娘が箱庭から拐かされた。
悪人しか居らぬこの地で母恋しと泣いている。
聞け、罪人よ。
我は怒れる。
我は荒ぶる。
我が名は豊穣。
我が名に於いて謳わん。
この地に災いあれ。
この地を呪わん。
以上だ」
豊穣のお母さま。
儀式を邪魔されましたから御冠ですね。
安心してください。
私は絶対にシルヴィータの為に取り成しはしませんよ。
巻き添えになります一般庶民が可哀相だと思いますけども、 思うだけです。
何故なら私は善人ではありません。
父様と母様を奪いました人族を恨んでいますから。
あの惨劇の日を忘れることはありません。
シルヴィータの国が当事者ではないとの異論は聴きません。
救援の手を出して下いませんでしたし、一族の滅びを見世物として、演劇の形として世に流出しています。
かなり、評判の良い演し物らしいのです。
教えられまして、酷く泣いた夜を過ごしました。
ですので、私は神子ですが人族を救いません。
断言致します。




