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森と海の娘は平穏を望む  作者: 堀井 未咲
シルヴィータ編
16/197

第16話

水曜投稿です。

今回暗めなお話です。



 気を取り直して周辺の調査開始です。

 私とリーゼちゃんで泉の調査をし、ラーズ君は騎士さんの見張り兼護衛です。

 あっ、いけない。

 猫君もお留守番ですね。

 ポーチをラーズ君にまたもや預けます。

 亜竜を討伐して終りではいられません。

 帝国の思惑がどうであろうと異変の解決法を提示しなければ、推薦して下さいましたアッシュ君の顔を潰してしまいます。


「泉に潜ってみようと思いますけど、異論はありますか?」

「リーゼも連れていくのなら、ありません」

「異議無し」


 私達が行動をおこすときは、多数決をとります。

 大概は一人での行動は認めてくれませんので、得意分野があるどちらかが付き添ってくれます。

過保護な幼馴染みですよね。

 無限収納(インベントリ)から、水燐のネックレスを取り出して装備します。

 これで水中での呼吸は大丈夫です。

 中央部以外は浅瀬で本来の水の色に変化してきています。

 亜竜の怨嗟の念が消え失せ自浄作用が働き始めたようですね。

 後は魔素溜まり浄化すれば、水の汚染は解消されると思います。

 私は魔力耐性が高いので、魔素が産み出す瘴気にもかなり耐性があります。

 けれども、亜竜の血と瘴気に赤く染まる水の中に入るのは勇気がいります。


「止める?」

「止めませんよ。冒険者なら、これぐらい朝メシ前ですよ。それに、アッシュ君の期待に応えなければいけませんから」

「兄さんの事なので、何らかのペナルティが科せられそうですね」

「あり得そう。稽古倍かな」


 水の色に躊躇がちな私を元気付けてくれます二人には感謝しかありません。

 海には赤潮があるのですから、怖気ついている場合ではありませんね。

 ザブザブと泉の中に入っていきます。

 ネックレスの効果は水中呼吸だけでなく、水を弾いて濡れなくなります。

 海の妖精(メーアエルフ)としましては邪道なのですが、一度泳ぎだしてしまいますと、時間を忘れて水と戯れてしまう私なのです。

 リーゼちゃんが付いてきて下さいますが、昨日からシルヴィータに強制転移させられますは、水の汚染でお風呂にもはいれませんでは、ですので欲求不満です。

 リーゼちゃん、私を監視しておいてくださいね。

 纏わりつく水の気配に誘惑されながら、水中に潜ります。

 視界不良かと思いましたが、水中は余り濁ってはいませんでした。

 澄んでいますよ。

 おかしいです。

 亜竜を討伐して時間はそれほど過ぎていません。

 なにがしらの絡繰りがあるようです、


 〔セーラ。あそこに何かいる〕


 リーゼちゃんの指示に瞳を向けますと、魔素溜まりの近くに確かに小さな球体がありました。

 嫌な感じがしてなりません。

 鑑定結果は帝国製の封印球です。

 それも、封印状態なままで瘴気を浄化しています。

 いえ、させられているようです。


『だしてだしてだしてだしてだしてだしてだしてだしてだして』


 瘴気や魔素に侵され亜竜と同様に狂った大地の精霊が延々と喚いています。

 封印球の術式をみる限り、捕らえられた精霊の生命とも言えます魔力が喪われるまで、瘴気を浄化させられるようです。

 その身を削る行為は精霊の存在消失、精霊界への帰還ではなく私達で言います死と同じ意味です。


 〔リーゼちゃん、あの子は精霊です。強制的に浄化させられています。解放してあげたいです〕

 〔危険度はいくつ?〕

 〔かなり危ないです。直に消失します。最期は自由にしてあげたいのです〕

 〔わかった〕


 心配性なリーゼちゃんのことですから、決して私に触れさせてはくれないと思われます。

 ですので、リーゼちゃんに確保をお願いしました。

 すぐに行動してくれました。

 魔素溜まりに警戒しましたのか、腕を竜化させ封印球を掴み浮上します。

 私も後を追います。


「何かありましたか」

「セーラの指示。精霊が封印中。最期は自由を……」


 封印球を握る力に魔力を込めて術式を破壊するリーゼちゃんです。

 繊細な魔力操作が苦手なだけに力業です。

 精霊は存在を顕在させられないほど魔力を消耗しているようです。

 本当に小さな蛍の光ぐらいの大きさで微かに発光しています。


『精霊さん、貴方は自由です。何処にでも行けますよ』

『だしてだしてだして…………自由? あの子の処に帰れるの?』

『はい、帰れますよ』

『帰れる帰れる帰れる帰れる帰れる……か、え、れ、る……』


 ひときわ眩しく輝いて、精霊さんは存在を消失しました。

 何とも言えない無念さが凝りになってしまいました。

 本当ならは、あの子の処に帰してあげたかったのです。

 例え、あの子が望んでいなくても。

 涙が零れて仕方ありません。

 結果的に嘘を吐いてしまいました。

あの子は精霊さんを使い、トリシア近辺の水源地の魔素溜まりを故意に発生させたのだと、絶対に言えませんでした。

 狂気に飲み込まれたままではいさせたくありませんでした。


「セーラ。精霊は喜んでた」

「事情はわかりませんが、最期は救われたのですから」


 抱き寄せられ、頭を撫でられても、涙は止まりません。

 どうして帝国はこんなに残酷な事ができるのでしょうか。

 亜竜も精霊もトリシアには関係のない場所で討伐と消失させられました。

 亜竜の命を奪った私達が言える事ではありませんが、どちらも使い捨てにしていい命ではないはずです。

 アッシュ君、貴方はこの結末を教えたくて、関わらせたのですか?

 訊ねたいことが増えていきます。

 豊穣の神子として大地属性の精霊の終りを経験させて、私が何を思うか予想できていることでしょう。

 政には不干渉を貫く姿勢は何時までも通用しない、との警告だと受け止めて良いのですね。

 いずれ実りの聖女との衝突は避けられないのですね。

 聖女さん。

 自身が望んで起こした騒動ではないとの異論は受け付はしません。

 貴女は契約した精霊を見放し見殺しにしたのですから。

 単なる水源地の調査が後味がほろ苦い結果となってしまいました。


ブックマーク登録ありがとうございます。


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