第17話
金曜投稿です。
ブックマークありがとうございます。
早朝出発して昼過ぎにトリシアの街に戻って来ました。
帰り道もリーゼちゃんの威圧とラーズ君の疾走で、楽々の道のりでした。
報告義務として監視の魔導具を数個確保しました。
勿論、残してきました魔導具は使用不能状態にしてあります。
記録も消去してです。
本日の門兵は昨日と変わりなく、隊長さんから通達があったみたいで何事もなく、出入りができました。
肝心の隊長さんは、不在でしたので報告は出来ませんでした。
そこで、ギルドに行く前に腹ごしらえをすることに相成りました。
「猫君も食べますか?」
にゃあお。
と、元気なお返事です。
猫君に癒されます。
泣いてばかりでいられませんね。
水源地では静かに大人しくポーチに入ってくれていた猫君ですが、街に着くなり落ち着きを無くし鳴き始めたのです。
そんな状態の猫君を連れてお店に入るのに躊躇いました。
ギルド長さんのお家で作らせていただいたサンドイッチもありましたし、調査の一件で低迷する気分のままで報告はできない、とのラーズ君の提案で広場にて休憩することにしました。
閑散とした広場のベンチに座り猫君を膝の上に載せます。
狭いポーチの中が苦しかったのか伸びをする猫君です。
「はい、どうぞ」
薄味のスモークチキンを小皿に移し与えます。
味付けしていないパンとお野菜も盛りつけました。
なあ~う。
「ミルクも欲しいそうです」
同じ幻獣種なせいか、ラーズ君の通訳が入ります。
ミルクですね。
わかりました。
栄養満点なミラルカ印のミルクが無限収納に入っていますから、保冷瓶ごと取りだします。
あっ、周囲を確認するのを忘れていました。
一応ポーチから、取りだしたように見せかけていますが、どこに誰かの目があるかわかりませんね。
「セーラ、迂闊すぎ」
「人目はありませんが、念のため人避けはしてあります。だからと言って、ミラルカではないのですから、安心しないでください」
地元のミラルカでも数回やらかしてしまった私です。
ひどく粘着され一時期工房のお店番もできなくなりました。
余り学習していませんね。
反省です。
まだ精霊さんの終りを引摺っているみたいです。
「君達なぜこんな処にいる? 」
「見てわかりませんか。昼食中ですが、何か問題でも?」
猫君にミルクを差し出し、サンドイッチを口にしようと思いましたら、冒険者ギルドで聴いた声の主に詰問されました。
大方、門の番兵か同僚の騎士から、情報が伝わったのでしょう。
ささくれ立ちます神経に障ります、エディ氏の登場です。
「そんな事を聴いているのではなく、依頼はどうした。大見え切っておいて……。」
「依頼なら、完遂しました」
「こちらの話しを遮るな。嘘を吐くな。身綺麗な格好で何が完遂だ」
朝の一件で敵対心を持たれたみたいです。
ラーズ君の話を一蹴します。
右隣に座るリーゼちゃんから、冷気が漂ってきています。
止める気はありませんので、サンドイッチに齧り付きます。
うん、我ながら良い味です。
お野菜が少々萎びていて新鮮さが失われているのが残念でなりません。
身綺麗なのは食事の前に生活魔法の【清潔】を使用したからです。
自称元騎士な冒険者ですから、生活魔法くらい知識にあるはずです。
リーゼちゃんはエディ氏が実力行使にこなければ、完全に無視の態勢です。
「たとえ、完遂したとしても何故にギルドに行かない。後ろ暗いことがあるんだろう」
「それは、貴方の事でしょう。それに、今は昼時です。食事を済ませてから、ギルドに伺うのが筋でしょう」
ラーズ君の言う通りです。
お腹の虫が鳴るのは避けたいですしね。
しかし、エディ氏は聞く耳を持ちません。
益々激昂していきます。
そんなに、ラーズ君にやり込められましたのが、気にくわなかったのでしょうか。
器が小さい人ですね。
それとも、水源地の汚染された水の影響ですか。
フシャァァァ‼
突然膝の上の猫君が威嚇しました。
「どうしました?」
「……何だ。身体が重い。お前達何かしたのか?」
逆立つ毛並を撫でますが、猫君はエディ氏に対して牙をむけています。
ばたっと、エディ氏が地面に崩れ落ちました。
魔力が集い魔法が行使した形跡が視えます。
重力魔法?
エディ氏に通常の3倍の圧が掛けられています。
これ、猫君が魔法を行使していますか。
もがくエディ氏から、猫君の視線が外れません。
異常に気付いたラーズ君が、素早くエディ氏の意識を刈り取りました。
なんでもない様子で近くのベンチに転がします。
「猫の仕業なら、空間属性持ち」
「みたいです」
リーゼちゃんには猫君の状態を話てありましたが、属性は秘匿しておきました。
ラーズ君にも伝わっていたようで、驚いた表情はしていませんでした。
みぃーあ。
まずいことした、とでも感じましたのか上目遣いで私を凝視する猫君。
こころなしか、小さな身体を縮めて震えています。
「驚いただけで、怒っていませんよ」
安心させる為に撫でながら、声をかけます。
猫君は手の平に頭を擦り付けてきました。
「猫、良くやった。だけど、先手必勝。気付く前に意識奪う」
「リーゼ。それなら、リーゼが動くべきではないですか」
「やぶへび。ラーズに指摘された」
先ほどまでの緊張が嘘のように、和やかな雰囲気に包まれています。
ラーズ君とリーゼちゃんも猫君のしたことは怒っていません。
むしろ、奨励してます。
だから、もう震えなくて良いですよ。
最近ラーズ君がブラッシングをさせてくれませんので、モフモフ成分が足りません。
猫君、ミラルカに帰還しましたらお風呂とブラッシングさせて下さいね。




