第12話
月曜投稿です。
ブックマーク登録、評価ありがとうございます。
m(__)m
夜が更けてきました。
外見年齢がお子様な私が、気難しい話題に気分を悪くした、と思われたギルド長さんに、早々と客室の寝台へと押し込められました。
水源地へは明日の早朝に出発する事になりました。
ギルド長さんも交渉担当が、ラーズ君と気付かれましたので、彼と話を詰めるからと説得されました。
猫君はお腹が満たされましたらまた眠りにつき、適当に取り出した藤籠の中クッションやタオルに包まれ熟睡です。
私は本日色々な事がありましたから、身体は疲れていますが中々寝付けません。
〔セーラ眠れない?〕
心配気なリーゼちゃんの念話が届きました。
リーゼちゃんは窓辺に椅子を異動させ外を警戒中です。
人の姿をしていますが、リーゼちゃんは竜です。
保有する魔力が高い為に人族の様に、頻繁に睡眠が必要ではありません。
野営の時には見張り番をかって出て下さって
ます。
〔なんだか気になる事が有りすぎて眠れません〕
〔気になる事、何が不安?〕
〔私の言動でシルヴィータの未来が決まってしまいましたら、とか。猫君の謎について、とか。色々あります〕
〔只の幸運猫じゃないの?〕
リーゼちゃんの竜眼では幸運猫ですが、解析した私の瞳には猫君の詳細な情報が、写し出されていました。
猫君は生後2ヶ月位の子猫ですが、年齢は3歳とあります。
封印中は時間の流れが遅くなっていたとしても、違和感が拭えません。
祠に居た時には私も動揺していましたから、さらりと流してしまいましたが、幼馴染みの姿に安堵していられる今なら、チグハグさが理解させられます。
能力抑制の指環を外しまして、固有技能森羅万象を見透す【理の瞳】を発動させるには、保護者様方の了承が必要です。
儀式の際にはベールの刺繍が、抑制の効果を担っていましたから外していられました。
〔猫君はどうやら、神獣種らしいのです。幻獣種の器に神獣種の魂。つまりは、猫君は一度どちらも亡くなっている訳です〕
〔セーラは誰かの意図が有ると思ってる?〕
〔はい、それも身近の誰かです〕
〔兄さん?〕
直球なリーゼちゃんに頷きで返事をします。
固有技能で猫君を見透せば、答えは解ります。
猫君が初対面な私に無防備に懐く理由が、アッシュ君に有るとしても、トリシアの異変解決が先決です。
非常手段で呼びだしても、アッシュ君は絶対に応えてはくれない事でしょうから。
〔家に帰ったら、兄さんに問い詰めるの手伝う。シルヴィータは自業自得。セーラが気に病む必要はなし〕
〔王候貴族はそれでもいいですけど。平民には罪はありません。いつも犠牲になるのは、力ない一般庶民です〕
〔セーラとして? 神子として? 〕
〔……神子として見過ごしてしまえば、少なからず心は痛みます。私個人としましたら、シルヴィータが帝国に与しても版図が変わろが、家族が無事ならば無関心ですね〕
私も大概歪んでいますね。
豊穣の女神様は私が、神子の役割に固執することを望んではいません。
初代勇者によって愛娘を奪われた女神様は、帝国に両親を奪われた私の境遇をお嘆きになりました。
己れの愛娘が亡くなった過去を、似た容姿の私の姿に慮り一時期狂乱されたのです。
荒神と化した女神様を正気に戻す為に、私に娘役を促したのはアッシュ君でした。
果たして、女神様は大怪我を負った私の看護に正気を取り戻されました。
以降、愛し子と呼ばれ神子の位置に就きました。
神子の使命は、只私らしく自由に、在るがままに生きること。
殊に、神域を訪れるか、豊穣を讃える儀式に参加すれば喜ばれます。
後見人様方の何方も、神子がもたらす富や権威に興味がありませんでした。
普通のエルフと同様にラーズ君リーゼちゃんとのびのび育ててくれています。
調薬師の資格を取得すると、自分専用の薬草園を欲しがりました私に、神子の称号を気にせずに栽培できる環境を用意して下さいました。
ミラルカ近隣ですと周囲の農作物に影響を与えてしまう為に、要らぬ詮索を買う事がない様、わざわざ人跡未踏の地に浮島を浮かせてあります。
勿論、ミラルカの工房と浮島は転移門で繋がり、行来が自由にできます。
費用が幾らかかったのか、恐ろしくて聞けませんでした。
〔今無性にトール君に会いたいです〕
トール君なら何時もの笑顔で、頭を撫でて落ち着かせてくださいます。
今日はリーゼちゃんが代わりに撫でてくれます。
〔考えちゃ駄目。もう寝ること〕
ふわり、とリーゼちゃんの魔力が私を包みました。
【眠り】の魔法ですね。
抵抗することなく受け入れます。
徐々に訪れる眠気に目蓋を閉じます。
リーゼちゃんの魔力と撫でられる心地好さにつられて、眠りにつく私です。
水曜にラーズ視点が入ります。
とても難産でした。
そのお陰で短編が書きたくなり、投稿してしまいました。
テンプレのお話しですが、よろしくお願いいたします。




