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森と海の娘は平穏を望む  作者: 堀井 未咲
シルヴィータ編
12/197

第12話

月曜投稿です。

ブックマーク登録、評価ありがとうございます。

m(__)m


 夜が更けてきました。

 外見年齢がお子様な私が、気難しい話題に気分を悪くした、と思われたギルド長さんに、早々と客室の寝台へと押し込められました。

 水源地へは明日の早朝に出発する事になりました。

 ギルド長さんも交渉担当が、ラーズ君と気付かれましたので、彼と話を詰めるからと説得されました。

 猫君はお腹が満たされましたらまた眠りにつき、適当に取り出した藤籠の中クッションやタオルに包まれ熟睡です。

 私は本日色々な事がありましたから、身体は疲れていますが中々寝付けません。


 〔セーラ眠れない?〕


 心配気なリーゼちゃんの念話が届きました。

 リーゼちゃんは窓辺に椅子を異動させ外を警戒中です。

 人の姿をしていますが、リーゼちゃんは竜です。

 保有する魔力が高い為に人族の様に、頻繁に睡眠が必要ではありません。

 野営の時には見張り番をかって出て下さって

ます。


 〔なんだか気になる事が有りすぎて眠れません〕

 〔気になる事、何が不安?〕

 〔私の言動でシルヴィータの未来が決まってしまいましたら、とか。猫君の謎について、とか。色々あります〕

 〔只の幸運猫(フォーチュンキャット)じゃないの?〕


 リーゼちゃんの竜眼では幸運猫ですが、解析した私の瞳には猫君の詳細な情報が、写し出されていました。

 猫君は生後2ヶ月位の子猫ですが、年齢は3歳とあります。

 封印中は時間の流れが遅くなっていたとしても、違和感が拭えません。

 祠に居た時には私も動揺していましたから、さらりと流してしまいましたが、幼馴染みの姿に安堵していられる今なら、チグハグさが理解させられます。

 能力抑制の指環を外しまして、固有技能(ユニークスキル)森羅万象を見透す【理の瞳】を発動させるには、保護者様方の了承が必要です。

 儀式の際にはベールの刺繍が、抑制の効果を担っていましたから外していられました。


 〔猫君はどうやら、神獣種らしいのです。幻獣種の器に神獣種の魂。つまりは、猫君は一度どちらも亡くなっている訳です〕

 〔セーラは誰かの意図が有ると思ってる?〕

 〔はい、それも身近の誰かです〕

 〔兄さん?〕


 直球なリーゼちゃんに頷きで返事をします。

 固有技能で猫君を見透せば、答えは解ります。

 猫君が初対面な私に無防備に懐く理由が、アッシュ君に有るとしても、トリシアの異変解決が先決です。

 非常手段で呼びだしても、アッシュ君は絶対に応えてはくれない事でしょうから。


 〔家に帰ったら、兄さんに問い詰めるの手伝う。シルヴィータは自業自得。セーラが気に病む必要はなし〕

 〔王候貴族はそれでもいいですけど。平民には罪はありません。いつも犠牲になるのは、力ない一般庶民です〕

 〔セーラとして? 神子として? 〕

 〔……神子として見過ごしてしまえば、少なからず心は痛みます。私個人としましたら、シルヴィータが帝国に与しても版図が変わろが、家族が無事ならば無関心ですね〕


 私も大概歪んでいますね。

 豊穣の女神様は私が、神子の役割に固執することを望んではいません。

 初代勇者によって愛娘を奪われた女神様は、帝国に両親を奪われた私の境遇をお嘆きになりました。

 己れの愛娘が亡くなった過去を、似た容姿の私の姿に慮り一時期狂乱されたのです。

 荒神と化した女神様を正気に戻す為に、私に娘役を促したのはアッシュ君でした。

 果たして、女神様は大怪我を負った私の看護に正気を取り戻されました。

 以降、愛し子と呼ばれ神子の位置に就きました。

 神子の使命は、只私らしく自由に、在るがままに生きること。

 殊に、神域を訪れるか、豊穣を讃える儀式に参加すれば喜ばれます。

 後見人様方の何方も、神子がもたらす富や権威に興味がありませんでした。

 普通のエルフと同様にラーズ君リーゼちゃんとのびのび育ててくれています。

 調薬師の資格を取得すると、自分専用の薬草園を欲しがりました私に、神子の称号を気にせずに栽培できる環境を用意して下さいました。

 ミラルカ近隣ですと周囲の農作物に影響を与えてしまう為に、要らぬ詮索を買う事がない様、わざわざ人跡未踏の地に浮島を浮かせてあります。

 勿論、ミラルカの工房と浮島は転移門で繋がり、行来が自由にできます。

 費用が幾らかかったのか、恐ろしくて聞けませんでした。


 〔今無性にトール君に会いたいです〕


 トール君なら何時もの笑顔で、頭を撫でて落ち着かせてくださいます。

 今日はリーゼちゃんが代わりに撫でてくれます。


 〔考えちゃ駄目。もう寝ること〕


 ふわり、とリーゼちゃんの魔力が私を包みました。

 【眠り(スリープ)】の魔法ですね。

 抵抗することなく受け入れます。

 徐々に訪れる眠気に目蓋を閉じます。

 リーゼちゃんの魔力と撫でられる心地好さにつられて、眠りにつく私です。

水曜にラーズ視点が入ります。

とても難産でした。

そのお陰で短編が書きたくなり、投稿してしまいました。

テンプレのお話しですが、よろしくお願いいたします。



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